野花のような君へ

古紫汐桜

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回り出す運命

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そんなある日、チャンスが巡って来た。
 あの日以来、彼が何故か僕の来店と合わせたように裏へと回ってしまうようになる。
(ハテ……、嫌われれるような事をしたかな?)
と首を傾げていた。
その日も同じように、彼は僕の顔を見るなり奥へと引っ込んでしまう。
なんだろう?と気になった。
このまま、顔さえも見られなくなるのは嫌だった。
どうしたものかと思案していると、裏から物凄い物音がした。
「し…失礼致しました!」
と、ホール担当の小島友也だったかな?
彼はそう言うと、血相を変えて裏へと回った。
もしかして、彼に何かあったのかもしれない。
僕はそう考えて彼らの後を追ってみた。
すると、建物の裏側にある倉庫で言い争う声が聞こえた。
「これは……一体どういう事だ?」
店長らしき人物の戸惑う声に
「店長、俺は手伝いに来てやったのに、こいつが余計なお世話だって突き飛ばして来たんです!」
と叫ぶ声が聞こえる。
すると
「本当に?俺、熊さんが何もしない人にそんな事するとは思えない!」
と、ホール係の小島とかいうウエイターの声。
「鈴木さん、いつも俺が倉庫の棚を整理していると、俺のケツ触りますよね?熊さんにもやったんじゃないんですか?」
彼の怒った声が続くと
「はぁ?こんなガタイ良い男のケツなんか、誰が触るかよ!」
と吐き捨てるような声が聞こえた。
聞き捨てならないな……。
僕は入り口に立って
「それは……倉庫の防犯カメラを見たら分かりますよね」
って呟いて、ゆっくりと彼等の話題の中へと入って行く。
建物の奥に、怯えた顔をした彼を見つけた。
(許せないな……)
大した見た目でも無い癖に、やたらとチャラそうな男と目が合う。
(こいつが彼を……)
腑が煮え繰り返る思いを噛み締めて見下ろすと
「はぁ?防犯カメラ?」
って鼻で笑って信じていない。
僕はチラリと見えた防犯カメラを確認して、ゆっくりと歩きながら
「えぇ……私がオーナーに助言しました」
そう呟いた。
「え?」
すると彼等は驚いた顔で僕を見て、そう呟いた。どうやら信じたようなので、畳み掛けるように
「今、ここでオーナーに電話して、証拠を確認してもらっても構わないけど」
そう言って、ムカつくチャラ男に詰め寄った。動揺しているうちに、片付けるか。
僕はそう考えて、スマホを取り出して耳に当てながら
「僕、ここのオーナーの友達なんですよ。店の備品が毎月、ほんの少しだけど無くなるって相談を受けてね。隠しカメラを設置したんだ。まさか……それがセクハラ確認に役立つとは思わなかったけど」
そう呟いた。
ムカつくチャラ男としばらく睨み合うと
「クソ!こんな店、今日限り辞めてやる!」
って叫んで、倉庫を飛び出して行った。
唖然とする3人を横目に、僕が逃げたチャラ男の背中を見送りながら
「本当に捨て台詞を吐く人間が、居るんですね……」
と呟いた。
すると店長らしき人物が
「すみません!高杉様がオーナーの知り合いなんて……。今回はありがとうございます」
そう言って頭を下げて来たので
「え?嘘ですよ」
と返事を返した。
「え?」
驚いて固まる3人に
「テレビドラマじゃあるまいし、そんな都合の良い話、ある訳無いじゃないですか」
とにっこり微笑んで答えた。
「え?じゃあ、隠しカメラは?」
戸惑って聞いてきた店長らしき人に
「あ!それは本当ですよ。ほら、あそこにカメラあるでしょう?」
って、カメラを指差した。
「大体、外に警備会社のシール貼ってあるし、倉庫に防犯カメラは当たり前じゃないですか」
あははははって笑うと、3人の口がポカンと開いている。
僕はチャラ男が逃げ出した方へと視線を向けると
「それに僕……、ああいう輩が一番嫌いなんですよ」
そう呟いてしまった。
そう、彼は兄達のような人種だ。
自分の為なら、人を陥れるのを何とも思わない。思わず感情的になってしまい、ハッと我に返り
「あ、勝手に倉庫に入ってすみません。お代を支払おうとしたら、物凄い物音がしてお2人が血相変えて飛び出したので、つい、着いてきちゃいました」
と、話題を変えた。
すると店長らしき人が慌てて
「あ……いえ。こちらこそ、罪の無い熊谷を注意する所でした」
そう言っていたので、僕は『はぁ?』って叫びたくなった気持ちを飲み込み、笑顔を浮かべて
「僕、彼の淹れるコーヒーが好きなんですよ。クビにされたら困るので」
と言うと、彼に視線を向けて
「いつも美味しいコーヒー、ありがとうございます」
そう伝えた。
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