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マイケルの自空間編
第148話 風の国の物語
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ここは風の国。
十字架のような形をした不思議な大陸。
この大陸の中心には大きな都があり、花の城と呼ばれる建物があった。
そこには巫女と呼ばれる未来予知能力のある女性と、彼女を守る風の刃という組織が存在した。
この大陸には妖魔と呼ばれる魔物が存在し、風の刃はその妖魔を成敗する役割があった。
高速で動き回り、刀や弓を使って妖魔を成敗するその姿は、民衆の目には輝いて見えたものだった。
風の刃に守られている花の都は民衆の憧れである。
しかし、花の都に住める人々は巫女様に認められる技術を持つ者、または資産を多く持つ者の二種類に限られていた。
都から離れれば離れるほどに風の刃の手が届かなくなる。
十字架の端に位置する人々は貧しく、妖魔の餌食となっていた。
そんな端の小さな村出身の男が、今日も都で仕事を行っていた。
トゥール「えぇ~と、次は都から南へ三つ離れた街へのお届け物か」
見窄らしい格好をした男が地図を広げていた。
背中にはボロボロの布袋を背負っている。
ショーヘイ「遠いなぁ、、、ちゃっちゃっと運んじまうか」
日の焼けた肌が日光で輝き、その肌の色とは対照的な真っ白な歯を見せる。
このショーヘイという男はトゥールと共に仕事をする仕事仲間である。
トゥール「んだなぁ、この荷物さえ運んでしまえば今日の仕事は終わりだ」
ショーヘイ「皆、人使いが荒いぜ。俺たち足運び達も人間だってのに」
トゥール「まぁな~。でもこれで銭を稼いでるんだ、走って荷物を運ぶだけで小判を貰えるなら簡単な仕事だろ」
ショーヘイ「へっ、まぁな」
足運びという仕事は簡単に言えば運び屋である。体力と足の速さに自信がある者が就くことが出来る民衆業で、都への配達がある時のみ都の中へと入ることが出来る。
そのため足運びになる若者は多いが、その過酷さから殆どの者達はすぐに辞めてしまう。
お婆さん「ちょっと、あんたらは足運びだね?」
出発しようとしていたトゥールとショーヘイをお婆さんが呼び止めた。
トゥール「はい、そうです」
お婆さん「ちょいとこの手紙を、隣町の孫の元まで届けてはくれぬか?」
お婆さんの手には汚れた手紙が握られている。
ショーヘイ「今から俺たちは南に三つ行く予定だよ。南へのお届け物ならついでに届けるけど」
お婆さんは残念そうな顔をして、手紙を引っ込めた。
お婆さん「そうかい、、、、じゃあダメだね、すまんね、お仕事中に」
トゥール「ちなみにどの方角へ?」
お婆さん「北だよ。北へ一つ隣の町だ。仕方ない、またの機会にするよ」
その汚れた手紙を見るに、毎度断られているのだろう。
この十字架の大陸では、北方向は無法地帯となっていて妖魔の棲家となっていた。
北方向に住む者は少なく、届け物も殆ど無い。
お婆さんは背を向けて歩き出した。
ショーヘイ「よし、じゃあ行こうぜ」
トゥール「、、、、、、、」
トゥールはお婆さんを見つめて立ち止まっていた。
ショーヘイ「おいおい、まさかあの手紙を届けるわけじゃないだろうな?期日は三時間後だ、逆方向に手紙を届ける時間はないぞ?」
トゥール「そうだよなぁ、そうなんだけどさ」
トゥールはため息をついた。
トゥール「悪い、先に行っててくれ。俺の足なら間に合う」
ショーヘイ「おいおい、お前バカか?あんなお婆さんの手紙を届けたって何も利益はないんだぞ?」
トゥール「そうだろうな。でも今俺が届けなきゃ、あの手紙は一生お孫さんに届かないだろうさ」
トゥールはお婆さんの元へと駆け出した。
ショーヘイ「間に合わなくて怒られても知らねぇぞ~俺は行くからな!」
ショーヘイは南へ向けて走り出した。
トゥール「お婆さん!!」
お婆さんは驚いて振り返った。
お婆さん「おや、さっきの足運びさん。どうしたんだい?」
トゥール「その手紙、俺が届けるよ」
お婆さん「でも、南方向への仕事なんだろう?逆方向じゃないか」
トゥール「大丈夫ですよ、こう見えても優秀な足運びなんで。任せてください」
お婆さん「良いのかい?急がなくちゃいけないだろうからお礼はまた今度にするよ。また都へ来た時には、花道にあるお茶屋へ顔を出しておくれ」
