宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~

橘花やよい

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第七章 ミッションクリア!

(三)

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 モーリスさまは、部屋にひとりでいたみたいだ。今回は待つこともなく、すんなり会えた。

 モーリスさまの机には、赤輝石のペンダントが置いてある。赤い石がきらっと輝いた。きれいな宝石だ。

「やあ、ルリ」
「ごきげんよう、モーリスさま」

 モーリスさまはにこやかに手を上げてくれる。だけど、わたしの胸はバクバクと大きな音を立てていた。スカートの裾をつまんであいさつする手が、ふるえてしまう。

「こちらにおいで」
「はい」

 招かれて、モーリスさまの前まで進む。

(がんばれ、わたし)

 深呼吸を何回か繰り返す。それから、わたしは勢いよく頭を下げた。

「申し訳ございません、モーリスさ……いった!」

 がんっ。

 鈍い音が鳴った。

 あまりにも勢いよく頭を下げたものだから、机におでこをぶつけてしまった。頭ががくんと揺れたよ……!

 反動で思わずふらーっと倒れそうになると、「ルリ!」と後ろに控えていたミナセがあわてたように声をあげる。
モーリスさまも、目を見開いていた。でも、わたしは、なんとか立ち続ける。

「あ、あの! 先日お渡しした宝石の中に、商品ではないものがまざっていたんです!」

 きっと真っ赤になっているであろうおでこをそのままに、わたしは必死で言った。

「ああ……、このペンダントのことだね」
「はい。もともと別の男の子のものだったんですが、彼が落としてしまった宝石を、わたしが気づかないまま商品といっしょに箱に詰めてしまって、そのままモーリスさまにお渡ししてしまいました」
「ふむふむ」
「拾ったときも、モーリスさまにお渡ししたときも、注意していれば気づけたはずです。ごめんなさい」

 今度は慎重に頭を下げる。

 しん、と重い沈黙に、わたしの胸はドキドキと鳴りっぱなしだ。

 頭は上げなかった。モーリスさまの言葉を待つ。

「そういうことならば、仕方がないね」

 やがて、モーリスさまは赤輝石のペンダントを箱に入れて、わたしの前に差し出した。そこでやっと、わたしは顔を上げる。

「とてもきれいな宝石だったから、気に入っていたのだが、持ち主に返しておあげ」
「……はい!」

 わたしは大事に箱を受けとった。

 怒られると思ったけど、モーリスさまは優しく笑っていた。カールした口ひげを指先でいじって、よしよしとうなずく。

「ルリにはいつもお世話になっているからね。今度からは、気をつけなさい」
「はい!」
「いやはや、おっちょこちょいなところがあるからね、ルリは」
「す、すみません」
「ははは、かまわんよ。ルリはじゅうぶん反省してくれているようだからね」

 モーリスさまは、にっこりと笑う。

「一度した失敗は、二度目が起きないように、気をつけてくれればいいさ」

 いいね、と聞いてくるモーリスさまに、わたしはしっかりとうなずいた。

「では、下がっていいよ。またよろしく頼む」
「はい。ありがとうございました!」

 わたしは深くお辞儀をして、ミナセとともに部屋を出た。
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