神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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決戦のグレイス城編

第194話 愛の探究者

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BB「ふぅ~、、、流石に疲れてきたわね」

BBはナミチュとマツの猛攻を避けながら戦い続けていた。

互いに決め手に欠ける消耗戦の中、マツの高速の一撃がBBの肩を掠めた。

驚きの表情を浮かべるBBとは対照的にニヤついているナミチュはこのチャンスを逃すまいと死角から炎の槍を放った。

燃え盛る槍はBBの心臓を目掛けて飛んでいく。

ナミチュ「マツの集中力の勝利ですわね。チェックメイトですの!!!」

しかし槍は何かに押し潰されるように地面に突き刺さった。

マツ「まだまだ!!!」

マツは身体の麻痺に耐えながらもう一度瞬雷を発動する。
ナミチュの魔法により筋力が強化されているのでもう一度飛ぶことは出来る。

しかし地面を離れる前に何者かにその矛を止められた。

大鎌と槍がジリジリと音を立てて静止している。

マツ「またあなたですか、ホーリーさん!!」

マツの動きを止めたのはホーリーだった。

ホーリー「あなたはもう四天王と大差ない実力がある」

ナミチュの前に現れたのはオダルジョーだった。

ナミチュ「形勢逆転ですわね、、、、、」

オダルジョー「流石に君達の負けだろうね」

BB「あらあら、教え子に助けられるなんて嬉しい展開じゃない?」

BBの言葉にオダルジョーは大きなため息をついた。

オダルジョー「先生、この子達は城全体への広範囲転送魔法を維持しながら戦える相手じゃないよ。あんまり無理すると寿命があっという間に目の前まで来ちゃうよ」

BB「忠告ありがとう。でもね、私の死に場所は私が決める」

BBの言葉を聞き、オダルジョーは納得がいったと言わんばかりに言葉を続ける。

オダルジョー「、、、、、、闇魔法高速転移の痕跡がいくつも見えるんだけど、もしかして先生はここで死のうとしてるの?」

BB「あら、オダルジョーはそこまで魔力の流れが見えるのね。別にそういうわけじゃないわ。その子達に苦戦して使わざるを得なかっただけよ」

ホーリー「この二人は強い、でも苦戦する先生じゃないはず。無闇に闇魔法を使う理由をお聞かせ願いたい、先生の闇魔法の代償は寿命でしたよね?」

BBは深いため息をついて話し始めた。

BB「褐色の少年とカナメルは本気で無の神を倒して人の世を創るつもりらしい。そんな無謀なことが実現出来るとは思わない、でも実際に今このグレイス城に多くの人が集まって来てるの。私は人の醜さに嫌気がさして神が統治する世を夢見ていたけど、本当に求めていたものは人が手を取り合う世の中なのかもしれない。なーんてふと思ったってことは嘘じゃない」

オダルジョー「、、、、、、」

BBはそのまま言葉を続ける。

BB「そしてこうも考えた。神の世を創る一端となってここで死ぬのも悪くない。人が手を取り合う世になるとすれば、その世界に私が存在する資格はない。どちみちここで死ぬのがベストなんじゃないかって。そんなこと思うことって今までなかったじゃない?これって死に場所を見つけたってことなんじゃないかって思ったの。そう思ったら闇魔法を使うことを厭わなくなっちゃったってわけね」

BBはクスクスと笑っている。

ホーリー「共感は出来ないけど理解は出来ます。そして私はその考えを美しいと思います」

BB「美しいねぇ、ホーリーはやっぱり変わってる子だね。でも、あなた達はあなた達なりに死に場所を見つけたって良いのよ?いや、死ななくたって良い。神の世で生きても良いし、人の世で生きたって良い。私とあなた達は違う」

オダルジョー「質問なんだけど、先生はどうして神を倒すなんて無謀なことのために人が集まってくると思う?」

BBは即応した。

BB「そんなの決まってるじゃない?愛だよ」

オダルジョー「、、、やっぱり愛なのかぁ」

BB「あなたは闇魔法で記憶と感情が飛んじゃってるから分からないこともあると思うけど、人には人を愛するっていう不思議なシステムがあるの。愛してしまうと出来るか出来ないかなんて判断基準はなくなってしまうのよねぇ」

オダルジョー「私も誰かを愛しても良いのかな?」

BB「当たり前でしょ?あなたも人なんだから」

オダルジョー「そうかぁ、私も人なのか」

ホーリー「オダルジョー」

ホーリーが優しい声でオダルジョーを呼んだ。

ホーリー「私はあなたについていくよ。死に場所を見つけるその時まで」

オダルジョー「うん。じゃあ行こうか、ホーリー」

ホーリー「倒したい相手と、助けたい人を見つけたんだね。ああ、愛おしい、、、、」

オダルジョー「そんなんじゃないよ。暇つぶしさ」

二人は転移魔法で姿を消した。

一部始終を見ていたナミチュが口を開いた。

ナミチュ「どうなることかと思いましたけど、これなら何とかなりそうですわね」

BB「舐められたものね。でもさっきの炎の槍は見事だったわよ、オダルジョーが止めなければ致命傷になっていたことでしょう」

ナミチュ「さて、気を取り直して攻撃を開始させていただきますわ」

マツ「ちょっと待って!」

マツはナミチュを静止した。

マツ「あなたの死に場所は本当にここで良いんですか?私達と戦う必要があるんですか?」

BB「あるわよ、私はあなた達の敵ですから。ちなみに言っておくと、戦力差を見て様子見をしたのだろうけど、オダルジョーとホーリーもここで食い止めるのがあなた方の仕事だったのよ?あの二人がカナメルを殺すかもしれないでしょ?」

マツ「あ、、、確かに」

ナミチュ「いいえ、それは違いますわ。カナメルさんなら命を落とすくらいなら逃げろと言うでしょう。あなた方三人を止めるのは不可能、元四天王が二人追加された時点で私達の正解は逃げることですわ」

BB「なるほどね、だから扉前までの二人分の転移の準備をしていたわけだ」

ナミチュ「な、、、ええ、やはりバレていたようですわね」

ナミチュは恥ずかしそうに目を逸らした。

ナミチュ「でももうその必要はありません。私達はあなたを止めることが出来る。いいえ、訂正致します。私達はあなたを倒すことが出来ますの、そうでしょ?マツ」

何故かマツの表情は晴れない。

マツ「どうしてあなたと戦わなければいけないのか、私には分からない」

ナミチュ「何言ってるの!!敵に隙を見せるなんて愚か者よ」

BB「その通り、この先の波乱の世を生き抜くにはその優しさは邪魔になる」

BBは魔法を発動した。

ナミチュとマツの周りに赤い魔法陣が描かれる。

ナミチュ「いつの間に!?」

ナミチュは先程まで準備していた転移魔法を発動した。

しかし二人分を飛ばす時間はなかった。

大爆発が起こり、気がつくとマツは扉の前でそれを見ていた。

マツ「転移魔法!?ナミチュが私を飛ばした?、、、、ナミチュ!!!!」

マツは状況を理解し、動揺している。

爆発があった場所には黒焦げになっているナミチュが倒れていた。

ナミチュ「逃げるのよ、、マツ!、、、、」

マツ「ナミチュ!、、、ごめん、、、私のせいで」

マツはナミチュの元へと駆け寄った。

ナミチュはもう口を開くことはなかった。





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