神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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分裂のトルコネ編

第121話 ホワイトドラゴン

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ある日

「ホワイトドラゴンが出たぞぉぉぉおお!!!!」

警鐘が鳴り響き、街は臨戦態勢となった。

「対竜撃バリスタ用意!!」

兵士達は慌ただしく駆け出した。

ヒーロー「おいリキッド、たかがドラゴン一体、お前がさらっと片付けちまえば良いだろ?いつもみたいに」

リキッド「そうしたいのは山々だが、残念ながら今回はそれが出来ん。ホワイトドラゴンには氷魔法が殆ど効かないんだ」

ヒーロー「おいおい、ホワイトヘルムの住民の八割は氷魔法を使うんだろ?どうすんだよ」

リキッド「そのためにホワイトドラゴン用にバリスタや突撃兵を配備している。まぁ、被害は毎度のこと甚大だが、、、、」

ヒーロー「お前なぁ、名誉騎士団長様なんだろ?被害が甚大に出て、よくそんな堂々としていられるな!」

ヒーローは腕を組みながら何故か説教じみた様子でリキッドへと詰め寄る。

リキッド「ホワイトドラゴンが出現する周期は今のところ一年に一度だ、それをこの程度の被害で収められているというのは好成績なんだよ、まぁ頭の悪いお前には分からないだろうが」

「撃てぇぇ!!!!!」

部隊長が交戦命令を出し、ホワイトドラゴンとの戦いが始まった。

ホワイトドラゴンは大きく息を吸い込んだ。

「ブレスだ!!!壁の中に避難せよ!!」

兵士達は訓練通りに組織的な動きを見せる。

ヒーロー「おおぉおお!!スゲェなぁ、、、誰一人として遅れをとってねぇ」

リキッド「当たり前だろ、この戦法は全て俺が考案しているんだから」

ヒーロー「え!?そうなのか!?」

ヒーローはハッとしたようにリキッドを見た。

ヒーロー「流石は名誉騎士団長様ってことか」





その後も組織的な動きでホワイトドラゴンへと対応し、ホワイトヘルムの兵士達は遂にドラゴンを仕留めた。

リキッド「今回は殆ど被害も出なかったようだな、部隊長、タイムは?」

「13分20秒です、前回よりも4分早い!!好成績です!」

部隊長の喜ぶ顔とは裏腹に、リキッドは表情を変えずに答えた。

リキッド「ホワイトドラゴンが空中戦に持ち込むために翼を広げた瞬間に、バリスタを翼骨へと打ち込め、その精度と速度はもっと上がるはずだ。兵士達へ周知し、訓練を続けろ。目指すは10分以内だ」

「はっ!!かしこまりました!!」

兵士達は撤収の準備を始めた。

ヒーロー「おいおい、お前厳しすぎるだろ。魔法を使わずに13分で竜を仕留めたんだぜ!!正直俺は驚いたよ、フレイムラン王国じゃ、まず無理だな」

リキッド「お前には今後の情勢がどう見える?」

ヒーロー「あ?」

リキッド「最近の魔物の出現頻度とその力は右肩上がりだ。ホワイトヘルムとフレイムランも争っている場合ではなくなってきている。おそらく王達は近々何かしらの対策を打ち出すことだろう。そんな中、未来に向けて俺たちに出来ることは何なのだろうか?考えたことはあるか?」

ヒーロー「、、、、ねぇよ」

リキッド「常に未来を予測して動け、そして早々にメリットのある目的を達成しろ。そうして貢献すればするほどに、勝手に地位は上がっていく、王に会いたいんだったら、利己的な主観じゃなく、もっと視野の広い思考回路を持つべきだな」

ヒーロー「分かってるよ、そんなこと!名誉騎士団長様は随分とホワイトヘルム想いなんですねぇ、きっとリキッド様は世界に平和をもたらしてくれるのでしょうね」

ヒーローはわざとらしくリキッドを褒め称えた。

リキッド「いや、俺は世界平和なんてものは無理だと諦めている。今俺がここにいるモチベーションは、ブランドだ」

ヒーロー「は?ブランド?」

リキッド「ホワイトヘルムという大国の名誉騎士団長を任されているという、ブランド。その格好良さのために、動いている。それがたまたまホワイトヘルム王国の為になっているだけさ」

ヒーロー「、、、、完全に利己的じゃねぇか!!お前クソ野郎だな」

リキッド「はて、何故そうなる。名誉騎士団長として周りから見られることが俺のメリット、俺が名誉騎士団長として貢献すると、それは国のメリットになる。理由や動機など何でも良い、要は結果がどうなっているか。自分が周りにどんな影響を与えているかのみが、価値のある者として存在するための唯一の判断材料だろ?」

ヒーロー「だーめだ、お前と話してると頭がおかしくなりそうだ」

リキッド「はは、よく言われるよ」

撤収の空気が漂う中、大きく警鐘が鳴り響いた。

リキッド「おっと、次は何事だ?」

「、、、ホ、ホワイトドラゴンだぁぁ!!!迎撃準備!!!!!!」

リキッド「、、、、なるほど」

リキッドは表情を変えずに思考を巡らせていた。

ヒーロー「おいおいおい!!一年に一度じゃねぇのかよ!!」

リキッド「今まではそうだったが、これからはそうではないというだけのことだな。パターン2へ移行する」

「し、しかし、、、氷魔法以外の、、王国内人口の二割の魔法を扱える者達の準備はまだ整っておらず、、、」

リキッド「ウォールを張るだけだ、その間にバリスタ、突撃兵の隊列、壁の準備、間に合えば拘束具の準備をすれば良い」

「それが、、、結局ウォールを扱えるようになった者はいなかったんです」

リキッド「あんな初歩的な魔法をか、、、、」

「どうしましょうか?」

リキッドは閃いた様子でニヤリと笑った。

リキッド「いるじゃないか、氷魔法以外を扱えて、ウォールを扱える者が」

リキッドはヒーローの肩を叩いた。

ヒーロー「別に良いけど、守るのは苦手だ。やるんだとしたら、あの竜を仕留める。兵士達は撤退させろ」

リキッド「よし分かった、盛大に暴れてこい」

ヒーロー「、、、、、ツイにキタァァ!!!!ヒーローの出番だ!!!!」

ヒーローは身体に炎を纏いながら、ホワイトドラゴンへと駆け出した。
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