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世界の終わり編
第219話 同胞のために
しおりを挟むトゥール「タカ!!ゼウス!!お前達二人の力が必要だ!!城の屋上、空中庭園に来てくれ!!、、頼む」
電子機器を通してトゥールの声が響き渡る。
中央庭園でタカとゼウスは激闘を繰り広げ、ゼウスは焼けた草花の上に大の字になっていた。
ゼウス「、、、、、あの規模の隕石が降ってきたらこの星は終わりだな」
ゼウスは笑っていた。
ゼウス「その前にお前に殺されるのか」
タカ「、、、、、」
トドメをさせば一族の悲願が果たされる。
激闘の末、タカは勝利したのだ。
しかしタカは躊躇っていた。
自分の身体が霧散していること、空からの隕石、トゥールの呼び声。
今すべきことはゼウスを倒すことではないということは分かっている。
タカは拳を握りしめた。
タカ「お前は俺が必ず殺す、だが今は共に来い」
タカはゼウスを片手で持ち上げた。
タカ「面倒だ」
そう呟きながら、タカは空中庭園を目指して飛び上がった。
~~~~~~~~~~
タカはゼウスを担いで空中庭園に着地した。
タカ「どうなっている?」
トゥール「お、来たな」
ムー「無の神の身体が死んで僕達の身体は消滅しかけている、魂となって空へと逃げた無の神が隕石を落とし始めた。理解出来ているか?」
タカ「ああ」
リリ「この状況をその説明でよく理解出来るね」
タカ「あの隕石を破壊すれば良いんだな?」
タクティス「出来るのか?そんなことが」
タカ「、、、、、」
タカはジッと空を見つめた、その後に薄れゆく自分の両手を眺めていた。
タカ「おそらく無理だろう」
ムー「あの隕石を破壊するのは無理だ。だが風穴を空ける方法ならある」
ムーはタカの目をしっかりと見つめ、ハッキリと言う。
ムー「ゼウスにてめぇの力を託し、フルパワーの神の裁きをあの隕石に撃ち込む」
タカ「!!!!」
タカは目を見開き、言葉を失っている様子だ。
リリ「ちょ、、、それはいくら何でも」
見兼ねたリリがムーを説得しようと前に出た。
リキッド「タカの力とこの世界の存続を天秤にかけるだけだ、選択の余地はないと思うが?」
リキッドは迷いなく言い放った。
トゥール「ダメだ」
トゥールがリリを押し退け、ムーとリキッドの前に立ちはだかった。
トゥール「タカの願いを無視することは出来ない。それに、誰かが犠牲にならなければならない作戦はいくらムーの案だとしても却下する。違う案を考えよう」
ムー「いや、これしかねぇ。これですら成功率は低い、何故なら隕石に風穴を開けた後、ツグルかセリアを空に飛ばして無の神の幽体にトドメを刺す必要があるからだ」
セリアはツグルを抱きしめ、しくしくと泣いている。
一連の話を聞いていたゼウスが口を開けた。
ゼウス「俺が完全体とやらになったとして、お前達に手を貸す保証はないとは考えないのか?」
トゥール「いや、死ぬよりはマシだろ。そりゃ手を貸すだろうけどさ、、、」
リリが首を振りながらゼウスを指差した。
リリ「でもあんた死を恐れていないタイプでしょ?別にこの世界がどうなっても良いって感じ」
ゼウス「その通りだ」
ムー「いや、てめぇは僕達に手を貸す。何故ならてめぇは僕と同類だからだ」
ゼウス「その根拠は?」
ムー「てめぇは新たな力を手に入れることをやめられない。完全体になり、もし仮に僕達を裏切ったとしたらてめぇも一緒に死ぬだけだぞ?朗報だ、完全体になれば化け物だらけの海を越えられるはずだ」
ゼウス「ほう、確かに半分の戦闘民族の力のみでこのパワーだ。全てを吸収した時の力は計り知れないだろうな」
ムー「僕はブルーフォレストという大陸出身だ、魔法の原点とされる閉鎖国家でね、教団が支配するその世界では未だ明かされていない秘密が山程隠されている。なんてったって魔法の原点となる大陸だ、僕も近々行くつもりだが、てめぇが先に行っても良い。生きていたらのハナシだがな」
ゼウス「ふん、交渉しているつもりか」
ムー「まぁ、交渉なんてしなくても完全体となったてめぇは試し撃ちで神の裁きを放ちたくなるさ」
ゼウス「良いだろう、有益な情報の対価としては安いものだ」
ゼウスはタカを見た。
ゼウス「それで、その力を俺に渡すってことで良いのか?」
トゥール「いや、渡さない」
タカの民族は同族を殺すことでその力を引き継ぐことが出来る。
半数の民族を吸収したタカとゼウス。
あとはゼウスがタカを殺すことでゼウスは完全体となる。
トゥールが収まりそうになった空気を変えようとした時、タカが口を開いた。
タカ「くれてやる」
目を瞑りながらタカは静かに呟いた。
リリ「タカ、、、、」
タクティス「本当に良いのか?」
トゥール「、、、、、」
一同は静まり返る。
少しの沈黙の後、タカは目を開いた。
タカ「俺を殺せ」
ゼウス「ああ、分かった」
ゼウスは咳き込みながらゆっくりと立ち上がった。
トゥール「いや、やっぱり考え直そう。何か他に方法があるはずだ」
慌てて割って入ったトゥールだったが、ムーの紫のオーラを見て表情が和らぐ。
ムー「タカはこの先も必要な最大戦力だ、失って良いわけねぇだろ」
リキッド「ほう、殺さなくても良いのか。ならそれでいこう」
どうやらリキッドは本気でタカを殺すつもりだったらしい。
トゥール「ふぅ~、、、皆どうかしてるかと思ったよ。殺さなくても良いんだな?」
タクティス「良かった、、、、」
安堵するトゥールとタクティス。
ムー「僕はマイケルの自空間でただただ時間を食っていたわけじゃねぇ、マイケルからの情報を元に魔法を開発していたわけだ。仮にタカがゼウスに負けた時、僕はゼウスから力を奪ってタカに移植する予定だった。まぁ、タカは絶対に認めねぇだろうから、こういう形で試せるんなら本望だね」
リリ「でも私達は魔力の格の欠片をツグルに渡しちゃったじゃない?今じゃ私はハンドガンですら創れそうにないよ」
ムー「この魔法は紫のオーラを主体として扱う。魔法を扱う繊細さは必要ないってわけだ。まぁそこら辺は説明してもおそらく無意味だな」
リキッド「時間がない、さっさと始めよう」
ムー「そうだな、大魔導師ムー様のショウタイムの始まりだ」
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