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27. 変化
「あんな事があったばかりで、お前を怖がらせるんじゃないかと」
「さっきのはびっくりしただけだよ。そりゃあ怖い思いをしたばっかりだけど、それでもウィルのことを怖いなんて思うわけない」
俺はぶんぶんと首を振りながらウィルの言葉を否定した。暴行未遂なんて目に遭って気が立っているかもしれないけど、何があってもウィルのことまで怖くなることはないと断言できる。
「というかお前最近ずっとその調子だろ。この二週間、通路ですれ違っても素っ気ないし、なんていうか……」
寂しい、と思わずそう言いそうになって口をつぐんだ。ウィルは俺より大変な思いをして訓練に励んでいるんだから、俺のしょうもない気持ちを押し付けるのは良くない。
自分勝手な気持ちを隠すみたいに、俺はさっとウィルから目を逸らした。
「とにかく! 撫でようとして途中で止めるとか、そういう気の使い方はしないでほしい。いつも通りでいいから」
顔を背けたまま横目でちらりとウィルを見ると、彼はぽかんとした顔で口を開いた。
「嫌じゃないのか」
「嫌って何が?」
「その……栄養剤替わりにべたべたされるのは嫌だと言っていただろう」
確かに言った。俺の能力がわかったあの日だ。あの時想像していたのは騎士団中の名前も知らないような不特定多数の人たちに利用される光景だ。もちろんそこにウィルは含まれない。
「それは知らない奴とか不特定多数の相手に触られるのは嫌だって思っただけだよ。逆に、ウィルの役に立てるならいくらでも触ってくれていい」
「でも、今までずっと騙すような真似をして悪かったと思ってる。お前の能力のことを知っておきながら黙っていたんだから、騙して利用していたと思われても仕方ない」
その言葉を聞いて、ふと、フィリさんと話していた疑問を思い出した。
「そうだ、お前、俺の能力知ってたのになんで教えてくれなかったんだ?」
今度はウィルが気まずそうにする方で、ウィルは「あー」とか「その」とか言いながら目線をうろうろさせた。長く言い淀んだあと、彼はゆっくり言葉を選びながら話し始めた。
「それも……申し訳なかった。俺が悪い。あの村には俺以外に魔力持ちもいなかったし言わなくても支障はないと思っていたんだ。それに……」
「それに、なんだよ?」
「いや、いい。これは俺の独りよがりなわがままだ。言い訳はしない」
そう言ったきりウィルはすっかり口を閉ざしてしまった。どうやら本当にこれ以上言う気はないらしい。
「……よく分かんないけど、いいよ。怒ってないし。それよりお前、大丈夫とか言って随分疲れてるだろ? ほら」
そう言いながら俺はウィルに向かって両手を広げた。ウィルは戸惑ったように動きを止める。
「ええと、それは一体どういうつもりでやってるんだ?」
「訓練大変そうだし、魔力を回復したらいいかと思って……その、嫌ならいいけど……」
余計なお世話だったかと一瞬迷ったが、ほら、と言ってウィルの顔を見上げた。全く自覚はないけど、せっかく彼の役に立つ能力が分かったんだ。ウィルにしたってこの能力を利用しない手はないだろう。
「本当に良いのか? 俺はお前を騙し討ちのように利用していたんだぞ」
「だからいいって。言ったろ、ウィルの役に立てるならなんでもいい」
両手を広げたまま話すのもなんだか妙で、気恥ずかしくなってきた。やるなら早くしてほしい。
「……その、直接肌に触れないと回復できないから抱きつくんじゃ意味がないんだ」
「あ、そうだったな」
一気に恥ずかしさが勝って両腕を引っ込めた。顔に熱が集まるのが分かって思わず俺は俯いた。
「ルカ、撫でてほしい」
ウィルは俺の両手を取ると右手を持ち上げて、俺の掌を彼の頬に導いた。ウィルの頬に触れた俺の手は冷えていたみたいで、じんわりと彼の体温を感じる。
魔力の増幅ができているのか俺には分からないが、ウィルが満足気に頬を緩めたから全く無意味ではなさそうだと察することができた。
そのうち俺の手を支えるウィルの手が離れていったので、俺はほっぺたから手を離してぽんぽんと彼の頭を撫でた。いくら幼馴染とはいえ立派な体躯の成人男性の頭を撫でるのはどうかと思うが、訓練に励んでいるウィルを褒めてあげなきゃ、という気持ちになったのだ。
「ありがとう、ルカ」
「こんなんで良ければいつでも。未来の英雄様の役に立てて嬉しいよ」
目を細めてウィルが笑った。俺もつられて笑みが溢れる。……彼の笑顔を見たのはいつぶりだろう。
村にいた時の俺たちに戻れた気がして、俺はすっかりここがどこだかを忘れていた。
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すごい好きで夢中で読み進んじゃいました!
それにしても無自覚垂らしのルカくん
いつかウィルくんにお仕置され…
コメントありがとうございます^^
この調子だとウィルの怒りを買うのも時間の問題ですね……笑
のんびり更新ですがお付き合いいただけると嬉しいです!
コメント失礼します!
これから主人公がどうなるのかドキドキです!
コメントありがとうございます!
そう言っていただけると励みになります!!