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第139話

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 「素早すぎる。攻撃が当たらない」

 スノウが、フェイントも織り交ぜて近接攻撃を仕掛けるが、ひらりひらりと華麗に紙一重で避けて、相変わらず魔力弾を優人達へと放ち続けている。

 「スノウ、どきなさい」

 リーンが大量の小さな魔力弾で弾幕のように放ち避けきれないと思ったが、黒い妖精は小さく息を吸うとフッと姿が掻き消えた。

 「そこにいる」

 優人は見失ったが、スノウとサロパスタとアスカさんは見切って、黒い妖精のいる場所を見ていた。

 「私の転移魔法を見切るとは中々やるようですね」

 「お父さんの転移魔法の方が凄い、魔力の残滓を見極めれば簡単」

 「私も何とか分かるんだからね」

 スノウが、雷と一体化して蹴りを放ち、一拍遅れてリーンが水の槍を放つ。

 「流石は元同族、修行をすれば精霊王にもなれる可能性を感じるわ。まるで昔の私みたい」

 奥歯を強く噛み締めて、顔を歪めて過去の出来事を消し去りたいと思っているようだ。

 「もう、我慢も限界」

 黒い妖精がそう呟くと、20cmぐらいであろう妖精の体が大きくなり170cm程の美女へと変わり、着ている服も黒いワンピースのようなものだったのが、漆黒のイブニングドレスへと変わっていた。

 「この姿になるのも数年ぶり、これからが本番」

 大人の姿になった黒い妖精は、殴りかかってくるスノウの拳を軽く受け止めて、一本背負のようにスノウが突進してきたスピードそのままで投げた。

 「近接戦闘なら負けない」

 スノウの闘争心に火をつけて、スノウは黒い妖精に挑みかかっては投げられて、ダメージは殆ど負ってはいないが疲労が少しずつ見え始めた。

 「しょうがない、リーン手伝って」

 「貴方が私を手伝いなさい」

 2人が少し言い争いを始めようとしたが、直ぐに言葉をつぐみ互いに協力をすることにした。

 「協力をしたところで無駄」

 「それはどうでしょう」

 リーンが魔力弾を放ち、黒い妖精がまた再び避け始めるが、そこに黒い妖精の死角から一気にスノウが近寄りパンチを放った。

 「性懲りも無く、また突撃?」

 「そう何度も投げられない」

 パンチを当てる直前に、無理に魔力で動きを変えて、黒い妖精の投げを躱した。そこへリーンが再び魔力弾を放ち黒い妖精は避けきれずに何発か体に当たった。そして意識が魔力弾に移った隙にスノウは近接戦闘を仕掛けた。

 「ぐっ、どうしてそこまで人間を信じられる」

 徐々に黒い妖精はスノウとリーンの攻撃を避けられなくなっていった。

 「それはお父さんがいるから、お父さんがいるから人間を信じられない何てことはない」

 「そう、その信頼もいつかは壊れる」


 黒い妖精の腹に、スノウの魔力を込めた拳が貫き、黒い妖精はドロドロになって消えていった。

 「終わったな、だけどスノウとリーンも少し疲れているみたいだから休憩にしましょうか」

 確かに、怪我こそ大きなものはないが、スノウは体をあちこち擦りむいて肩で息をしている。

 「けど、5つの扉のうち4つが終わったからね。次の扉で一区切りですね」

 アスカさんの言う通り、レベル9のダンジョンとしてはサクサクと行き過ぎている感が無くはないが、強くなりすぎたのかと思うだけだった。
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