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17. 案内
医療棟を後にした俺たちは食堂を訪れ、俺は丸一日ぶりの食事を口にしていた。空腹感はとっくにピークを過ぎていたけど、食堂に近付いて肉の焼ける匂いを嗅いだ途端に盛大にお腹が鳴り始めた。
診察室で怪我を治してもらったあと、フィリさんは俺を医療棟の三階に用意された俺の部屋に連れて行った。部屋自体は狭いがひとりずつ個室が与えられていて、集団生活をした事がない俺にはとてもありがたかった。ベッドと机でいっぱいの部屋に入り小振りなクロゼットを開けると、そこには新品のシャツとスラックスが数セット用意されていた。隊服のジャケットも掛けてある。
「副隊長に言われて用意しておいたんだけど……うん、サイズは問題なさそうだね」
シャツを手に取り俺に当てながらフィリさんが言った。
「ありがとうございます。良かった、身ひとつで連れてこられちゃったからどうしようかと思ってたんです」
「生活に必要なものは大抵隊から支給されるよ。細々した物は時間を見て買いに行こう」
「あの、早速着替えても良いですか? 昨日は山仕事をしててそのまま連れてこられたから汚れが気になって」
さっきフィリさんに匂いを嗅がれた時からどうにも自分の体臭が気になって仕方ない。山での作業で汗をかいた上、土汚れも付いている。そうでなくても丸一日着替えられていないから不快感がすごい。
「そしたら軽くシャワーを浴びてきちゃったらどうかな。この階にあるから行ってきなよ」
フィリさんのありがたい提案に乗った俺はさっとシャワーを浴び、さっぱりとした状態で食堂に来ていた。
食堂は入り口でトレイを取り、カウンターで食べたいものを選んで持っていく形式だった。昼過ぎということもあり食堂は混んでいて、田舎育ちの俺は人の多さに圧倒される。この食堂にいる人たちだけでも村の人口より多い気がする。
「それしか食べないの? 朝ごはんみたい」
先に食事を選び終えテーブルについていた俺に、戻ってきたフィリさんが声を掛けた。
俺の取ってきた料理は野菜がたくさん入ったスープと小ぶりなパン、それから焼いたベーコン二枚だ。
「丸一日何も食べてないので、急にたくさん食べても身体に悪いかなって思って」
「それは確かにそうだね。さすがお医者さんの子だ」
「それに肉は元々量食べられないんですよ。これは父さんの影響かな」
フィリさんの皿に載ったステーキを見て俺は言った。
ひょろひょろと縦にばかり大きい父さんはあまり肉が好きではないらしく、その父さんに合わせてうちの肉料理はいつも量が少なめだった。代わりに野菜や果物を多く食べる習慣がついて、大人になった今でも肉をたくさん食べる気にはならない。
早々に全ての皿を空にした俺は、フィリさんが食べ終わるのを待ちながら辺りをきょろきょろと見渡した。さすがは騎士団と言うべきか、身体が大きく屈強そうな人が多い。俺はその中に見慣れた姿が無いか目を凝らした。
「ウィルフリードくんのこと探してる?」
「はい……あいつはどうしてるかなって心配で」
フィリさんは肉をひと切れ口に運びながらうんうんと頷いた。
「ルカくんと彼はどういう関係なの? 同郷っていうのは聞いたけど」
「俺とあいつは幼馴染なんです。家が向かいで、小さい頃からずっと一緒に過ごしてました。俺の兄貴も含めて三兄弟みたいに育ったんですよ」
「そっか。それでルカくんは彼の弱みになっちゃったんだね」
「不本意ながらそうみたいです」
すっかりステーキを食べ終えたフィリさんは、顎に手を当てて「それにしても……」と考え込む素振りを見せた。
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