透き通るほど青い人々よ

國灯闇一

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Q32話 祭りの夢のあとに砕けた希望の欠片を拾って、僕らはまた明日へ向かう

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 初めて参加した『厨廃電脳搭ーサイバー・アバンダンド・ビルディング』は、盛大なフィナーレを迎え閉幕した。
 パーティーの余韻をぶら下げて帰る参加者の列を窓越しに眺める。
 これから3時間バスに揺られ、日常の中へ戻っていく。
 
 バスの中に溶けて漂う空気は、まさしく祭りの後だった。
 心地良い疲労感と満足感が良いバランスで混ざり合っている。
 そこに悲哀など微塵もなく、良い夏の思い出を鞄に詰めて、土産話をどうシェアしようかと考えていても不思議じゃない。そう思いながら、僕は動画投稿用に撮影をしていた。
 自撮りしつつ、カメラの向こう側にいる人たちへ報告する。
 
「ただいまバスの中です。えー、今回は残念ながら上位3位以内に入れませんでした。予想を上回る好記録連発で、僕らはあっという間に上位3チームから脱落してしまったみたいです。敗因としましては、どんなゲームにも言えることなんでしょうけど、経験を積んでいる者とそうでない者の差は大きかったってことです。結果は残念でしたけど……初めての経験ばかりで、学びになった夏だったと思います。今後も、治療費などの資金調達に向けて頑張っていくので、応援よろしくお願いいたします。それじゃ、また……」

 撮影を止めて、1つ息を落とした。
 肺から抜けた空気に代わって入ってくるのは、やわらかな温かみをびた空気。それがゆっくりと肺に染みていく。
 同時に、座席から伝わる微細な振動が、肺へ空気を浸透させる時間をよりゆっくりにしている。これを心地良いと感じるのは、眠りへ誘う疲労感の懐に入るテクニックがあまりに自然だからかもしれない。
 
 かすかな寝息が聞こえそうなくらい、車内はまどろんでいる。
 だが、僕にはかえって毒だったらしい。
 おそらく、この中でもっとも仮眠を取っていたはずだ。懸けてもいい。上位3人には必ずランクインできる。
 未練がましいひとり相撲をしている頭を窓際に寄せ、流れていく景色を呆然ぼうぜんと見つめる。
 
 冴えた瞳の上で考えている頭に重さをはらんで明確になっていく。
 ローディングバーのように横へ伸びる景色の残像の隙間から顔を出してくる。
 ゲームから現実へ引き戻されていく感覚に似ている。
 くっきりしすぎて、目をそむけてしまいたくなる衝動がニキビのように出てくるが、気にしないなんてできるわけがない。
 厄介なニキビは処置を誤れば、痕になる。
 かといって、このまま残すのも気分が悪い。
 
 中宮の病気を治すための治療資金をどうするのか。はっきりとした問題が無駄に画質を上げて浮き出てきた。時にスペックの高さが災いするってことかもしれない。優秀さゆえの贅沢な悩みとか、そんな生易なまやさしいものではなく、融通がきかなくて使いづらいってのが正確なんだろう。
 コントロールする術もないから、そういうこともあると言い聞かせて、また同じ問題に突き当たる。このループから出られずにいる。
 言い聞かせて見流し、聞き流し、誰もが通る普遍の日常へ運ばれる。
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