運極さんが通る

スウ

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鑑賞者

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 ~とある広場side~

太陽の日の昼広場は、仕事や学校が休みということだけあって、いつもより人が賑わっていた。
もちろん、この世界のNPCにも休みの日という概念があるため、より一層人が集まっていた。
1番台、2番台のテレビには、いつも通り攻略組が占めていた。
攻略組達はいつも通りにフィールドボス戦に向けて、ゴブリンやらスライムやらをひたすら倒し続けている。
たまに赤い宝箱が見つかったりするが、毎回☆1しか出さないため、2番台には人がほとんど集まっていなかった。
   
たまに1番台でフィールドボス戦が観られるのだが、ボスの即死級とも言っていい攻撃によって、すぐに終了するのが落ちだった。
誰もが嘆く。
何で序盤のフィールドボスがあんなに鬼畜なのだと。
   
   
14時40分ごろ、1番台に映し出されていた攻略組の映像が切り替わり、あのフィールドボスが映し出された。

毎度のことなのだが、予告もなしに切り替わるのはダメだ、という意見が運営に殺到している。

また攻略組が挑戦するのか、とわらわら一番台に人が集まってきた。
   
   
 『『Piiikiiiiiiiiiiiiiii!!』』

ボスの咆哮が響く。
どこか諦めが入ったプレイヤー達の顔は歪んでいた。
今日は集まる人が多い。

「何分もつか見ものだな。」
「俺は5分だな。」
「いや~さすがに何回も挑戦してんだぜ?10分はいくだろ。」
「まず勝てねぇよ。」
「今日は攻略組のどのパーティーが行くんだ?」
   
攻略組と言っても、いくつかのパーティーが存在している。
1番フィールドボスに挑戦しているのは3人組のヒューマンが組んでいるパーティーだ。
今日もどうせそのパーティーが映し出されると思っていた者達は、テレビ画面を見て驚く。
映し出されたのは黒い軍服を着た大きな翼を生やしたプレイヤーと2匹のゴブリンだった。

「ハァァッ!?」
「ぐ…軍服だとぉ!」
「いつもの3人組じゃねぇのかよっ。」
「かっこいいーー!」
「キャー?」
 「どっかで見たことあるような、ないようなぁ。」

今回の挑戦者は見たことのない装備のプレイヤーだった。
美しい双剣、大鎌をゴブリンに装備させ、ボスを前に俯いている翼の生えた軍服ヤロウは誰なんだと、そこらかしこで声が上がる。
ずっと広場で生中継を観ていた者達は序盤からあんな凄そうな装備を手に入れたプレイヤーのことなんて耳に入れたことも目にしたこともないのだ。
ボスと軍服の距離が残り10mとなった時、軍服はサッ顔をあげた。
   
   『いざっ!推して参るっ!!』

地を蹴り、ものすごいスピードで空を飛んだ。

「ふあっ!?飾りじゃねぇのかよ!」
「「イッケメーーン!!」」
「アレは種族特有の翼…なのか!?」
「今回は行けるんじゃね?」
「誰だよ、あの軍服。」
   
見たことのない軍服のプレイヤーに広場はザワつく。
本当に何者なのだ?あんなのいたか?と。
それに答える声が端の方から上がった。

「アレは攻略組じゃねぇ、俺達はあんな奴知らねぇからな。」

「「「はぁぁっっ!?」」」

声の主は、昨日フィールドボスに負けた例の3人組のリーダーだった。
いくら有名なリーダーの言ってることでも、その言葉を信じる者はいない。
攻略組でもないソロプレイヤーが軍服や、あの双剣、大鎌などという上等な装備を手に入れられるはずがないのだ。
ましてや、攻略組でもあの装備を揃えることは無理だろう。
   
「NPCじゃないのか?」

と、そういうの声が多々上がるのだが、それはない、と却下される。
テレビを見る限りは軍服と2匹のゴブリンのマーカーは緑なのだから。
   
 「俺、そいつ見たことあるわ。確か、堕天使じゃなかったか?」
 「あ…そう言えば、そいつ、ゴブリンもテイムしてたよな。」

そう言えば、そう言えば、とそこらかしこで堰を切ったように声が上がる。
  
 「そいつが、くじ屋で軍服当ててたのみた。」

  ザワザワ


「名前は確か…るしだったな。」

ちょうどその時、るしはボスの攻撃を紙一重で避け、反撃を入れる。
その際にやって来る子分をどう捌くのだ、と鑑賞者達は画面に食い入る。
が、子分達はいくら立ってもやって来ない。
   
「おいっ、子分どこいったんだよ!」 
「馬鹿っ。あのゴブリンらが画面の端の方で殲滅させていってるのが見えねぇのかよ。」
「まじか…。」

子分達はゴブリン2匹に見る見るうちに倒されていった。
攻略組でさえ、SPDが高すぎて捉えるのがいっぱいいっぱいなのに、あの2匹は何でもないようにバサバサと切り払っていく。
声が出ない。
自分達が経験値に変えていたあの雑魚がここまで強かったなんて信じられないのだ。

『ミシミシミシ』
  
『ミシミシ…ピキッ』

『パリんツ』


   「「おおぉぉお。」」

どよめきが広がる。
るしがボスの攻撃を凌いだからだ。
だが、いくらあのるしとはいえ武器がない時点でもう詰みだ、というのが鑑賞者の思いだった。
そんな思いを打ち消すかのように、るしは拳を握り締め、ボスに向かっていった。

