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決戦のグレイス城編
第188話 ヘイスレイブ最高峰
しおりを挟むナミチュ「ところで、城にかけられている奇妙な転送魔法はあなたの仕業かしら?」
BB「ええ、そうよ」
ナミチュ「こんなに大規模な魔術を展開し続けるには相当な魔力が必要だと思いますけど、何かトリックがあるのでしょうね?」
BB「さぁ、どうでしょうね」
ナミチュ「話によると、カナメルさんをグレイス城からトルコネまで転移させたとか。断言しますがそんな長距離の転移魔法は不可能です」
BB「魔法に不可能なんて言葉はないのよ。勉強不足ね」
ナミチュ「不可能はなくても限界はある。そのトリックを暴いてみせます」
ナミチュは正面に色とりどりの魔法陣を出現させた。
BB「火、水、風、雷、土、、、五属性魔法を一度に放出。あなた成績はオールAでしょ?」
ナミチュ「もちろん、私エリートですから」
それぞれの魔法陣から自動でCランク魔法が放たれる。
BB「でも、私はヘイスレイブ最高峰の魔術師よ?自分で言うのも変なんだけど」
BBはそれぞれの魔法陣に弱点属性の魔法を放ち、全てを無効化する。
詠唱するモーションが見えなかった、そしてその魔法の弾速も速過ぎて何が飛ばされてきたのか見えなかった。
ナミチュ「なかなかやりますわね」
なかなかなんてものじゃない、この女性はオダルジョーやホーリー、カナメルさんよりも強いことが今のちょっとした魔法で分かった。
BB「でしょ?あなたも悪くないわよ。カナメルの副官に相応しいわね」
カナメルの副官に相応しいという自負はある。
だが、ここであっさりと敗れてこの女にカナメルの邪魔をさせてしまっては副官として恥ずかしい。
ナミチュ「貴方はここで、何としても止める必要がありますわね!」
ナミチュの正面に巨大な魔法陣が出現する。
ナミチュ「ここは一直線の空間、先手必勝です」
魔法陣から大量の水が流れ出し、広い廊下を水没させる。
ナミチュは自分の方へ水が流れてこないように岩石で壁を作って封鎖した。
ナミチュ「雷を放ちたい状況ですが、仮にこの壁が壊されてしまえば私の逃げ場がない、ということは」
ナミチュは藁箒で岩の壁を撫でた。
すると逃げ場なく溜まっていた水が一気に凍りついた。
ナミチュ「チェックメイトですわ」
ナミチュは藁箒を振り回し、決めポーズをした。
BB「勝利を確信するのは、少し安易なのでは?」
ナミチュは後ろからの声に驚くことはなかった。
ナミチュ「あなたが背後に転移したとて、チェックメイトですのよ」
辺り一面の床や壁が泥沼と化していく。
風術で浮いたBBだったが、床から伸びる泥の手に囚われ、泥沼へと引きずり込まれていく。
BB「変わった魔法を使うのね」
ナミチュ「土と水は私の得意魔法ですの」
BBは抵抗することなく、静かに泥沼へと沈んでいく。
BB「融合魔法は奥が深いのよねぇ。私も大好きよ」
ナミチュ「もっと先生の凄い魔法を拝見させていただきたかったのですが、そのご様子だと難しそうですわね」
BB「いいえ、せっかくだから」
BBは言い終える前に泥沼へと引き摺り込まれてしまった。
ナミチュは目を閉じ泥沼に神経を集中させる。
造作もない敵ならばそのまま沼の中で窒息死、または泥の手の圧力で潰すことが出来る。
だが今回はそう簡単にはいかないはずだ。
ナミチュの予感は的中した。
泥沼の中に感触がない。
また転移魔法を使ったのだろうか?
ナミチュ「転移魔法の高速発動、乱用、これも何かトリックがありますね。転移魔法はそんなに扱い易い魔法ではなくてよ?」
どこからも返答がない。
ナミチュは潔く泥沼を消し、辺りを見回した。
その時、岩の壁が凄まじい風の圧力によって破壊された。
弾けた石飛礫に当たり、ナミチュの額から血が流れる。
辺りは白い霧に包まれている。
岩の壁の先は凍りついた水で覆い尽くされているはずだったが、そこには何もなかった。
視界の悪い長い廊下の先から何かが飛んでくるのが見えた。
ナミチュはすぐに身を守るため魔法の壁を召喚した。
飛んできたのは大岩の数々。
BB「魔法の発動速度は基礎の部類だから軽視されがちだけどね、実戦においては最もキーとなる能力なのよ」
ナミチュ「私と同じように岩で壁を作り、水を堰き止めたということ?」
BB「正解、じゃあこの霧はなんでしょう?」
ナミチュ「氷を解かし、その水を蒸発させた?」
BB「順序で言えば正解、でもそんなこと順番にやっていたら敵にバレてしまうでしょう?貴方も泥沼を展開する時、土を敷いてから水を撒く?違うはずよ、同時に行うの。これが融合魔法」
ナミチュ「なるほど、とても為になる授業ですわね」
BB「貴方に是非学校で授業をしたかったわ、カナメルの副官。でもさようなら」
霧の中の水分が刃に変わった。
全方位が小さな氷の刃物に囲まれている。
BB「チェックメイト」
その時、目にも止まらぬ雷光が廊下を駆け抜けた。
BBは咄嗟に転移魔法でその軌道から身体をズラす。
焼け焦げた床が真っ直ぐに出口の扉へと伸びている。
BB「カナメルもあの子も運が良いわね」
BBはゆっくりとその扉へと歩き出した。
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