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ヘイスレイブ奪還編
第100話 暗躍するオガリョ
しおりを挟むフォールドーンの荒野を飛ぶカナメルだったが、空高く上がる雷光を発見し、高度を下げた。
カナメル「あれは、マツだな」
マツは必死に雷光を空へと放ち、救助を待っていた。
カナメル「よう、大丈夫かい?」
マツ「カナメルさん!!来てくれると信じていました!ドラが瀕死の状態なんです、応急処置はしたのですが」
すやすやと眠るドラを見てカナメルは安堵した。
カナメル「まぁ、大丈夫でしょ。ドラの自然治癒力は通常の人間の三倍はあるし。とりあえず乗りなよ、これからヘイスレイブに向かう」
マツ「トゥールさん達は無事なのでしょうか?」
カナメル「無事だよ、まぁその話は道中するよ」
マツ「カナメルさん、その、身体に纏っている赤いオーラは何ですか?」
カナメル「あー、まぁ全部道中話すよ」
マツ「分かりました」
カナメルが鳳凰の背に乗ろうとした時、鳳凰は炎となって消えてしまった。
カナメル「あれ?」
魔法を発動しようとしても突然の魔力切れにより発動しない。
赤のオーラも消えていた。
マツ「どうしました?」
カナメル「うーん、分からん。突然魔力切れというか、オーラ切れだ、これについてはヘイスレイブでナオティッシモ先生に相談してみようと思う。マツ、何か召喚魔術あったっけ?」
マツ「三人程度を乗せられるものならあります」
カナメル「流石に歩くのはなぁ、お願いします」
マツ「分かりました。出よ、ガブちゃん!」
ガブガブ
出てきたのは大きなトカゲである。
カナメル「、、、トカゲかよ」
マツ「三人乗れるのはこれくらいしかないんですもん」
カナメル「まぁいいか、ゆっくり行こう」
三人はヘイスレイブを目指した。
~~~~~~~~~~~
ドラ「う、、、うぅ」
突然ドラが起き上がり、伸びをした。
ドラ「あれ、カナメルさん、おはようございます!」
マツ「ドラ!!!身体は大丈夫なの?」
ドラ「うん!寝たら良くなった」
カナメル「おはよう、寝てる間にもう少しでヘイスレイブに着くよ」
ドラ「ヘイスレイブに?ツグルさん達はどうなったんですか?」
カナメルは溜息をついた。
カナメル「生きてるよ、まぁ色々あったんだよ」
マツ「カナメルさん、二度目の説明は面倒だと顔に書いてありますよ」
カナメル「でしょうね」
ドラ「皆無事なら、オッケーです」
ドラは頭の上で大きく丸を作って笑った。
カナメル「そんなこんなで、ようやくヘイスレイブ領に入ったな」
マツ「ですね、ガブちゃん頑張ったね」
ガブガブ
カナメル「このトカゲ意外と燃費良いなぁ。もし魔力が無限にあれば鳳凰で移動するけど、鳳凰は移動に使うには燃費が悪すぎる」
マツ「Sランク召喚魔法ですもんね。ちなみにガブちゃんはCランクです、戦闘は無理ですし人を乗せてノソノソと歩くことしか出来ません」
カナメル「こんなに長い時間召喚を維持出来てるんだから、十分な働きだ」
マツ「ありがとうガブちゃん!」
ガブガブ
カナメルはナミチュの手紙に改めて目を通した。
[カナメルさんへ、今どこにいますか?国が大変なことになっています。城が落ちたあの日、私が目にしたのは漆黒の騎士に胸を貫かれるマキニウム王の姿でした。そこにカナメルさんの姿は無く、私は身を隠しました。それから数日、王が不在になった場合、キューティ領の領主であるアンチェアさんが王として国を治めることが決まっていたはずですが、国会の際にアンチェアさんの姿はなく、代わりにアクザイア領の領主であるオガリョが王になるという話でまとまりました。オガリョは私利私欲で国を我が物にしようとしています、清廉潔白でお強いアンチェアさんが王を辞退するとは思えません、何か良からぬことが起きているのは確かです。私はヘイスレイブにて調査を続けます。カナメルさんも早くヘイスレイブに戻ってきてください」
