19 / 54
第七章 ミッションクリア!
(三)
しおりを挟む
モーリスさまは、部屋にひとりでいたみたいだ。今回は待つこともなく、すんなり会えた。
モーリスさまの机には、赤輝石のペンダントが置いてある。赤い石がきらっと輝いた。きれいな宝石だ。
「やあ、ルリ」
「ごきげんよう、モーリスさま」
モーリスさまはにこやかに手を上げてくれる。だけど、わたしの胸はバクバクと大きな音を立てていた。スカートの裾をつまんであいさつする手が、ふるえてしまう。
「こちらにおいで」
「はい」
招かれて、モーリスさまの前まで進む。
(がんばれ、わたし)
深呼吸を何回か繰り返す。それから、わたしは勢いよく頭を下げた。
「申し訳ございません、モーリスさ……いった!」
がんっ。
鈍い音が鳴った。
あまりにも勢いよく頭を下げたものだから、机におでこをぶつけてしまった。頭ががくんと揺れたよ……!
反動で思わずふらーっと倒れそうになると、「ルリ!」と後ろに控えていたミナセがあわてたように声をあげる。
モーリスさまも、目を見開いていた。でも、わたしは、なんとか立ち続ける。
「あ、あの! 先日お渡しした宝石の中に、商品ではないものがまざっていたんです!」
きっと真っ赤になっているであろうおでこをそのままに、わたしは必死で言った。
「ああ……、このペンダントのことだね」
「はい。もともと別の男の子のものだったんですが、彼が落としてしまった宝石を、わたしが気づかないまま商品といっしょに箱に詰めてしまって、そのままモーリスさまにお渡ししてしまいました」
「ふむふむ」
「拾ったときも、モーリスさまにお渡ししたときも、注意していれば気づけたはずです。ごめんなさい」
今度は慎重に頭を下げる。
しん、と重い沈黙に、わたしの胸はドキドキと鳴りっぱなしだ。
頭は上げなかった。モーリスさまの言葉を待つ。
「そういうことならば、仕方がないね」
やがて、モーリスさまは赤輝石のペンダントを箱に入れて、わたしの前に差し出した。そこでやっと、わたしは顔を上げる。
「とてもきれいな宝石だったから、気に入っていたのだが、持ち主に返しておあげ」
「……はい!」
わたしは大事に箱を受けとった。
怒られると思ったけど、モーリスさまは優しく笑っていた。カールした口ひげを指先でいじって、よしよしとうなずく。
「ルリにはいつもお世話になっているからね。今度からは、気をつけなさい」
「はい!」
「いやはや、おっちょこちょいなところがあるからね、ルリは」
「す、すみません」
「ははは、かまわんよ。ルリはじゅうぶん反省してくれているようだからね」
モーリスさまは、にっこりと笑う。
「一度した失敗は、二度目が起きないように、気をつけてくれればいいさ」
いいね、と聞いてくるモーリスさまに、わたしはしっかりとうなずいた。
「では、下がっていいよ。またよろしく頼む」
「はい。ありがとうございました!」
わたしは深くお辞儀をして、ミナセとともに部屋を出た。
モーリスさまの机には、赤輝石のペンダントが置いてある。赤い石がきらっと輝いた。きれいな宝石だ。
「やあ、ルリ」
「ごきげんよう、モーリスさま」
モーリスさまはにこやかに手を上げてくれる。だけど、わたしの胸はバクバクと大きな音を立てていた。スカートの裾をつまんであいさつする手が、ふるえてしまう。
「こちらにおいで」
「はい」
招かれて、モーリスさまの前まで進む。
(がんばれ、わたし)
深呼吸を何回か繰り返す。それから、わたしは勢いよく頭を下げた。
「申し訳ございません、モーリスさ……いった!」
がんっ。
鈍い音が鳴った。
あまりにも勢いよく頭を下げたものだから、机におでこをぶつけてしまった。頭ががくんと揺れたよ……!
反動で思わずふらーっと倒れそうになると、「ルリ!」と後ろに控えていたミナセがあわてたように声をあげる。
モーリスさまも、目を見開いていた。でも、わたしは、なんとか立ち続ける。
「あ、あの! 先日お渡しした宝石の中に、商品ではないものがまざっていたんです!」
きっと真っ赤になっているであろうおでこをそのままに、わたしは必死で言った。
「ああ……、このペンダントのことだね」
「はい。もともと別の男の子のものだったんですが、彼が落としてしまった宝石を、わたしが気づかないまま商品といっしょに箱に詰めてしまって、そのままモーリスさまにお渡ししてしまいました」
「ふむふむ」
「拾ったときも、モーリスさまにお渡ししたときも、注意していれば気づけたはずです。ごめんなさい」
今度は慎重に頭を下げる。
しん、と重い沈黙に、わたしの胸はドキドキと鳴りっぱなしだ。
頭は上げなかった。モーリスさまの言葉を待つ。
「そういうことならば、仕方がないね」
やがて、モーリスさまは赤輝石のペンダントを箱に入れて、わたしの前に差し出した。そこでやっと、わたしは顔を上げる。
「とてもきれいな宝石だったから、気に入っていたのだが、持ち主に返しておあげ」
「……はい!」
わたしは大事に箱を受けとった。
怒られると思ったけど、モーリスさまは優しく笑っていた。カールした口ひげを指先でいじって、よしよしとうなずく。
「ルリにはいつもお世話になっているからね。今度からは、気をつけなさい」
「はい!」
「いやはや、おっちょこちょいなところがあるからね、ルリは」
「す、すみません」
「ははは、かまわんよ。ルリはじゅうぶん反省してくれているようだからね」
モーリスさまは、にっこりと笑う。
「一度した失敗は、二度目が起きないように、気をつけてくれればいいさ」
いいね、と聞いてくるモーリスさまに、わたしはしっかりとうなずいた。
「では、下がっていいよ。またよろしく頼む」
「はい。ありがとうございました!」
わたしは深くお辞儀をして、ミナセとともに部屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる