運極さんが通る

スウ

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現れし双柱

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「やいやーい!誰だこんな町中で光線ブッパしたやつはぁ?」
「失礼します」

バンッと勢いよく扉が開かれ、ズンズン入ってきたのはこの宿の主人…ではなく、顔が瓜二つの少年二人組。見覚えのある茨の刺繍が入ったマントが、風穴から入ってくる風でたなびく。
お、終わった…。
よりにもよってここに上がってきたのが帝国の騎士団の人だなんて。
逃げるか?よし、逃げよう。
クルリとターンし、逃げ出そうとする私だったが、

「待て待て。逃げるでない」

ヴィネに寝首を掴まれてしまった。
は、離せぇぇぇ。私は悪くないんだ!
無罪だ!無罪を主張する!
壁に風穴空いちゃったけど、それは不可抗力で…。

「どうどう。…ん? おまえら、25柱と35柱ではないか。久しいな」
「「よ、45柱ぅ!?」」 

ヴィネが声を掛けたのは、先程侵入してきた騎士団の二人組。25柱と35柱…ってことは、ヴィネの家族!?
え、何でここに?
封印されてるんじゃなかったの?

おまえら、何故地上に出てきている? 我ら72柱は全てヤツらに封印されたのではなかったのか?」
「あ、あー…。ちょっと不思議道具を使ってなぁ」

私の心を代弁したヴィネの問に答えたのは、金髪金目の少年。左頬にペイントされている星マークが特徴的だ。

「不思議道具…? 汝ら、さては28柱から盗んだな?」
「はい、盗みました。主に兄さんが」
「うぉぉい!?」

サラッと白状してくれたのは、25柱君のことを「兄さん」と呼ぶ少年。銀髪銀目、右頬には星がひとつ。見れば見るほど25柱君と顔が似ている。

「ヴィネ、あの二人は双子だったりする?」
「あぁ、双子だ」
「おいコラ! 双子じゃないって言ってるだろ!? これだから耄碌もうろくジジイは」
「ほら、姿形が同じだろう?故に我らは双子として扱っている」

そう答えるヴィネに、25柱君は恨みがましい目を向けた。親の敵を見るような目。
ヴィネさんや、一体この子に何をしたんだ。

「くっ…グリフォンになって八つ裂きにしてやりたいけど、僕よりアンタの方が強いからね!今日は勘弁してやるよ!」
「まぁまぁ、兄さん」
「誰が兄さんだ! 誰が!! 僕は認めてないぞ!」

物腰柔らかいけど35柱君は随分とノリがいい。双子だけどこんなにも性格に差が出るのか。目を釣り上げて威嚇していた25柱君は、ヴィネに頭を掴まれ苦悶している。

「すまないな、るし。コヤツらが耳元で泣く蚊のように五月蝿いのは我慢してやってくれ」
「う、うん」

涙目になっている25柱君は必死に35柱君にヘルプを送ってるけど、完全にスルーされている。チラチラ私にも視線を送ってくるけど、申し訳ないが助けるわけにはいかぬ。
ヴィネさんは恐ろしいのだ。
歯向かえばダブルフィンガーで目を潰される。ホント、あれは恐ろしい体験だった……。
暫くして開放された25柱君は、頭を抑えながらヴィネを指差し、不満げな顔を作った。

「大体さぁ、何で45柱がここにいんの?捕まってたんじゃなかったの?」
「うむ。それはもうガッチリ捕縛されていたぞ。だが、そこをこの我が主が助けてくれてな? 28柱の奴も我と同じ経緯を辿ってヤツらの手から逃げておる」

それを聞いた25柱君は、口に手を当て前かがみになった。

「ぷぷー!あの28柱が捕まってたなんて笑えるんですけどぉ! それに45柱、アンタともあろう者が人間の手を借りるなんてどうかしてるよ?…さてはアンタ、情を覚えちゃったりとかぁ?」

ヴィネの周りをくるくる回る25柱君。それをヴィネが手で払う。

「ふっ。なぁ25柱。汝、我が見ぬ間に随分とものを言うようになったではないか。ん? どう思う、35柱」

ピシリ、と固まる25柱君。ギギギと油の切れたブリキ人形のように首を回し、35柱君を見た。

「そうですね。確かに、45柱の言う通り、兄さんの態度が肥大したように感じられます」
「うぉっ!? おい、35柱! 僕を裏切るのか!?」
「裏切る? ふふっ、僕は実に合理的な判断をしたまでですよ」
「ムキィィィ!!」

腕を鷲の足に変え、今にも飛びかかりそうな25柱君を見て、ヴィネが挑発的な笑みを浮かべた。さりげなく魔術書グリモワールを手に持ち、チラつかせている。さらに開かれたページには28柱という文字が見える。
ヴィネ、君は何をしようとしているんだ。とてつもなく嫌な予感しかしないんだけど。てか、いつの間に私から魔術書グリモワールを盗ったのさ。

「さて25柱、口を噤まなければ28柱を呼ぶが。どうする?」
「うぇぇっ!? アイツ、アンタんとこにいるの!? 僕、アイツだけは会いたくないわ。絶対嫌だ!」

どうやら25柱君はベリトの事が苦手なようで。必死に胸に十字を切っている。
悪魔なのに十字架ってどうよ。と思ったけど、口に出すのはやめておこう。口は災いの元って言うしね。

「ヴィネ、25柱君はベリトに苦手意識でもあるのかな?」
「そうだ。だがまぁ、我も奴のことは苦手だが、ここまでではないな」

やれやれ、と手首を回すヴィネに同意するように35柱君は小さく頷いた。

「ふふっ、兄さんは28柱さんから不思議道具を盗んだことがバレて拷問された事がありますからね。そのことがトラウマで、兄さんは28柱さんの事が苦手なんですよ」
「んなっ!! バカッ! 口軽すぎるよ!! あと僕は兄さんじゃない!!」

そうだったんだ。誰でも自分を拷問した人を好きになることなんてないよね。下手したらトラウマもんだ。いや、下手しなくてもトラウマになるんだろうけど。

「さて、45柱。貴方の今の主はどのような名をお持ちなのですか?」
「そうだそうだぁ!気になるぞぅ!」
「直接本人に聞けばよかろう?」

首を傾げる35柱君に同調した25柱君は、ビシッと指先をヴィネに向けた。当のヴィネは片眉を上げて腕を組む。

「はぁ?どこにいんのさ。まさかアンタ、また監禁紛いのことしてるんじゃ…ぐぇほぉっ!?」

調子に乗り始めた25柱君の鳩尾にヴィネの拳がめり込んだ。白目を向いて泡を吹いている。かなり痛そうである。
そう言えば、力を振るうのは戦いの場のみだって、ついさっきヴィネ自身がそう言ってたと思うんだけど。気のせい?
また監禁紛いのことって……?ソロモンを監禁したりしてたの?

「黙れ。我が主は、ここにいる るしだ」
「「はぁぁぁぁ!?」」

いや二人とも。そんなに驚かないでください。というか、ヴィネがさっき言ってたじゃありませんか。

「我が先に言ったではないか」
「いやぁ、冗談かと。ははは」
「僕もです。従者かと思っていました」

ヴィネの隣に立っている私に目を向け、冷や汗を流しながら引きっった笑いを飛ばす彼らに、ヴィネは満開の笑みを広げた。

「……ふむ。そうか。冗談に、従者か。貴様らの腹は存外と弛んでいるようだな。では、28柱めも呼んでやろう」
「「「なぜにっ!?」」」

何でそんな考えにたどり着いてしまったんだ。
二人の叫びと私の嘆きが重なったのは、言うまでもない。
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