カナメル「ドラも起きたことだし、そろそろ歩くか。アンチェアが順調に王になれなかったのだとしたら、、、、ここからは慎重に動いた方が良い」
ドラ「湿気凄いっすねぇ、帰ってきたって感じっすね」
湿気の多いヘイスレイブ領を三人は歩き出した。
「何者だ!?」
すると突然数名のヘイスレイブ兵が現れ、三人へと杖を向けた。
「あ、、あなたは、、、炎のマント、カナメル様」
カナメル「今ヘイスレイブはどうなってるんだ?」
ヘイスレイブ兵達は視線を送り合い、震えている。
マツ「あなた達のその服の紋章、アクザイア家に仕える者達ですね?領主のオガリョは今どこにいるんですか?」
ヘイスレイブ兵は後退りながらブツブツと何かを唱えている。
そして転送魔法で消えてしまった。
一人だけ、その場に残ったヘイスレイブ兵がいた。
カナメル「ふーん、あんたは逃げないのか?俺達の足止めのために捨て駒にされたか?」
突然ヘイスレイブ兵はフードをとり、素顔をあらわにした。
ピーモ「お久しぶりです、カナメル様、マツ、ドラ」
マツ「え!!ピーモ!!!生きていたんだね!!良かった!!」
ドラ「ピーモだ!久しぶり!」
ピーモと呼ばれる女性とマツとドラは久々の再会に抱擁している。
カナメル「んーと、誰だっけ?」
マツ「私の同期のピーモです。アンチェア様の部隊にいた者です」
ピーモ「こうして面と向かってお話するのは初めてかもしれませんね」
カナメル「久々の再会に水刺して悪いけど、単刀直入に聞く、アンチェアはどうした?」
ピーモ「アンチェア様は、、、、囚われています、おそらく」
カナメル「おそらく?」
ピーモ「分かりません、オガリョが突然支持されだし、今はオガリョが国を治める流れになっています。アンチェア様を支持する領主の方々は皆殺され、その配下の者達は私のように末端の兵士として扱われています」
カナメル「殺されただと!?イマムやヤマカイは死んだのか!?」
ピーモ「はい、アンチェア様を支持したために、死刑に」
カナメル「くそ!!!!!状況は想像していたよりも悪い」
カナメルは拳を握りしめた。
ドラ「そのオガリョって方は何者なんですか?」
カナメル「現アクザイア領の領主で、俺の同期だ。アンチェア、イマム、ヤマカイも皆同期で今後のヘイスレイブを支えるために必要な人材だった」
マツ「四天王のオダルジョーさんやホーリーさん、スカポンさんも同期なんですよね?」
ドラ「まさに奇跡の世代ですね」
カナメル「確かにそうかもしれない。ただ、若者の四天王への抜擢や領主への任命には色んな要因が絡んでるんだ。伝説の教師がいたり、国の制度が変わったり、色々。。今はそんなことはどうでも良い、とにかく今はナオティッシモ先生のところへ行こう。あの人なら国の情勢に詳しい」
カナメルはまだ魔力が回復していなかった。
明らかに魔力の回復が遅い、赤のオーラの副作用なのだろうか?
今すぐにでもオガリョに会って話し合い、場合によっては戦う必要があるが、それが出来ない。
マツ「ピーモも一緒に行こうよ」
ピーモ「それは出来ないんだ、私はすぐに戻らなくちゃならない」
ドラ「炎のマントが領内に侵入してきたとなると、オガリョさんは気が気じゃないでしょうね」
ピーモ「そうだと思う。もしかしたら何か動きがあるかもしれない、私は戻ります」
カナメル「待て、ナミチュはどこにいる?」
ピーモ「すみません、分かりません。では」
ピーモは転送魔法で消えた。
カナメル「状況をもっと詳細に知る必要がある、ついて来て」
カナメルを先頭に三人は樹海を進んだ。
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