「アイツ、気でも狂ったか?」
「ま、ソロにも限界があるよな。」
「適当に頑張れ~。」
   
ボスもその幾多の生命を奪ったであろう手をるしに向ける。




……。
ありえない事だった。
鑑賞者達は目を疑う。
軍服は普通に素手でボスと殴りあっているのだ。
ボスの一度の攻撃で大太刀が壊れたのというに、軍服には傷ひとつ入っていない。
そのまま1人と1匹は殴り合う。
ボスの拳、一撃一撃は重いはずなのに、それを軽々と受け流し、その拳にるしは数度拳を向ける。
   

ついに限界が来たようだ。
ボスの方に。
   
 『Piiikiiiiiiiiiiiツツ!!!』

拳から大量に血を流し、消耗が激しかったのか、その両手を下ろしたのが映る。
大きくヒビが入ったその拳は、所々から肉が見え、出血しており、ポタポタと地面に血が落ちている。

「う…嘘だろ?ありえねぇ…。」
   
誰かがそう呟いた。
そうだ。
ありえない事だった。
素手でボスに打ち勝つなど、ありえないのだ。
しかも、るしは無傷。
   
「い…いけるぞ!」

誰もがそう思った。

「そ…そうだ!!もうちょっとじゃないかっ。」
   
その思いに賛同する声が上がる。

「頑張れ!」

また1人、また1人と応援するものが増えていく。

「「「頑張れぇぇ!!」」」

歪んでいた鑑賞者の顔は、興奮の色に染まっていた。

るしは何を思ったのか、スーッと空を上る。
高く高く上る。

  「……。」
   
鑑賞者達は息を呑む。
これから起こることを推測しながら。
今か今かと、その瞬間を待つ。
   
直後。


『ズドォォォォォォォン』
   
『Piiikiiiiiiiiiiiaaaaaaaaaaaaaaaaツツツツ!!!』

画面が土煙に覆われて見えなくなる。 
まだかまだか、気持ちが急ぐ。
   

土煙が消えた時、るしとゴブリン達がハイタッチをしているのが映った。

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

それを観て、思わず心の底から叫んでしまうものがたくさんいた。
『Live Online』は心から楽しめるのが本来の良さなのだと、戦っていた者も、観ていた者も、全員が心が熱くなるゲームなのだと、誰もがそう思った。
素晴らしかった。
そう感じたのはNPCであっても、プレイヤーであっても、同じことだった。
    
「良かったぞぉぉ!!」
「おめでとぉぉ(ずびび)」
「こんなにいいものをみせてくれてありがとなぁぁ!」
「おにーちゃん!かっこいいーー!」

鑑賞者達の声が届いたのか、軍服は優雅に一礼した。

 ピロリん。
   
『<世界の声>フィールドボスが倒されたことにより、フィールド2が解放されました。フィールド1のボスは一定時間でリポップされるようになります。更に、ストーリークエスト、連合(ユニオン)が追加されました。ストーリークエストとは、ギルドクエストとは違って、街中やフィールドなど様々な場所で発生します。ストーリーを紐解いていくと、この世界をより深く知ることができ、多くの人と出会い、無限の分岐点に行き着くことが出来ます。また、ストーリークエストは何度でもやり直しが可能になっております。プレイヤー様の行動によって、無限の結末を迎えることが可能となっておりますので、どうぞ、自分の物語をお作り下さい。
 連合(ユニオン)とは、プレイヤー内のギルドのようなものです。詳しくは公式ページをご覧下さい。それではプレイヤー様方、引き続き、この世界をお楽しみ下さい。』

「おおぉ!フィールド2が開放されたぞぉ!」
「ストーリークエストとユニオンもだ!」
「あの軍服、次の世界ランキング闘技大会で波乱を起こすな。」
「日本に1位が来るかもな。外国をやっつけろー!」
「るしーー!!うぉぉぉ!!燃えたぜぇ!」
「ま…待てお前ら、堕天使様が青い宝箱を出したぞ!?」 
「おお!初回撃破報酬だな!」
「宝箱の運はさすがにないだろ。」

るしが青い宝箱を出したことで2番台にもるしが映る。
1番台から溢れていた人達は慌てて2番台に移動する。


『ガチャ』
   
宝箱の中身は美しい大太刀だった。
蜃気楼のようにユラユラ揺れるその刀身は観る者達を魅了した。
   
「お…おい、あれ…☆4とか5のLvじゃねぇよな?」
「だな…。」
「さすが…というべきなのか?」
   
るしはひとしきり大太刀を見つめ、試し振りをした後、アイテムボックスにしまった。
そして、そのままゴブリンを手を握ってもらい、そのまま空を飛んでいった。
1番台、2番台は切り替わり、攻略組を映し始めた。

「あいつみたいになれば、俺もあんなふうにキラキラ出来るのか?」
「だな。」
「それにしても、いいもの見れた。」
「俺、友達に自慢してこよ。」

熱に浮かされたように、1人、また1人と広場を後にした。

  

 1人のおとこが歪んだ笑みを浮かべたことに、誰も気づくことは無かった。
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