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世界の終わり編

第220話 想いの残滓の地

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紫のオーラがタカとゼウスを包み込む。

ムー「無の神に出来ることは僕にも出来るはずだ。対価はタカが力を完全に失うこと、これは両者の同意があって初めて成り立つ。紫のオーラは自由自在だが人の意志を変えたりは出来ないからな」

タカの身体から魔術刻印が消えていく。

ゼウス「ぐ、、、、、がぁあ!!!!」

ゼウスは体を掻きむしり苦しんでいるようだ。

タクティス「苦しんでいるぞ、大丈夫なのか?」

ムー「戦闘民族じゃない奴がこのパワーに耐えられるかどうかは知ったこっちゃねぇよ」

そうして、タカの魔術刻印が完全に消えた。

タカは黙って自身の両手を見つめている。

タカ「、、、、、」

ゼウス「はぁ、、、、ぐ、、ぐぁあぁあ!!!」

ゼウスは床に転がりながら悶え苦しんでいる。

リキッド「立て、そして隕石に神の裁きとやらを撃ち込め。ツグルは立てるか?」

ツグルは意識を失い、セリアに抱かれて横になっていた。

セリア「ツグルが、、、ツグルが起きません」

リキッド「ならば姫、あなたが行くしかない。俺が空まで同行しよう」

その時、空から無の神の声が響き渡る。

無の神「我はもう貴様らを過小評価しない。かつての友を蘇らせる我の目的は失敗に終わった、それは認めよう。これは最後の足掻きだ、想いの残滓の地の扉を開きこの世界を終わらせ、この不完全な身体のまま神の極地へと至る」

リリ「何言ってんのか全く分からないんだけど」

リリは手を広げて小馬鹿にしたように言った。

トゥール「無の神は友を生き返らせるために十年後のセリアに憑依したかった。それは無理だったからこの世界を終わらせるみたいなこと?」

ムー「想いの残滓の地、、、、本で読んだことがある。人間は肉体、魂、想いの三つの要素で構築されている。肉体が死んだ時、魂は空間に霧散し、想いは想いの残滓の地に封じられるとか。悪しき想いは怨念となり人々を喰らう、よって想いの残滓の地の扉を永遠に閉じたままとする。誰かの妄想だと思っていたが、魂の霧散までは正しいことを書いていたから一応読破したんだ」

タクティス「それが本当だとしたら」

リキッド「想いの残滓の地の扉が開き、悪しき怨念達が俺達を喰らいに来るのか?」

「グォォオオオ!!!!!!!」

辺りから魔獣の咆哮のようなものが響き渡る。

セリア「皆さん!!!何か、、、大量の、何かが来ます!!!」

セリアは動かないツグルを抱きしめながら叫んだ。

タクティス「どうする?リキッド以外はまともに戦えないぞ!!」

リリは小さなナイフを創造し、手に持っていた。

リリ「こんなものしか創れないや」

トゥール「セリアの歌声で傷は癒えたとしても、この城に残っている皆の魔力は底をついているはずだ。皆を助けないと!!」

トゥールは風迅速で駆け抜けようとしたが、低速で空中を舞っている。

ムー「くそ、てめぇらはここに残ってセリアを守りやがれ!!僕が何とかする」

ムーはユラユラと飛んでいった。

ムーは魔力の流れを視ることが出来るから、どこに誰がいるのかすぐに分かったのだろう。

リキッド「ならばここは俺が引き受けよう」

剣と盾を構えたリキッドの目の前に、突如として巨大な獣が現れた。

リキッド「、、、、お前は、あの時の」

その獣はかつてウェスト大氷山でリキッドとアーヤカ姫に襲いかかった獣だった。

リキッドの顔が青ざめている。

タクティス「頼んだぞ、リキッド」

リキッド「いや、こいつに俺の攻撃は効かない」

リリ「あんたに倒せない相手なんていないでしょ!何言ってんのよ」

リキッド「こいつは、、、、生前に戦って敗北した相手だ」

トゥール「それは過去の話だろ、今の俺達は昔よりも強い」

背中を押されるリキッドだったが、この生物は人一人がどうこう出来るものではないことを分かっていた。

あのウェスト大氷山にいたということは氷属性は効かない。

「グォォオオオ!!!!!」

獣は今にも襲いかかってきそうだ。

やるしかないか、そう思った時。

リキッドの目の前にキラキラとした何かが漂い始めた。

それは次第に人を形造り、半透明だが一人の女性の姿となった。

リキッド「!!!!」

半透明にキラキラと光るその女性は両手を広げてリキッドを守るように獣に立ちはだかっている。

リキッド「あなたは、、、アーヤカ姫」





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