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土曜日、午後6時
10 完全に俺の負け
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よし、二十階に行く前にトイレでいっておこう。スッキリしてから動画は削除しよう。黒歴史に終止符を打つんだ。
その前にトイレ。
気持ち前かがみでトイレに急ぐ。
それにしても、アニキがもう少し携帯電話を使いこなせていたら危なかった。いくらこの世界にインターネットがないとは言え、画像をメールに添付して万が一康哉にでも送られたら大惨事になる所だった。
「あぶねーあぶねー……」
「何が危ないんだ?」
呟きに返事があって飛び上がりそうになった。
振り向くと、部屋の入り口に康哉が立っていた。
「こっ……こここ」
「鶏か」
「康哉!?」
い、いつからいたんだ!?
聞かれたか?あのエロ音声……。
「いっ、いつから……」
「今。お前からメールが来たから戻ってきた」
落ち着け修平。康哉は普通だ。多分聞かれていない。
「えっと、その……半獣の仲間はいいのか?お別れしなくて」
「少し抜けて来た。あいつらとは後でまた話すよ。危ないって何かあったのか?」
後でまた?
何故だろう。モヤモヤする。
「別に。俺の事なんていいから、早く戻れよ」
俺の言葉に、康哉は目を丸くした。
そのまま近づいて来る。いや、今近づかれるとまずい。携帯はさりげなくズボンのポケットに入れて隠したけど、元気いっぱいのムスコは隠しきれない。
「な、なんだよ……康哉。ち、近いって!」
うわぁ、壁際に追い詰められた。
「修平……お前もしかして、妬いてんのか?」
「妬いてるって何が?」
「俺が王様になってチヤホヤされてただろ?王様なんていかにも修平の好きそうな設定だからな」
え?そっち?
「それとも半獣に会いたかったのか?修平は動物も大好きだよな」
「動物なら俺もたくさん会ったよ。そんなんじゃない」
「妬いてないなら何で拗ねてるんだよ。俺がお前を放っておいたからか?」
う……。
図星だが、ハッキリ言われると自分の子供っぽさが恥ずかしくなる。
「だってさ……。せっかく魔法陣でお前を追いかけたのに、俺は全然役に立たなかったし、お前はこっちで半獣に慕われて上手くやってるし、言葉はペラペラだし、俺……かっこ悪すぎだろ。凹んでるから少し放っておいてくれ」
捨て台詞を残して離れようと思ったのに失敗した。
康哉ががっちり肩を掴んできて、壁際から動けない。そのまま康哉は耳元に顔を寄せてきた。
「……拗ねてるお前って、可愛いよな」
耳はヤメテ。背中がぞくぞくする。と言うより、話聞いてたのか?
「……いやあの、そういう話じゃなくて」
「俺が廃屋で、何て言ったか覚えてるか?」
廃屋?一週間前の?
何でいきなり話がとぶんだ。耳元で囁かれると頭が回らない。
「イルミネーション見ようって……」
「イルミネーション?」
違った。
肝試しだ。
それから廃屋から出るために賭けをして、康哉のカミングアウトを聞いたんだ。
「あと、男が好きだったって……。あ、もしかして康哉、あの半獣がタイプなんじゃないか?だから日本に戻りたくないんだろ……っ、イテテテ」
康哉に頬をつまんで引っ張られた。地味に痛い。
「こ、こーや……。いたい」
「俺が王様だろうと、異世界語がペラペラだろうと、お前の前では無意味なんだよ。俺は修平に一生かなわない。完全に俺の負け」
康哉はようやく頬を引っ張るのを止めた。
「お前を愛してるから」
言葉の意味を飲み込めず、馬鹿みたいに口を開けて頬をさする俺に、康哉の顔が近づいてきて。
気がつけばキスをされていた。
その前にトイレ。
気持ち前かがみでトイレに急ぐ。
それにしても、アニキがもう少し携帯電話を使いこなせていたら危なかった。いくらこの世界にインターネットがないとは言え、画像をメールに添付して万が一康哉にでも送られたら大惨事になる所だった。
「あぶねーあぶねー……」
「何が危ないんだ?」
呟きに返事があって飛び上がりそうになった。
振り向くと、部屋の入り口に康哉が立っていた。
「こっ……こここ」
「鶏か」
「康哉!?」
い、いつからいたんだ!?
聞かれたか?あのエロ音声……。
「いっ、いつから……」
「今。お前からメールが来たから戻ってきた」
落ち着け修平。康哉は普通だ。多分聞かれていない。
「えっと、その……半獣の仲間はいいのか?お別れしなくて」
「少し抜けて来た。あいつらとは後でまた話すよ。危ないって何かあったのか?」
後でまた?
何故だろう。モヤモヤする。
「別に。俺の事なんていいから、早く戻れよ」
俺の言葉に、康哉は目を丸くした。
そのまま近づいて来る。いや、今近づかれるとまずい。携帯はさりげなくズボンのポケットに入れて隠したけど、元気いっぱいのムスコは隠しきれない。
「な、なんだよ……康哉。ち、近いって!」
うわぁ、壁際に追い詰められた。
「修平……お前もしかして、妬いてんのか?」
「妬いてるって何が?」
「俺が王様になってチヤホヤされてただろ?王様なんていかにも修平の好きそうな設定だからな」
え?そっち?
「それとも半獣に会いたかったのか?修平は動物も大好きだよな」
「動物なら俺もたくさん会ったよ。そんなんじゃない」
「妬いてないなら何で拗ねてるんだよ。俺がお前を放っておいたからか?」
う……。
図星だが、ハッキリ言われると自分の子供っぽさが恥ずかしくなる。
「だってさ……。せっかく魔法陣でお前を追いかけたのに、俺は全然役に立たなかったし、お前はこっちで半獣に慕われて上手くやってるし、言葉はペラペラだし、俺……かっこ悪すぎだろ。凹んでるから少し放っておいてくれ」
捨て台詞を残して離れようと思ったのに失敗した。
康哉ががっちり肩を掴んできて、壁際から動けない。そのまま康哉は耳元に顔を寄せてきた。
「……拗ねてるお前って、可愛いよな」
耳はヤメテ。背中がぞくぞくする。と言うより、話聞いてたのか?
「……いやあの、そういう話じゃなくて」
「俺が廃屋で、何て言ったか覚えてるか?」
廃屋?一週間前の?
何でいきなり話がとぶんだ。耳元で囁かれると頭が回らない。
「イルミネーション見ようって……」
「イルミネーション?」
違った。
肝試しだ。
それから廃屋から出るために賭けをして、康哉のカミングアウトを聞いたんだ。
「あと、男が好きだったって……。あ、もしかして康哉、あの半獣がタイプなんじゃないか?だから日本に戻りたくないんだろ……っ、イテテテ」
康哉に頬をつまんで引っ張られた。地味に痛い。
「こ、こーや……。いたい」
「俺が王様だろうと、異世界語がペラペラだろうと、お前の前では無意味なんだよ。俺は修平に一生かなわない。完全に俺の負け」
康哉はようやく頬を引っ張るのを止めた。
「お前を愛してるから」
言葉の意味を飲み込めず、馬鹿みたいに口を開けて頬をさする俺に、康哉の顔が近づいてきて。
気がつけばキスをされていた。
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