幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

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2. 出発②



 家を出てすぐ、向かいの家の前でウィルと強面のお爺さんーーリヒターさんが話しているのが目に入った。

 ウィルが母親に連れられこの村にやってきた夜、騒ぎを聞きつけたリヒターさんは様子を伺いに外に出てきていた。うちの玄関口で両親と一緒に話を聞いていたのが彼だ。
 ひとりぼっちになってしまったウィルを最初はうちで引き取るという話になったのだが、既に子どもが二人いるし診療所も忙しくて大変だからと、"リヒターさんの遠縁の子ども"という体で彼の家で育てられることになった。

 奥さんに先立たれ、娘さんもよその村に嫁いで行ってしまったリヒターさんは仕事を引退して静かにひとりで暮らしていたのだが、ウィルを引き取ると猟師の仕事に復帰して精力的に働き、生きる活力を取り戻した様だった。
 ウィルにも猟を教えて鍛え抜いた結果、今となっては彼の猟銃の腕は村一番と言えるほどだ。ここ数年は背がぐんぐん伸びて筋肉も付き、がっしりとした立派な体付きになった。

「お待たせ! リヒターさん、おはようございます」

 二人に駆け寄って声を掛けると、リヒターさんがその強面をこちらに向けた。

「ルカ、こいつにも言っていたんだが今日の午後は雨が降るぞ。早めに帰ってきなさい」
「じいさんの予測は当たるからな。昼過ぎには帰ることにしよう」

 そう言いながらウィルは壁に立て掛けていた猟銃を取り上げて肩に掛けた。
 長年山に入って猟をしていたリヒターさんの読みは伊達じゃない。今はすっきり晴れているけど、きっと午後には彼がいう通り雨が降るのだろう。雨季も近いし、忠告は聞いておいた方が良さそうだ。

「じゃあ行こうぜ。行ってきます、リヒターさん」
「ああ、気をつけて行ってこい」

 手を振るリヒターさんに見送られながら出発した俺たちは、村の表通りを歩き山へと向かいながら今日の予定を確認した。

「今日はソラの葉を中心に集めたいから山の東側に行こうと思うんだけど、ウィルはどうするんだっけ?」
「今日は鳥を頼まれているから北の方だな」
「了解。そっちには近付かないようにしておくよ」

 うちは俺が採集した薬草を調合して父さんが薬を作り、余ったものは加工し王都へ卸して収入の足しにしている。一方、リヒター家では山で獲った鳥獣の肉や皮、牙などを売って生計を立てていた。ウィルを引き取った後猟師に復帰したリヒターさんだったが流石に体力がついていかないとかで、最近はもっぱらウィルが猟に出ることが多い。

「どのみち俺はソラの群生地には近付けないから、流れ弾はあまり心配しなくていい」

 薬草を摘む俺がウィルの猟銃の流れ弾に当たらないよう、俺たちはいつもお互いの位置を確認し合って仕事をしている。じゃあなぜそこまでして一緒に山入るかと言えばーー

「昼飯は一緒に食べるよな?」
「うん、昼は一緒に……あ、そういえば! ウィルの分のお昼も父さんから預かってるよ。俺が持っておくから、後で一緒に食べよう」
「ああ、いつものところに集合だな」

 こうして時折り、ウィルは俺たちが二人で過ごす時間を作りたがる。村の同世代の友人たちはもちろん俺の家族やリヒターさんがいるのもダメで、とにかく二人きりで一緒にいたいのだという。
 もうじき彼も二十歳になるというのに、俺に懐いてべったりだった子どもの頃の名残を見せるところがちょっとだけかわいいなと思ってるのは内緒だ。
 けれどそう思う反面、ウィルは俺以外に親しい友人や恋人がいる素振りがなくて、俺が王都に行ったら寂しくさせてしまうのだろうかとちょっぴり心配になる。

 ウィルが村に来たばかりのころ、いきなり親元を離れ知らない村で暮らさなければならなくなった彼がどうにも可哀想で、無理やり構い倒した結果変な刷り込みをしてしまったんじゃないかというのが俺の予想だ。
 俺があまりにも一緒にいるからか、ウィルは俺さえいればいいと思っているきらいがある。俺は俺で友人が多い方では無いし、なんだかんだウィルとは気が合うからとても近い距離感のままこの歳まできてしまった。
 俺の存在が彼の交友関係を狭めてしまっているようで少し申し訳ないが……今のところ解決策は見出せていない。






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