42 / 60
第三Q 生き様を証明せよ
12
しおりを挟む
スポーツ強豪校として有名な洛央高校ではほとんどの生徒が部活動に所属しているため、一般的に放課後と呼ばれるこの時間帯に校門を出て行く生徒は少なかった。
閑散とした校門前に立つ左手のない体の大きな男の存在は殊更に目立っており、数少ない帰宅生徒たちの視線を独占していた。
大吾に会って、話をしなければならない。
過去の精算が終わらないことには、また昔のように四人で遊ぶなんて野望も、大吾と公式戦で対戦するという目標も叶いそうにないからだ。
校門から出てくる生徒の中に大吾を発見するまで、そう時間はかからなかった。
「……ジョー……どうしてここに……?」
雪之丞の姿を認めた大吾は目を丸くした。
「体育館行ったらお前、ウチとの練習試合以降部活に来てないって聞いたからよ。ここで待ってたんだよ」
雪之丞が近づいていくと、大吾は目を逸らして一歩後ろに退いた。
「主将の山口さんが言ってたぞ。このままだとお前、スタメン外されるんだってさ。監督もすげえ怒ってるらしいし、行った方がいいんじゃねーの?」
「……」
何も言わない大吾に、雪之丞は溜息を吐いた。
「……ちょっと付き合えよ」
有無を言わさず歩き出すと、大吾は無言のまま後をついてきた。かつての親友である二人は距離を置き、互いに口を開かないまま歩を進めた。
大吾を連れてやって来たのは、バスケットゴールのある公園だ。雪之丞はボールバッグからバスケットボールを取り出した。
「俺、先輩からハンドリング上達のために常にボールを触るようにしておけって言われてんだ。お前すげえよな。よくドリブルしたままあんなに自在に動けるもんだ。あれで調子悪かったんだろ? 俺はまだまだ練習が足りねえわ」
その場でボールをついてみる。以前に比べて上達したとは思うが、まだ体の一部として完璧に扱えているとは思えない。大吾にパスを出すと彼は暗い顔でボールを受け取り、雪之丞の視線から逃げるようにボールを見つめて呟いた。
「……ジョーの方がよっぽどすごいよ。右手しか使えないのにバスケを始めようなんて、普通は思わない」
「そうかあ? 野球とかやる方がすごくね?」
「……ジョーは昔からすごかったよ。あのとき、俺たちは今よりずっと子どもだった。……それなのに、友達を助けるために左手を失うって、どれだけ勇気があるんだよ……」
「はっはっは。そうだろー? 俺を褒め称えろよなー」
「……笑うなよ! 今日は俺を罵りに来たんだろ!? 土下座でも丸坊主でもなんでもやるから、さっさと俺に恨み言を言ってくれよ!」
冗談めかして話す雪之丞に痺れを切らしたのか、大吾は表情を歪めて声を荒らげた。しかしすぐに後悔したようにうなだれ、
「……ごめん。俺がこんなこと言える立場にないのにな……本当に、申し訳ないと思ってる。……だから、俺はもうバスケはやらない。それが卑怯な俺なりのケジメのつもりなんだ」
体の中から振り絞るように、そう断言した。大吾は友人の前でする表情とは思えない程に悲痛な面持ちをしていて、それがひどく雪之丞の癪に障った。
「……俺がバスケをしている姿を見て罪悪感が湧いたから、バスケを辞めるってことか? おい、冗談じゃねえぞ?」
雪之丞は大吾の手からボールを奪い、タイマン張った喧嘩時のように至近距離で大吾を睨みつけた。しかしそれでも、大吾は雪之丞の目を見ようとしない。
閑散とした校門前に立つ左手のない体の大きな男の存在は殊更に目立っており、数少ない帰宅生徒たちの視線を独占していた。
大吾に会って、話をしなければならない。
過去の精算が終わらないことには、また昔のように四人で遊ぶなんて野望も、大吾と公式戦で対戦するという目標も叶いそうにないからだ。
校門から出てくる生徒の中に大吾を発見するまで、そう時間はかからなかった。
「……ジョー……どうしてここに……?」
雪之丞の姿を認めた大吾は目を丸くした。
「体育館行ったらお前、ウチとの練習試合以降部活に来てないって聞いたからよ。ここで待ってたんだよ」
雪之丞が近づいていくと、大吾は目を逸らして一歩後ろに退いた。
「主将の山口さんが言ってたぞ。このままだとお前、スタメン外されるんだってさ。監督もすげえ怒ってるらしいし、行った方がいいんじゃねーの?」
「……」
何も言わない大吾に、雪之丞は溜息を吐いた。
「……ちょっと付き合えよ」
有無を言わさず歩き出すと、大吾は無言のまま後をついてきた。かつての親友である二人は距離を置き、互いに口を開かないまま歩を進めた。
大吾を連れてやって来たのは、バスケットゴールのある公園だ。雪之丞はボールバッグからバスケットボールを取り出した。
「俺、先輩からハンドリング上達のために常にボールを触るようにしておけって言われてんだ。お前すげえよな。よくドリブルしたままあんなに自在に動けるもんだ。あれで調子悪かったんだろ? 俺はまだまだ練習が足りねえわ」
その場でボールをついてみる。以前に比べて上達したとは思うが、まだ体の一部として完璧に扱えているとは思えない。大吾にパスを出すと彼は暗い顔でボールを受け取り、雪之丞の視線から逃げるようにボールを見つめて呟いた。
「……ジョーの方がよっぽどすごいよ。右手しか使えないのにバスケを始めようなんて、普通は思わない」
「そうかあ? 野球とかやる方がすごくね?」
「……ジョーは昔からすごかったよ。あのとき、俺たちは今よりずっと子どもだった。……それなのに、友達を助けるために左手を失うって、どれだけ勇気があるんだよ……」
「はっはっは。そうだろー? 俺を褒め称えろよなー」
「……笑うなよ! 今日は俺を罵りに来たんだろ!? 土下座でも丸坊主でもなんでもやるから、さっさと俺に恨み言を言ってくれよ!」
冗談めかして話す雪之丞に痺れを切らしたのか、大吾は表情を歪めて声を荒らげた。しかしすぐに後悔したようにうなだれ、
「……ごめん。俺がこんなこと言える立場にないのにな……本当に、申し訳ないと思ってる。……だから、俺はもうバスケはやらない。それが卑怯な俺なりのケジメのつもりなんだ」
体の中から振り絞るように、そう断言した。大吾は友人の前でする表情とは思えない程に悲痛な面持ちをしていて、それがひどく雪之丞の癪に障った。
「……俺がバスケをしている姿を見て罪悪感が湧いたから、バスケを辞めるってことか? おい、冗談じゃねえぞ?」
雪之丞は大吾の手からボールを奪い、タイマン張った喧嘩時のように至近距離で大吾を睨みつけた。しかしそれでも、大吾は雪之丞の目を見ようとしない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる