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19. 再会①
食堂を出た後、フィリさんと俺は医療棟に戻り残りの階を見て回った。
詰所に寄った際に挨拶をさせて貰ったが、さすがは衛生班というべきなのか、人当たりが良くて話しやすい人ばかりだ。俺の境遇にも同情的で、俺は少し頑張ろうという気がしてきた。上司となる班長は不在だったから、また別の機会に挨拶させてもらうことになっている。
「フィリ、ちょっと頼まれてくれないか」
さっき挨拶したうちの一人、茶髪で長身の先輩がフィリさんに声を掛けた。
「郵便室にこの前発注した備品が届いてるはずなんだ。ルカと二人で取りに行ってくれないか」
「分かりました。……あっちはまだ案内してないから丁度良いですね」
「だろ? 取ってきたら倉庫に入れといてくれよ」
「了解です」
フィリさんと短くやり取りをして先輩はどこかに立ち去って行った。
郵便室は敷地の裏門に併設されている小さな建物だ。外部から送られて来た荷物は一旦全てここに留め置かれ、各班に分配されていく。
俺が入れられていた地下牢や食堂からは逆方向にあるため、こっちに来るのは初めてだ。
「あ、いけない忘れてた!」
荷物を乗せるための台車を押しながら郵便室に向かう途中、突然フィリさんが大きな声を出した。
「俺、経理の人に時間あるとき寄れって言われてたんだった」
「経理ってその建物ですよね? 台車見てますから行ってきてください」
ちょうど、事務方の詰所がある建物の横を通りかかったところだった。フィリさんも建物を見て思い出したのだろう。
「悪いね、そんなにかからないと思うからちょっと待ってて」
そう言って走っていくフィリさんに手を振り、台車とともに建物の影に入った。
牢を出てから、初めて完全に一人きりになった。
周りに人がいないと頭の中で色々と考えてしまう。自分が置かれている状況は、まあ分からないことも沢山あるけれど、立場は分かった。逃げられない以上ここで働きながら情報を集めていくしかない。
段々落ち着いて来たからか、家族はどうしているだろう、というのが気になった。俺が攫われたとき、母さんの姿が見えたな。うちの両親は俺に対して過保護なところがあるから心配してるかな。仕事も、雨季の前に仕込まなきゃいけない薬が沢山あったのに出来ずじまいだ。父さん一人でやるには量を減らさなきゃならないだろう。
逃げ出すことはできなくても、手紙くらいは送れないだろうか? せめて王都にいる兄さんに連絡が取れればいいんだけど……。郵便室で荷物を引き取るついでにフィリさんに教えてもらえないかな。
そんなことを考えながら、ふと顔を上げると、少し先の渡り廊下に見知った姿を見つけた。すらっとした長身に黒っぽい髪。見慣れない黒のシャツとスラックスを着ているけど、間違いない、ウィルだ。
振ろうとした俺の手が上がる前にウィルがこちらに気付き、横を歩いていた人に何か声を掛けた。少しだけ会話をすると、ウィルが一目散にこちらへ走り寄ってくる。
「ルカ!」
「ウィル、良かった。会えないかなと思ってたんだ」
「何か嫌なことはされてないか? 怪我はどうした?」
ウィルが俺の両肩をがしりと掴んで捲し立てる。
「怪我は治してもらったし、特になにもされてないよ。普通に職場案内されてた」
「結果的に巻き込んでしまってすまない」
「いいって。そもそも最初に俺が捕まったのが悪い」
ウィルは、何かに耐えきれない、というような顔をしたかと思うといきなり俺を思い切り抱きしめた。
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