透き通るほど青い人々よ

國灯闇一

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Q33話 日常へ戻っても、秋の祭りが控えている

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 休み明けの気だるさも消えた9月1日。ひと夏が終わったと感傷に浸ることなく、体で覚えている学校生活をこなす。
 ひと夏で驚くほど変化する人もいると噂には聞くが、日焼けしただとか、髪を染めただとか、わかりやすい見た目の話ではない。少年少女から青年へと変化を遂げることがあるそうだ。
 本当かどうかは知らないが、少なくとも僕の周りにはいないと思っている。
 
 9月は『○○の秋』と称される謎の強化期間がある。
 例えば、スポーツの秋だからと口実を手にして開催される体育祭がスケジュールに組み込まれているため、変則的な時間割になる。こういうのは主役の運動部に任せて傍観ぼうかんするがいい。
 イラスト部か、絵の腕に覚えがある生徒が応援旗の制作にやる気を出している。学校行事で使われる応援旗の制作は、主催する母体が直接的な金銭のやり取りさえなければ、画像生成を使ってもいいことになっている。
 だから、わざわざやる気を出す必要はないのだが、彼らは水を得た魚のように実力をいかんなく発揮したがるみたいだ。
 
 まあそういうこともあるので、この時期の学校の中は、脱出ゲームの会場で感じた高揚感がちょっとずつ醸成されている。それはお世話になっている生徒会も同じで、休みが明けて間もなく訪れた際は、すでに体育祭について話し合っているところだった。
 忙しそうだったので、この前の脱出ゲームのことで軽く感謝を伝えて、生徒会室を後にした。


 各クラス、放課後を使って体育祭の種目練習が行われる。
 普段、学校の窓から眺める運動部と同じ目線にいなければならず、居心地が悪かった。早く終わってくんないかなと何度も時計を見上げていた。
 軽い練習が終わり、着替えを済ませて鞄を取りに教室へ向かう。
 暑苦しい夕方の帰り道を歩き、電車に乗る。
 寂しい手の相棒である携帯に視線を向けて、発車を待つ。
 しきりに携帯が震え、そのたびに吹き出しが増えていく。
 チャット欄に素朴な文面が並ぶ。
 どうやら元気みたいだ。

 7月からずっと調子が良いらしく、軽い運動ができるようになったそうだ。
 ボッチャとか言う玉を転がす? ゲームをしているようで、大して動くゲームでもないらしい。それで入院している小学生くらいの子供と仲良くなったようだ。
 僕もこの夏の、特に脱出ゲームのことを話した。

 結果を聞いて残念そうにしていたが、落ち込んではいなかった。
 たぶん、ある程度予想していたことだから、というのもあるだろう。
 数千万の大金が獲得できる世界規模のゲームで上位3チームに入ることがどれだけ難しいか。素人でも容易く想像できる。スポンサーをつけて参戦するチームもいただろう。そう考えたら、落ち込んでいても仕方がない気がしてきた。
 僕は中宮に感謝を伝え、次に気持ちを切り替えた。
 そこから雑談に花を咲かせ、気づけば深い夜へ向かう時間になっていた。
 何気なく1日の終わりを迎えようとする。

 動画の制作に取り組みながら個食をするのも、板についてきた。
 インスタントのストックが増えているが、これも動画制作のため。
 誰だって何かを犠牲にして、何かを得ようとしている。
 当たり前にやっていることだ。
 悲観してしまう人もいるだろうが、犠牲にしてでも叶えたい願いがあるなら迷わないはずだ。犠牲が実を結ぶ保証はないが、叶えられる確率を上げられるなら惜しみはしないだろう。
 部屋の照明をかなり暗くする。かすかに部屋を見渡せる光量に抑え、ベッドに体を預ける。叶えたい夢の光景を脳内再生して、意識を深い眠りへ落としていった。
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