女だからって舐めないで

佐藤なつ

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模擬戦ペア

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 学院の訓練場に集められた生徒たち。
 今日は年に一度の恒例行事──魔術模擬戦だ。

「今年は教師も混ざってのチーム戦です」
 そう発表された瞬間、会場はざわめいた。

 そして──
「ペアは抽選で決定しまーす!」

 引いた札に書かれた名前を見た私は、絶望で凍りついた。

「……サフィール先生」
「んまぁ♡ やっぱり運命の赤い糸かしらぁ?」

「違うから!!」

 よりによって、なんでこの人なの!?
 私は天を仰ぎたくなった。



 開始の合図と共に、模擬戦が始まる。
 敵チームは上級生二人。武器も魔術も容赦なく繰り出してくる。

「先生、右から──!」
「分かってるわよん♡ ほら、任せなさぁい」

 派手な魔法陣が展開され、炎の矢が降り注ぐ。
 ……いや、派手すぎる!
先生はハンデとして使える魔術に制限があるはずなのに、何を考えているのだろう。
 避けた敵は逆に私の方へ突っ込んできた。

「ちょっ、こっちに来ちゃったじゃない!」
「んまぁ♡ だってあなたなら平気でしょ?」
これも先生とペアを組んだ人のハンデだ。
敵は生徒の方を狙ってくるし、先生もそうなるように仕向けてくる。
他の先生とペア組んだ人は、
「そっちに行くぞ!」
とか声かけてもらえるのに私の場合は楽しまれてるみたいだ。
怒れてしまう。

 でも、怒っている場合じゃ無い。

「くっ──はぁっ!」
 魔力で体を強化し、私は剣を振り抜いた。
 辛うじて敵の攻撃を弾き返す。

 汗が滲む。
先生は遊んでいるばじゃりで
 これじゃ息が合わない。勝てるわけ──

「お嬢様」
 その時、背後から声がした。
「次は合わせましょう。私の魔法に、あなたの一撃を重ねて」

 振り返ると、先生の瞳は真剣だった。
 いつものふざけた笑みじゃない。

「……わかった」
 私は深く息を吸った。



 次の瞬間。
 先生が放ったのは巨大な氷の槍。
 それを相手が必死に防いだ、その隙を突いて──

「はぁぁぁっ!」
 私は剣に魔力を集中し、渾身の一撃を叩き込む。

 轟音と共に、敵は地面に叩きつけられた。

 審判の声が響く。
「勝者、サフィール=ロジエール、そして──」
 一拍置いて、私の名前が呼ばれた。



 歓声が上がる中、私は膝に手をついて息を整えた。
「はぁ……はぁ……」

「お見事♡」
 横で先生が笑う。
 その顔はいつもの軽薄さを残しつつ、どこか誇らしげだった。

「……別に、先生のおかげなんて思ってないから」
「まぁ♡ じゃあ次も組んでみる?」
「お断りよ!!」

 そう言いながら、胸の奥でほんの少しだけ──「悪くなかった」と思ってしまったのは、私だけの秘密だ。
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