幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

文字の大きさ
19 / 29

17. 案内





 医療棟を後にした俺たちは食堂を訪れ、俺は丸一日ぶりの食事を口にしていた。空腹感はとっくにピークを過ぎていたけど、食堂に近付いて肉の焼ける匂いを嗅いだ途端に盛大にお腹が鳴り始めた。

 診察室で怪我を治してもらったあと、フィリさんは俺を医療棟の三階に用意された俺の部屋に連れて行った。部屋自体は狭いがひとりずつ個室が与えられていて、集団生活をした事がない俺にはとてもありがたかった。ベッドと机でいっぱいの部屋に入り小振りなクロゼットを開けると、そこには新品のシャツとスラックスが数セット用意されていた。隊服のジャケットも掛けてある。

「副隊長に言われて用意しておいたんだけど……うん、サイズは問題なさそうだね」

 シャツを手に取り俺に当てながらフィリさんが言った。

「ありがとうございます。良かった、身ひとつで連れてこられちゃったからどうしようかと思ってたんです」
「生活に必要なものは大抵隊から支給されるよ。細々した物は時間を見て買いに行こう」
「あの、早速着替えても良いですか? 昨日は山仕事をしててそのまま連れてこられたから汚れが気になって」

 さっきフィリさんに匂いを嗅がれた時からどうにも自分の体臭が気になって仕方ない。山での作業で汗をかいた上、土汚れも付いている。そうでなくても丸一日着替えられていないから不快感がすごい。

「そしたら軽くシャワーを浴びてきちゃったらどうかな。この階にあるから行ってきなよ」

 フィリさんのありがたい提案に乗った俺はさっとシャワーを浴び、さっぱりとした状態で食堂に来ていた。

 食堂は入り口でトレイを取り、カウンターで食べたいものを選んで持っていく形式だった。昼過ぎということもあり食堂は混んでいて、田舎育ちの俺は人の多さに圧倒される。この食堂にいる人たちだけでも村の人口より多い気がする。

「それしか食べないの? 朝ごはんみたい」

 先に食事を選び終えテーブルについていた俺に、戻ってきたフィリさんが声を掛けた。
 俺の取ってきた料理は野菜がたくさん入ったスープと小ぶりなパン、それから焼いたベーコン二枚だ。

「丸一日何も食べてないので、急にたくさん食べても身体に悪いかなって思って」
「それは確かにそうだね。さすがお医者さんの子だ」
「それに肉は元々量食べられないんですよ。これは父さんの影響かな」

 フィリさんの皿に載ったステーキを見て俺は言った。
 ひょろひょろと縦にばかり大きい父さんはあまり肉が好きではないらしく、その父さんに合わせてうちの肉料理はいつも量が少なめだった。代わりに野菜や果物を多く食べる習慣がついて、大人になった今でも肉をたくさん食べる気にはならない。

 早々に全ての皿を空にした俺は、フィリさんが食べ終わるのを待ちながら辺りをきょろきょろと見渡した。さすがは騎士団と言うべきか、身体が大きく屈強そうな人が多い。俺はその中に見慣れた姿が無いか目を凝らした。

「ウィルフリードくんのこと探してる?」
「はい……あいつはどうしてるかなって心配で」

 フィリさんは肉をひと切れ口に運びながらうんうんと頷いた。

「ルカくんと彼はどういう関係なの? 同郷っていうのは聞いたけど」
「俺とあいつは幼馴染なんです。家が向かいで、小さい頃からずっと一緒に過ごしてました。俺の兄貴も含めて三兄弟みたいに育ったんですよ」
「そっか。それでルカくんは彼のになっちゃったんだね」
「不本意ながらそうみたいです」

 すっかりステーキを食べ終えたフィリさんは、顎に手を当てて「それにしても……」と考え込む素振りを見せた。



感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります