幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

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3. 立話




「あら、ウィルにルカじゃない!相変わらず仲が良いのね」

 道路脇で井戸端会議をしていたおばさんたちのうちの一人がこちらに声を掛けてきた。人口二百人にも満たない小さな村だから、村の人は小さい頃から全員顔見知りだ。

「あらあら、ウィルくんまた筋肉がついたんじゃない? すっかり男前ね~」
「ホントよねぇ。猟銃の腕も良いし、王都に行けばすぐに騎士団で活躍できるんじゃない? そのうち第一部隊に呼ばれちゃったりして!」
「第一部隊の藍色の制服もきっと似合うわよね~!」
「この村から第一部隊の騎士が出たらあたしらも鼻が高いわ!」

 口々に話しかけてくるおばさんたちの言葉に、ウィルの表情がピシリと固まった。
 ーー王立騎士団第一部隊、この国最強の騎士と魔道騎士が集められる精鋭集団だ。藍色の軍服に身を包んだ無敵部隊は主に魔物の討伐や他国との争いで活躍する国民の英雄的存在だが……俺とウィルは知っている。十五年前、ウィルの暮らしていた村を滅ぼしたのは彼ら第一部隊だったということを。
 いくらウィルが銃や格闘術に長けていても、どれだけ魔術が使えても、王立騎士団、まして第一部隊に入ることだけはないだろう。第一部隊の藍色の軍服は、彼のトラウマそのものだ。

「やだなぁ、ウィルはリヒターさんの跡を継ぐんだから騎士団には入らないよ」

 言葉を発しなくなってしまったウィルの代わりに俺が答える。

「猟師になるより王都の騎士の方がよっぽど稼ぎが良いわよ! こんな田舎で暮らすより都会に出たいとか思わない?」
「もう、おばさんウィルを唆さないでよ! 若者が減ったらこの村大変だよ?」
「でもねぇ、せっかくこんなに強くてかっこいいのに勿体無いわ」

 同意するように、みんなが真剣そうな顔で「うんうん」と相槌をうち合った。
 ウィルの反応が悪いことを悟られないよう、俺はわざと声を大きくして口を尖らせる。

「それって、俺は村に残っても勿体無くないってこと?」
「あら違うわよ! ルカちゃんは騎士団なんて入ったらすぐ悪い男の餌食になっちゃいそうだから、あたしたち心配で送り出せないわ~」
「そうそう。ルカちゃんには危なすぎるわね!」

 ……失礼なことを言われている気がするが、話を上手くウィルから逸らすことは出来た。
 にしても、俺ってそんなに頼りないのか。いつも隣にいるウィルと比べたら確かにそうかもしれないが、俺の中の男のプライドが少しだけ傷ついた。
 そんな会話を続けていると、冷静さを取り戻したウィルが俺の肩をぽんぽんと叩いた。

「ルカ、そろそろ」

 そうだった、今日はあまりゆっくりしていられないのだった。

「あらやだ、引き止めてごめんなさいね」
「お仕事頑張ってね」

 見送るおばさんたちに手を振り、俺たち二人は山へ向かう。
 村を出て周りに人がいなくなった頃、突然立ち止まったウィルが俺の手首を掴んで引き留めた。

「ルカ、ありがとう」

  金色の双眸がじっとこちらを見つめている。

「ん? 何が?」

 なんだか気恥ずかしくなった俺は、にこりと笑ってとぼけて見せた。ウィルが気にすることなんて何もない。
 俺は、こいつが何も気に病むことなくのびのび幸せに暮らせるようになってほしいと、あの夜からずっとそれだけを願っている。









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