透き通るほど青い人々よ

國灯闇一

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Q7話 僕らの青春は桜のように早すぎる

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 期末考査を控え、各部活は2週間の活動停止期間に入った。午前の授業を終えて、生徒たちはどこに向かうか。様々な選択肢があるが、栄美中学の生徒は大きく2つに分かれる。教室か、食堂か。
 
 この学校には中高の生徒、教職員などが利用できる食堂がある。
 もし、親が寝坊して弁当がないなんてことがあったとしても、コンビニのサンドイッチやおにぎりを買うくらいなら食堂を利用した方が良い。安いのに腹持ちの良い定食が食える。
 朝早く起きて頑張って弁当を作らなくてよくなったと、保護者からの評判が良いそうだ。生徒もお小遣いをもらう口実ができるので、積極的に食堂を使う生徒もいる。僕も食堂利用者だが、僕の場合は節約のためというシンプルな理由だ。
 
 予約していたメニューをロボットのお姉さんから受け取り、適当に席についた。いざ生姜焼き定食を食そうと割り箸を割ったその時だった。
「亮士君」
 声のした方へ視線を上げると、奏絵と中宮がトレーを持ってやってきた。
「前の席いいかな?」
「ああ」
 ふたりは空いている前の席に座る。中宮はかき揚げうどん。奏絵はオムそばだった。
 
「あらら、亮士君ったら豪勢なお食事で」
「奏絵のオムそばと値段そんなに変わんないだろ」
「50円はけっこうな差だよ?」
 うっ……。言われてみるとそうかも。
 生姜焼きを食べた罪悪感がのし上がってきた。
「ふたりとも期末考査はどうにかなりそう?」
「まあ……」
 そう言って中宮の方を見ると、せっかく美味しそうなかき揚げうどんを食べているというのに、何かまずいものでも食べた顔をしていた。

「期末考査の話題は避けない?」
「ええー、今の時期だいたいみんなこの話でしょ」
 中宮は箸の先を口にくわえ、不服そうな顔をする。
「中宮も大丈夫だと思うけど」
「赤点は、でしょ……」
 中宮はジロリと陰湿な目で睨み、小さく零した。
 ん、まあそうだが……。
 フォローしたつもりだったんだが、なんか失敗した。
「いいじゃん。赤点回避。期末は範囲広くて、あたしもヤバいんだよね」
 期末考査の範囲は定期考査の1.5倍くらい広い。たった2週間で7教科の範囲を網羅するのも大変なのに、別の教科のテストがついてくる。
「ってことで、今日はあたしも放課後にお邪魔するね」
「お邪魔なんかじゃないよ。大歓迎!」

 ふたりはきゃっきゃしている。
 ……。
 今のところ、いつもの奏絵だ。
 何も変わらない。
 そう見える。
 しかし、僕の見えないところで変わることだってある。僕の知っている何かが、僕の見知らぬところで変わっていることなんて、いくらでもあるのだろう。
 
 奏絵の近況は中宮からもたらされた。
 学校以外でも中宮からチャットが送られてくる。チャットの中での中宮は、普段と印象がガラリと変わる。普段、大人しい感じの中宮だが、チャットの中では冗談も言うし、可愛いスタンプを送ってくる。
 そういう楽しげなやり取りの合間、中宮は奏絵のことを気にかけていた。

 奏絵とはたまに長電話もするらしいが、最近はめっきり減ったらしい。
 それだけなら良いが、ここ数週間は体調が悪く、部活を休んでいると、同じ水泳部の子から聞いたそうだ。しかも、無断で休んでいるようで、後輩からも心配されていた。
 奏絵が部活をサボるなんて、にわかには信じられなかった。中宮も相当驚いていた。水泳部の中には、中学の夏の大会を前に水泳部を退部するんじゃないかと予想している者もいるようだ。
 どうするかは奏絵が決めることだと思うが、奏絵には後悔してほしくなかった。
 
 学生の間だけ水泳をやっていた人が大半なのはわかっている。月日が経てば、そんなこともあったなとほろ苦い経験で済むような話なのかもしれない。だけど、他人にはどうでもいいことが、本人にとって重要な選択になることだってあると思う。
 僕らは青春いまを生きている。この青春せいしゅんがほろ苦いで染まらないことを願わずにはいられなかった。
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