幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

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24. 緊迫②





「俺が魔物? 訳のわからない言い掛かりはやめてくれ!」

 首を掴まれた手を両手で引き剥がそうとするがびくともしない。しかも、扉の近くにいた男がもがこうとする俺の両足を押さえつけた。

「おかしいと思ったんだよ。シュナイダー副隊長ともあろうお方がいきなり田舎者を二人も連れてきたと思ったら、あからさまに贔屓し始めたからな。エヴァン、俺たちの読み通りで間違いなさそうだぜ」

 頭上の男が俺の足元へ向けて声を掛けた。

「やっぱりな。ゲルトにお前の話を聞いてピンときたんだ。地元の伝承に魔術師を誘惑して精気を吸い上げる魔物の話があってな。お前、その魔物だろう」
「はあ? そんなわけないだろ! 俺は普通の人間だってば!」
「普通の人間? 普通の人間からこんなにいい匂いがするわけないだろう。それにお前に触っているとすごく心地がいいんだ。そうやって魔術師を誘惑してるんだろ?」

 背後の男が俺の上半身を抱き上げ、首筋に顔を埋める。思い切り息を吸い込まれる感触にぞわぞわして全身に鳥肌が立った。首を掴んでいた手はそのまま俺の首筋をなぞり、反対の手のひらで服越しに胸を弄られる。

「や、やめろッ、離せってば」
「副隊長を楽しませてやってんだろ? 俺らも相手してくれよ。俺の精気分けてやるからさ……ってエヴァンは楽しむだけか」
「俺は魔術師じゃないから"心地いい"とかはわからねぇけど、こんだけ顔が良ければなんでもいいわ」
「やだ、離せよ! 誰かっ……んんッ」

 大声を上げようとした口を大きな手のひらで覆われる。広げられた足の間にエヴァンと呼ばれた男が座り込み、俺のスラックスのベルトに手をかけた。ーーいくら鈍いと言われる俺でも、こいつらが何をしようとしているかは流石に分かる。
 気を付けろとは言われてたけど、まさかこんなことになるなんて。エリート揃いの王立騎士団第一部隊の隊員にこんな乱暴者がいるなんてどうなってるんだ。

 ばたばたとがむしゃらに動かした足が男の顔に当たり大きな身体が一瞬だけぐらりと揺れたが、その隙に逃げられるかといえば全然そんなことはなくて、あっという間に足首を掴まれて制圧される。

「いってぇな! 暴れてんじゃねぇぞ」

 エヴァンが拳を握り、大きく振りかぶった。
 やばい、殴られる。衝撃に備えて歯を食いしばり、ぎゅっと目を瞑った。
 けれどいくら待っても拳が振り下されることはなくて、それどころか背後から俺を押さえつけていた腕も弛んできた。
 不審に思って目を開くと、エヴァンが背後から髪を鷲掴みにされていた。ゆっくりと目線を上に移動すると、そこには冷え切った表情で男たちを見下ろすシュナイダー副隊長が立っていた。いつの間に? どうして? 色んな疑問が頭に浮かぶ。

「貴様ら、何か言い訳はあるか?」
「副隊長……これは、その……」

 全く温度を感じさせないシュナイダーの声色に男たちが怯え始める。背後にいるゲルトに至ってはガタガタと震えていた。

「処分が決まるまで自室待機だ。逃げようだなどと思うなよ」
「ふ、副隊長! 魔物を庇うんですか! アンタこいつに誑かされて……」

 ゲルトの言葉に、シュナイダーは嘲るような笑みを浮かべた。

「こいつが魔物だって? 馬鹿も休み休み言え。こいつはれっきとした人間だし、人を誘惑するような力もない。お前たちの勘違いだ」
「けど……!」
「そんなくだらないことしか言えないのならとっとと部屋へ戻れ。不快だ」

 声を荒げているわけでもないのに、シュナイダーの言葉は有無を言わさない強制力を持っているようだった。顔も上げられなくなった二人は黙り込み、いそいそと逃げるように倉庫を出て行った。



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