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18. 心配
「ウィルフリードくんが上手くやれるか、俺も心配だな」
「そう、ですか?」
「うん。すごく異例な形で入隊しちゃったからね」
フィリさん曰く、大神官のお告げで副隊長直々に田舎の若者を勧誘しにいった、という話はすでに隊全体に広まっているらしい。
その副隊長が季節外れの新顔を連れて歩いていたら、"英雄"は瞬く間に注目の的だろう。
「俺たちみたいな後方支援組は民間から入ってくる人も多いんだけど、戦闘要員の兵たちはみんな入隊テストに合格したあと一年間訓練部隊で共同生活をするんだ」
「そうなんですね。村から騎士団に入る人なんていなかったから知らなかった」
「うん。入隊テストで優秀だった人や貴族の子息たちは訓練部隊のかわりに士官学校に入るんだ。ウィルフリードくんは入隊テストを受けてないどころか訓練部隊も士官学校も出てないのにいきなり士官候補扱いだからね、目立つよ」
お告げがあると言っても特別扱いにも程がある。他の隊員からしたらいい気持ちはしないだろう。
それにいくらウィルに魔術の才能があるとはいえ、彼は今まで何の訓練も受けていないただの猟師だ。いきなり精鋭だらけの騎士団に放り込まれてついていけるのか? という心配もある。
「ま、ルカくんも大概目立っちゃってるけどね!」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。だってその首輪、昔使われてた奴隷用の首輪だもん。そんなの着けさせられてる人そういないよ」
俺ははっとして自分の首を触る。皮っぽい手触りのそれは、機能を考えると確かに奴隷用にぴったりだ。奴隷制度が廃止されて久しく、もちろん村にもそんな身分の人はいなかった。
「俺さ、副隊長の考えがあんまりよく分かんなくて。ルカくんは確かにウィルフリードくんに対しての人質なんだろうけど、それにしてはずいぶん自由にさせてくれてるよね」
「この首輪で監視されてるみたいですから、逃がさないって自信があるんじゃないですかね」
「そうかな? なーんか、それだけじゃない気がするんだよね……」
確かに、今俺が置かれている状況には大いに違和感がある。たまたま俺を連れてきたって話だったけど、そんな人間をいきなり入隊させて働かせる理由はなんだろう。
それに、そもそも人質を取ってまで急いでウィルを入隊させる意味も分からない。国を救う英雄にしようっていう話なんだから、もっとゆっくり説得するなりできたのではないだろうか。というか、普通そうすべきだ。
……考えても今俺が持っている情報じゃなにも分からない。どうせすぐには解放してもらえなさそうだから、少しずつでも情報を集めて身の振り方を考える他ない。
「ルカくんはなんかすごく落ち着いてるよね。こんな訳の分からないことになってるのに」
「なんというか……あまりにも急に連れてこられたから、まだあまり実感が沸いてないのかもしれないです。それに俺なんかよりウィルの方が絶対大変だから、そればっかり気になっちゃって……」
「そっか。ま、俺もできる限りサポートするからなんでも言ってね」
フィリさんは残っていた水をぐびと飲み干すと、トレイを手にとって立ち上がった。
「じゃあ、職場を一通り案内するね。そのあとこっそりウィルフリードくんの様子を見に行っちゃおう」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って微笑むフィリさんも大概飲み込みが早いというか、適応能力が高い。俺はもうこの人に受け入れて貰っている気がして、やけに落ち着いていられるのはそのお陰かもしれないなと思った。
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