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番外編
初恋の墓標②
しおりを挟む月日が流れ、カイゼルは少しだけ成長した。
そして物事の通りというものを理解できるようになった。
宮殿だと思っていたこの場所はただの離宮であることにもようやく気が付いた。
美しい人は様々な事情から祖国を失い離宮にとらわれているお姫様だということも知った。
男の子はずいぶん成長したが、やはりカイゼルより小さいままだった。
美しい人にそっくりだった顔立ちは、日に日に少し違う誰かの面影を強くしているように感じられた。
まだあどけない顔立ちの中でらんらんと光る赤い瞳が、この国で何より尊い血統を示す証拠であることだってもう知っている。
カイゼルはそのこと少しだけ切なく思う日もあったが、男の子が自分にとっての唯一無二の友人であるこという事実には何の影響もしなかった。
男の子には二人の兄がいた。
どちらも別の場所に住んでいるため、めったに男の子に合うことはない。
まれに訪ねてくることもあったが、彼らは優しく男の子に接してくれる落ち着いた存在で、そんな二人に素直に懐いている男の子の笑顔がカイゼルはとても好きだった。
「俺はいつか兄上たちのために働く人間になるんだ」
男の子はいつもそう語っていた。
それが自分の使命で誇りだと言わんばかりの横顔に、カイゼルは幼いながらも男の子の持つ輝きに心を奪われる。
「では、私はずっと傍にいてそれを支えます」
それは約束でもなんでもなく確信だった。たとえ男の子が今の立場を失っても、姿かたちを変えたとしてもカイゼルはきっとこの子の傍を離れない。
あの美しい人とこの少年をずっと守り支えるのだ、と。
そう誓ったはずなのに。
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