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「ひ、ああぅ」

 ぴちゃぴちゃと私の中心を舐め回す舌の感触がたまらなかった。口を閉じる事がうまくできなくて、涎が床を汚してしまう。

「甘いな」
「ひぅ、だめ、そこで、しゃべっちゃ」

 吐息すら今の私には過ぎたる刺激で、壁にすがる事でかろうじて役目を果たしている膝ががくがくと震えた。
 私の尻を掴むようにして柔らかな肉谷を開かせたシュルト様は、背後から私の弱い場所を口で責めたてる。

 壁に手をついて腰だけを浮かせた私の弱い部分をいたぶるために、シュルト様は床に膝をついている。
 信じられない状態があまりに倒錯的で、私は幻でも見ているのだろうか。

 暖かく少しだけざらついた舌が執拗に私の割れ目を撫で、溢れる蜜を吸い上げる。
 ひだをかき分け、敏感な粘膜に触れる熱くて柔らかな感触に腰が揺れる。頭の中が真っ白になってくらくらした。
 指で触れられるだけでも信じられない位に衝撃を受ける突起を舌ではじかれると、声すら出ないほど気持ちいい。

「正直に話すまでは止めない」と言われたが、いったいにこれ以上何を正直に話せばいいのか。
 私は彼と誰かの声を聴いた。内容まではわからない。それだけだ。それだけなのにシュルト様は信じてくれない。

「きゃ、っそこ、そこだめぇ」

 入口に舌が挿し込まれる。
 シュルト様を何度も受け入れているせいで随分と柔らかくなったそこは簡単に舌先の侵入を受け入れてしまう。
 くにくにと入口の柔らかなひだを広げるように浅く長く舐めまわされる。信じられないくらいに甘い声が私の口から溢れた。

「んんぅ、あっぃ、やぁぁぁんっ」

 じゅるる、と吸い上げられる水音に腰が抜けそうだ。崩れ落ちたいのに、足の間にシュルト様の顔が埋まっていると思うと力を抜くことが許されないと感じ、私は震える膝に必死で力を込める。
 がくがくと哀れなほどに震えている足をシュルト様の掌が悪戯に撫でまわす。膝の裏を指先でくすぐられると情けない声が出てしまう。

 許してほしくて何も知らないと何度も声を上げるのに、舌の動きは私を責めるのを止めない。

「や、あぁ、やめぇてぇぇ」

 弱い部分ばかりを舐めまわされると口を閉じる事すらできない。だらしなく涎が溢れて口の周りが濡れて冷たい。

「随分とよさそうだな…続けてほしいから言わないのか?」
「ちが、ちがいます、本当に、なにもっ」
「ならここはどうだ」
「ひっ、だめそこ、だめぇぇぁつ」

 肉谷を弾くように舐めていた舌がずるりとたどるようにお尻の方に滑っていくのがわかって、私は体を強張らせた。そんな不浄な場所にシュルト様の舌が、顔が近づいているということに恐怖を覚え、逃げようと身体を揺らすが、太股をがっちりと掴まれているせいで私はまるで誘うように腰を振る格好になる。

「なんだ、してほしかったのか?」
「ちが、ちがうんんっつ!」

 べろり、と薄い粘膜を舐めあげられた。ひいっ、と短い悲鳴と一緒に私は息を飲む。

「きたな、きたないです、やめ、やめてぇ」

 情けない悲鳴を上げて懇願する私の声をシュルト様の舌は無視し続ける。すぼまった皮膚を柔らかくするように、何度も何度も舌の腹がそこを舐めまわし続ける。汚く隠された場所だ。そこに誰かの、しかも彼の舌が触れている。信じれない、ありえない、こんな使い方をする場所じゃない。

「ひ、ひぃ、ああぅぅぅ…」

 それなのに、それだからこそか私の身体はその刺激に支配されている。
 繰り返される口淫に私は声を上げる事すらできなくて。
 いやらしい水音と私の荒い呼吸ばかりが部屋の中に響いている。
 シュルト様の口がようやくそこから離れても、私は壁に爪を立てる事しかできず、与えられ続けた快楽で思考が溶けてしまっていた。

「……随分とよさそうだな、次はここも使うか?」
「つ、かう?」
「…………」
「ひっ!!」

 シュルト様の指が私の中に入り込む。
 それは何度も慣らされた入口ではなく、先程舐めまわされた場所だ。本来ならば異物を受け入れる場所ではない。快楽で蕩けた身体が一気に強張る。痛い、苦しい、怖い。

「どうだ?これでも正直に話さないか」
「……な、知らないんです、ほんとに、なにも、きいてなっ」

 恐怖と異物感で額に脂汗が滲む。本当に立っていられなくなって、私はずるずると床に座り込んだ。
 その拍子にありえない場所に侵入していた指がようやく抜け出ていく。

 埃の匂いがする床にぺたりと座った私の肩をシュルト様が掴み、顔を覗き込んでくる。

「…………本当のようだな」

 恐怖で怯えた私の態度にシュルト様はようやく信じてくれたらしい。
 真っ直ぐに私を見つめる瞳は冷え切っているが、何故か今のシュルト様は私よりも苦しそうな表情をしていた。
 綺麗な薄い唇まわりがべっとりと濡れていて、それが先ほどまでの行為のせいだとわかると、恥ずかしさで死んでしまいたくなる。

「ん、んんっつ!!」

 唇を見つめていた私に気が付いたのか、シュルト様が唇を奪ってきた。
 床に倒されるようにして覆いかぶさるようなキスだ。
 後ろ頭に挿し込まれたシュルト様の掌が私と床が接触するのを阻んでくれているのが不思議だった。

 さっきまでの酷い責め苦が嘘みたいなキス。
 びちゃびちゃと舌が絡まる水音が口から鼓膜に伝わって頭蓋に響く。
 長いキスは時折離れて角度を変える。ついばむように唇を吸い上げられて、下唇を甘噛みされる。
 ひ、と上げた悲鳴を吸い上げるように触れるだけのキス。
 わざと音を立て、延々と繰り返されるキスの嵐に私はついていくだけで必死だ。

 ――きもちいい

 体に力が入らない。
 圧し掛かられている身体は重くて苦しいのに、もっとキスがしていたいと思っている。
 シュルト様の手が服の上から私の胸を揉み、するするとお腹の上をくるりと撫でたあと、足の間に入り込む。
 さっきまで舐めまわされ腫れているそこをいつものように指で弄り回される。
 簡単に彼の指を受け入れ、準備が整えられてしまう。

 キスをされたまま、足が開かされ、シュルト様の熱が入口に添えられた。
 なんど抱かれても慣れない。入口に触れるそれは熱くて硬くて恐ろしい切っ先。つぷ、と恐ろしいほどのスムーズさでそれは私に入り込む。
 押し込まれていく瞬間、私の身体が二つに割れてしまうのではないかといつも思う。

 ばちん、と最後まで押し込まれると目の奥に星が弾けた気がした。
 涙の膜で揺れる視界。瞳を見開いた先にシュルト様の綺麗な瞳がある。その瞳には彼から与えられる快楽に蕩けた私だけが映っていた。

 ああ、今この瞬間、ここには私と彼だけだ。

 動き始めた彼にすがりつくように首に腕を回わす。
 こんなにひどい扱いなのに、私はやはり彼に心の底からは逆らえないのだ。
 快楽に蕩けたふりをして今この瞬間は彼に身を任すことくらいは許してほしいと思ってしまった。

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