トゥール「はいよ!んじゃ行ってくる!」
トゥールは汚れた手紙を手に、駆け出した。
十字架のような形をした不思議な大陸。
この大陸の中心には大きな都があり、花の城と呼ばれる建物があった。
そこには巫女と呼ばれる未来予知能力のある女性と、彼女を守る風の刃という組織が存在した。
この大陸には妖魔と呼ばれる魔物が存在し、風の刃はその妖魔を成敗する役割があった。
高速で動き回り、刀や弓を使って妖魔を成敗するその姿は、民衆の目には輝いて見えたものだった。
風の刃に守られている花の都は民衆の憧れである。
しかし、花の都に住める人々は巫女様に認められる技術を持つ者、または資産を多く持つ者の二種類に限られていた。
都から離れれば離れるほどに風の刃の手が届かなくなる。
十字架の端に位置する人々は貧しく、妖魔の餌食となっていた。
そんな端の小さな村出身の男が、今日も都で仕事を行っていた。
トゥール「えぇ~と、次は都から南へ三つ離れた街へのお届け物か」
見窄らしい格好をした男が地図を広げていた。
背中にはボロボロの布袋を背負っている。
ショーヘイ「遠いなぁ、、、ちゃっちゃっと運んじまうか」
日の焼けた肌が日光で輝き、その肌の色とは対照的な真っ白な歯を見せる。
このショーヘイという男はトゥールと共に仕事をする仕事仲間である。
トゥール「んだなぁ、この荷物さえ運んでしまえば今日の仕事は終わりだ」
ショーヘイ「皆、人使いが荒いぜ。俺たち足運び達も人間だってのに」
トゥール「まぁな~。でもこれで銭を稼いでるんだ、走って荷物を運ぶだけで小判を貰えるなら簡単な仕事だろ」
ショーヘイ「へっ、まぁな」
足運びという仕事は簡単に言えば運び屋である。体力と足の速さに自信がある者が就くことが出来る民衆業で、都への配達がある時のみ都の中へと入ることが出来る。
そのため足運びになる若者は多いが、その過酷さから殆どの者達はすぐに辞めてしまう。
お婆さん「ちょっと、あんたらは足運びだね?」
出発しようとしていたトゥールとショーヘイをお婆さんが呼び止めた。
トゥール「はい、そうです」
お婆さん「ちょいとこの手紙を、隣町の孫の元まで届けてはくれぬか?」
お婆さんの手には汚れた手紙が握られている。
ショーヘイ「今から俺たちは南に三つ行く予定だよ。南へのお届け物ならついでに届けるけど」
お婆さんは残念そうな顔をして、手紙を引っ込めた。
お婆さん「そうかい、、、、じゃあダメだね、すまんね、お仕事中に」
トゥール「ちなみにどの方角へ?」
お婆さん「北だよ。北へ一つ隣の町だ。仕方ない、またの機会にするよ」
その汚れた手紙を見るに、毎度断られているのだろう。
この十字架の大陸では、北方向は無法地帯となっていて妖魔の棲家となっていた。
北方向に住む者は少なく、届け物も殆ど無い。
お婆さんは背を向けて歩き出した。
ショーヘイ「よし、じゃあ行こうぜ」
トゥール「、、、、、、、」
トゥールはお婆さんを見つめて立ち止まっていた。
ショーヘイ「おいおい、まさかあの手紙を届けるわけじゃないだろうな?期日は三時間後だ、逆方向に手紙を届ける時間はないぞ?」
トゥール「そうだよなぁ、そうなんだけどさ」
トゥールはため息をついた。
トゥール「悪い、先に行っててくれ。俺の足なら間に合う」
ショーヘイ「おいおい、お前バカか?あんなお婆さんの手紙を届けたって何も利益はないんだぞ?」
トゥール「そうだろうな。でも今俺が届けなきゃ、あの手紙は一生お孫さんに届かないだろうさ」
トゥールはお婆さんの元へと駆け出した。
ショーヘイ「間に合わなくて怒られても知らねぇぞ~俺は行くからな!」
ショーヘイは南へ向けて走り出した。
トゥール「お婆さん!!」
お婆さんは驚いて振り返った。
お婆さん「おや、さっきの足運びさん。どうしたんだい?」
トゥール「その手紙、俺が届けるよ」
お婆さん「でも、南方向への仕事なんだろう?逆方向じゃないか」
トゥール「大丈夫ですよ、こう見えても優秀な足運びなんで。任せてください」
お婆さん「良いのかい?急がなくちゃいけないだろうからお礼はまた今度にするよ。また都へ来た時には、花道にあるお茶屋へ顔を出しておくれ」
トゥール「はいよ!んじゃ行ってくる!」
トゥールは汚れた手紙を手に、駆け出した。
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