盗賊とペット

カム

文字の大きさ
上 下
47 / 62
旅行編 お墓参り〜赤砂の街

19

しおりを挟む
 目覚めた時にはどこも縛られていなくて、身体は綺麗になっていた。といっても裸だしとてつもなくダルい。頭も痛いし腰も痛いしお腹の調子も悪い。寒気がするし関節も痛い。目覚めなければよかったと思うくらい絶不調だ。

 今何時なんだろう。
 窓が閉まっているから時間も分からないし、部屋は相変わらず真っ暗だった。隣にアニキがいなかったのでそろりと起き上がって、近くにあった服を身につけた。

 アニキ、もしかしてルイーズさんの所に行ったんだろうか。嫌な考えにたどり着いたけど、とにかく部屋を出てノロノロと共同トイレに向かった。

 トイレに行って少しスッキリしたから部屋に戻り、置いてあった水を飲み、ついでに貰った薬を飲む。お医者のおじいさんにあれだけ無茶するなって言われたのに、アニキには全然通じてない。

 ……俺のこと、愛してないからなのかも。

 この考えは思いつくと同時にすんなりと納得できた。
 そうだよな、普通は愛があればもう少し相手の身体を労わるものじゃないか? 契約のせいで離れられないから、性欲の捌け口にだけ使って、俺なんて壊れればいいと思ってるんだ。

 そう思うと涙が出て、枕に突っ伏して泣いた。

 アニキを島に助けに行ったことは後悔していない。みんなに忘れられても、アニキを助けたかった。だけど馬鹿みたいだ。少しくらいは感謝されると思ってた。アニキには過去にあんなに美人の恋人がいて、盗賊じゃなくなった今ならなんの障害もない。俺という邪魔者を除けば。


 そのまましばらくベッドで落ち込んでいたら、部屋の扉がノックされた。

「ミサキ君? 起きてる?」

 ルイーズさんの声だ。

 起きていたけど話したくなくて寝たフリをする。

「まだ寝てるのかしら……」

 扉の前に何かを置く音がして、ルイーズさんの足音は遠ざかっていった。いなくなってから扉を開けて廊下を覗くと、部屋の前にトレーに乗せられた食事が置かれていた。

 そういえば、仕事を手伝うって約束してたんだ。アニキのせいだけど、約束をすっぽかした事になるんだよな。

 ルイーズさんには悪いと思ったけど話す気になれない。でもトレーは受け取って、食べられそうなものだけ口にする事にした。どんな時でも腹は減るらしい。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,136pt お気に入り:846

【R18】王子のパンツを盗んで国外逃亡させていただきます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:334

追放された令嬢は追放先を繁栄させるために奔走する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:1,723

電車の男ー社会人編ー番外編

BL / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:451

幼なじみ王子と従者とホットチョコレート

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:51

俺はモブなので。

BL / 完結 24h.ポイント:7,795pt お気に入り:6,521

友人の好きな人が自分の婚約者になりそうだったけど……?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:769

終焉の謳い手~破壊の騎士と旋律の戦姫~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:299pt お気に入り:38

処理中です...