野花のような君へ

古紫汐桜

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人形の家

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あの日から、僕にとって夜が恐怖の時間になった。
息を潜め、兄達の足音に耳を澄ませ
(どうか、今日こそは来ませんように……)
そう祈って、毎晩長い夜を過ごしていた。
しかし、願いは虚しく、兄達は毎晩毎晩僕を穢しにやって来た。
人形のように抱かれる僕に
「創!お前、もう少し色っぽく喘ぐなりしてみろよ!!下手なAVの女より最悪だな!」
頬を叩き前髪を掴むと、秀一兄さんには僕の口内に欲望で硬くなったモノを無理やり捩じ込んだ。
無反応の僕の口を塞いだ方がマシだったのだろう。
次男の勝兄さんは、僕の身体中を舐め回すのが好きだった。勝兄さんはどうやら僕の容姿がお気に入りらしく、秀一兄さんのただの性欲の吐口にされるより辛かった。執拗に僕を求める勝兄さんは、欲望を叩き付けたら終わりの秀一兄さんより時間は長く、ねちっこくてしつこい。いつ解放されるのか分からない分、本当に辛い時間だった。
そんな中、唯一の救いだったのが、その頃から母親の対応が明らかに変わり、1人で食事をしていた僕を朝食の食卓に混ぜてくれるようになる。
「創さん、いってらっしゃい」
そして小学校に行く僕を微笑んで見送ってくれるようになり、僕は素直に嬉しかった。
ただ、出掛ける間際に必ず
「創さん。兄様達としている事は、誰にも言ってはいけませんよ」
と、釘を刺された。
今思えば、僕が外の誰かに救いを求めないようにさせていたんだろう。
「創さん。兄様達はね、創さんが大好きなの。良かったわね、兄様達に可愛がって頂けて。だから、創さん。あなたもしっかり、お役目を果たしなさい」
頭を撫でられ、母親は僕をまるで標本に蝶をピンで刺すように高杉家という箱に閉じ込めた。
そんな僕にとって、学校に行っている時だけが心の救いだった。
だから、僕にとっては半日授業の土曜日と、日曜祝日は地獄のような時間が長くなる辛い日だったんだ。
土曜日の夜から兄達に好きなように弄ばれ、二人が満足するまで身体を弄ばれる。
そんな日々に、いつしか僕の心は凍り付いて行った。

「創、大丈夫?顔色悪いよ」
兄達に好きなようにされるようになってから、数ヶ月が経過した頃、家で行われたパーティーの席で美鈴に声を掛けられた。
心配そうに僕の顔を見る美鈴の隣には、いつしか婚約者の蔦田尚寿が付随するようになった。洋菓子を扱う蔦田グループ総裁の長男。
綺麗な容姿は何処か人を寄せ付けない空気を漂わせ、絶対王者の空気を中学生で既に纏っていた。
「美鈴、行くぞ」
人との会話は命令口調で、僕は苦手だった。
「創、ごめんね。何かあったら、いつでも相談してね」
僕の頭を撫でる美鈴の手は、ずっと変わらず優しい。
そして2人が並ぶ姿を見る度に、僕の思いは届かないと思い知らされる事になった。
「創、美鈴と何を話してたんだ?」
パーティーが一通り終わり、部屋へと戻る僕に声を掛けて来たのは勝兄さんだった。
「別に……」
そう答える僕の腕を掴み
「創、俺の部屋に来い」
と言われて部屋に連れ込まれる。
秀一兄さんは夜だけ、それも性欲がある時だけ求めるのに反して、勝兄さんはことある毎に僕を求めた。
部屋に連れ込まれ、キスを求められる。
この頃になると、どうすれば勝兄さんが喜ぶのかを理解し始めていた。
下手に反抗するより、従順に相手が求める自分を演じるのが一番手っ取り早いと学んでいた。
「創……」
名前を呼ばれ、勝兄さんを見上げてゆっくりと目を閉じキス待ちをする。
唇が重なり、勝兄さんの手が僕のタキシードの上着を脱がせ、蝶ネクタイを外してシャツのボタンを外して行く。
シャツの中に手を差し込まれ、胸を指の腹で撫でて刺激してくる。
……でも、僕には何も感じない。
不快感をグッと喉の奥に飲み込み
「あっ……」
と、わざとらしい声を出す。
何度か秀一兄さんのAV鑑賞に付き合わされ、僕は秀一兄さんのモノを咥えながら、AV女優の出す声を観察していた。
どうやら、相手の声や表情、言葉に「興奮」とやらをするらしい。
しかも、違うポイントで声を出そうものなら、逆に興醒めしてしまうものらしい。
僕は兄達、それぞれの性癖に合わせて演じ分けた。
「創……、お前は本当に綺麗だな……」
僕の全身に舌を這わせ、勝兄さんは双丘も舐めまわして堪能すると、ゆっくりと割開いて最奥に舌を這わせる。
僕の一番嫌な時間。
勝兄さんはふやけて痛くなるまで舐めるから、羞恥と苦痛しかない長い時間。
枕に顔を埋め、挿入されるまでひたすら耐える時間が続く。
どのくらい時間が経過したのだろうか?
もう、感覚が無くなっていると、ようやく舌と指がひきぬかれて挿入された。
「うっ……」
何度されても、最初の圧迫感にはまだ慣れない。
「創……すっげぇ気持ちいい……」
吐息混じりに囁かれ、ゆっくりと挿入が始まる。これさえ始まれば、後は射精を促せば良いだけの事。
腰を捕まれ、バックで揺すられる身体を目を閉じて必死に支える。
背中に舌を這わされ
「創……創……」
と名前を呼ばれる。
何故だか、兄達に呼ばれる自分の名前が大嫌いだった。
抱かれる度、こんな容姿じゃなければ良かったのに……と思った。
醜い、誰も振り向かない容姿だったら良かったのに……。
ガツガツと最奥を穿たれながら、いつもそう思っていた。
「創……もうっ、出る!!」
勝兄さんはそう叫び、激しく腰を打ち付けて僕の中に欲望の塊を吐き出した。
熱くて硬い灼熱の棒が抜き差しされるだけの、苦痛な時間が終わった。
ゆっくりとベッドから降りようとすると、勝兄さんは僕の腕を掴んで組み敷き
「おい!何勝手に終わらせようとしてんだよ!」
と叫ぶと
「終わりを決めるのは俺だ!お前が勝手に決めるんじゃねぇ!」
そう言って、僕の両足を抱え上げて再び挿入させた。
いつ終わりがくるのか分からない狂宴に、僕の心は疲弊していった。
それでも僕は、美鈴の笑顔が見たくて堪えていた。

「そ~う!」

僕の名前を呼んで、太陽のような笑顔を浮かべる美鈴だけが救いだった。
美鈴は、こんな僕を知ったら嫌いになる。
だから、僕はひたすら隠し続けて生きていた。
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