神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

文字の大きさ
195 / 229
決戦のグレイス城編

第195話 絆の弊害

しおりを挟む

ナミチュが倒れた絶体絶命の状況にマツの思考が停止していた。

BB「あなたの甘さがその子を傷つけたの。これを機に、敵に慈悲を与えるのはやめなさい。魔術師は常に非情であるべきよ」

マツ「分かりました、今ならあなたと戦えそうです」

BB「そう、私は敵なのよ」

マツは槍を構えた。

高速転移をもつ相手にスピードでの勝負は無謀、とはいえ純粋な魔法戦でこの人には勝てない。

勝ち筋を模索するもシュミレーションの段階で勝つイメージが出来ない。

逃げるしかないか。

しかしナミチュを抱えて逃げることが出来るだろうか?

引き返すことは出来ない、逃げるとしても進むしかない。

その先には違う敵がいるかもしれない。

そもそも目の前にいるこの敵にそんな隙はない。

こんな時、ドラならどうするだろうか?

戦闘の最中に何を考えているんだと思いながらも、思考はドラへの心配へと変わっていった。

ドラはマツを守るために竜に囚われてしまった。

今はナオティッシモ先生の元で催眠の魔法で眠らされ続けているが、その身体は未だに竜のままである。

もうドラが人間に戻ることはないのかもしれない。

ごめん、ドラ。

マツの苦悶の表情を読み取ったBBが口開く。

BB「私を倒すシュミレーションは出来たのかしら?それとも違うことを考えていたとか?だとしたら随分と余裕ね」

マツ「正直に言うと、あなたを倒す術は私にはありません。それでも私を守ってくれた全ての人のためにもここで命を諦めるわけにもいきません」

BB「だとしたら、どうするの?」

マツ「分かりません、でも足掻きます。足掻き続けてみせます!何一つ諦めずに」

マツは瞬雷を発動した。
あえて軌道をずらしたトリッキーな動きや不意をついた攻撃も全て分かっているかのように先回りして防御魔法を展開された。

雷槍を放ち、それに続いて第二詠唱をしようとしたが、後出しなのにマツよりも早く岩魔法でそれを封じられる。

意を決したマツは槍を構えて接近戦に持ち込もうとしたが距離を取られ、いつの間にか設置されていた魔法陣の餌食となってしまった。

心身ともに疲弊したマツは槍を支えにして何とか立ち上がる。

マツ「こんなにも、、差があるなんて、、、、」

カナメルさん、ナミチュ、そしてドラ。

私はここでお別れのようです。

マツは最後の力を振り絞り、立ち上がった。

震える足を無理やり動かし、槍を構えて走り出す。

あの時のように緑のオーラが発動することもない、もう誰も助けに来ることもない。

きっとこれが最後の攻撃になるだろうことはマツ自身も分かっていた。

マツ「瞬雷!!!!」

身体に馴染んでいる雷が全身を駆け巡る。

「ガルゥアアアアア!!!!!!」

その時、天井から獣のような轟音が響いた。

マツは咄嗟にナミチュの元へと軌道を変え、彼女を守りながら天井を見上げた。

何か来る。

マツとBBは互いに手を止め、震える空気を警戒しながら上を見上げた。

バキバキと音を立てながら天井が裂けていく、そこから紅い大きな竜の頭が顔を出した。

「ガァアアァァアア!!!!!!」

竜は勢いよく身を乗り出し、天井を破壊してマツとBBの間へと降り立った。

ドガン!!!!!!

地響きとともに着地した紅き竜はその大きな目玉でBBを睨んでいる。

BB「空間転送を破壊してここまで来たというの!?」

流石のBBも驚きを隠せない。

マツ「ドラ、なの?」

ヘイスレイブ城で見た時よりも明らかに獰猛なその姿にマツも恐怖を感じていた。

BB「ドラゴンスレイヤーになってみたいけれど、そうするには気が散る状況ね。流石の私も竜の餌にはなりたくないのよ。一応人間の未来を潰す神の軍勢の一人なのでね、最後まで私も足掻かせてもらうわ」

BBは一瞬にして霧となって消えた。

BBの魔法で辺りは濃霧に包まれた。

もしかしてこれは逃げろという、BBからのメッセージなのだろうか?

あえて霧を撒き散らしたのには理由があるはずだ。

マツはナミチュを背負って扉の方へと歩き出した。

しかし、途中で歩みを止めた。

マツ「ドラ、私を助けに来てくれたんだよね」

マツはナミチュを壁にもたれかけさせた。

紅き竜の大きな目玉にマツの姿が反射している。

マツ「ドラ、、、ありがとう」

マツは槍を地面に置き、手を伸ばした。

「ガルゥアアア!!!!!」

紅き竜は咆哮とともにマツへと襲いかかった。

マツはそっと目を閉じた。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...