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世界の終わり編

第224話 サイラスの贈り物

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中央庭園にいるムー達も空を見上げていた。

ムー「くそ、、、フルパワーの神の裁きでも壊せねぇのか」

ムーは奥歯を噛み締めた。

サチヨ「せっかくバケモノ達を倒したのに、隕石を壊せなければ私達の負けかぁ」

カナメル「あんたの太陽球で何とかならないのか?」

サチヨ「あのサイズの太陽球は流石に出せないよ」

一同は空を見上げ、迫り来る巨大な隕石を眺めていた。

ナミチュ「何か、方法はないのかしら?」

マツ「、、、、、」

カナメルは少し考え、口を開いた。

カナメル「俺の考えとしては、やっぱりあんたの太陽球しかないと思うんだよね」

サチヨ「君も知っているでしょ?私は魔術師じゃないんだよ、私が出せる太陽球はせいぜい直径2mくらいの球体。その程度のサイズじゃ、なんの役にもたたないよ」

カナメル「それ以上は大きくならないの?」

サチヨ「このラッパ銃の規格がそのくらいなの」

カナメル「出した球に太陽の魔力を流せば良いだけじゃないの?」

サチヨ「魔力を流すってどうやるの?」

カナメル「、、、、そこからかぁ」

手詰まりの状況にため息をついたその時。

遠くの空から巨大な光線が伸び、隕石に直撃した。

ナミチュ「ヘイスレイブの方向からですわね」

マツ「あれは、、、アンチェア様の集束魔法!!」

現ヘイスレイブ王であるアンチェアは魔力を束ねる集束魔法が得意である。

巨大な魔力の束は隕石にぶつかった。
ピキピキと音を立て、隕石には更に亀裂が入る。

ナミチュ「カナメルさん!!」

ナミチュはカナメルに声をかけた。

カナメル「アンチェアが世界の危機に立ち向かうっていうなら、俺たちも指を咥えて眺めているわけにはいかないか」

カナメルは鳳凰を召喚した。

カナメル「ナミチュ、マツ!!あの隕石を破壊する。馬鹿げているとは思うが、やるしかないらしい」

ナミチュ「私に不可能なんてありませんわ」

マツ「了解!!」

マツは魔力を絞り出し、雷の槍を生成した。

マツ「もう魔力が、、、」

ナミチュ「最も貫通力のある形は槍、そして槍はあなたの得意分野でしょ?だったらそこに賭けてあげますわ」

ナミチュはマツの槍へと雷の魔力を流し込むと、槍はみるみるうちに巨大化した。

マツ「これで貫けないものなんて、ないよ!!」

マツは巨大な雷の槍を投擲した。

カナメル「マツの槍に続け!!」

鳳凰の口から炎の光線が放たれる。

確実に亀裂は深くなっている、しかし巨大な隕石が割れることはなかった。

カナメル「とりあえず、あんたも手伝ってくれる?」

サチヨ「よーし、やってやろうじゃないか」

カナメルの呼びかけに応じ、サチヨはラッパ銃を空へと向けた。

サチヨ「最大出力、、、太陽球!!!」

直径1mほどの太陽球がゆっくりと空へと放たれた。

ナミチュ「先程2mと仰っていましたわよね?」

マツ「なんか、、遅いし」

サチヨ「サイズは私の体調次第!!速度は球が大きければ大きいほど遅くなるの!!」

サチヨは鞭を取り出し、球にくっつけた。

サチヨ「でもこうやれば、、、」

そして鞭の先端に太陽球をくっつけ、サチヨはそれをブンブンと振り回す。

カナメル「ちょっと待て」

カナメルは身体の中を駆け巡る謎の熱さがサチヨの太陽球に反応していることに気がついた。

サチヨ「この状況で待てないよ!!」

サチヨはグルグルと回りながら叫んだ。

カナメルは恐る恐るサチヨの太陽球へと手を伸ばした。

グルグルと回る太陽球へと太陽属性の魔力が伸びる。

カナメル「、、、、あの男、俺に何をした?」

カナメルは両手を伸ばし、太陽属性の魔力らしきものを注入した。

太陽球はみるみる大きくなる。

ムー「てめぇ、いつの間に太陽属性を!!てめぇら!!死にたくなきゃその球から離れやがれ!」

グルグルと回る巨大な太陽球は全てを溶かしていく。

サチヨ「え!、、えぇ!!!どーなってんの!?」

その中心でグルグルと回るサチヨは戸惑いの声を上げた。

カナメル「よし!!放て!!!」

サチヨ「おりゃあ!!!!」

巨大な太陽球がゆっくりと隕石目掛けて移動する。

カナメル「とりあえず大きな風穴が空きそうだね」

サチヨ「君も私と同じ魔法が使えるの!?」

カナメル「いや、分からん」

ムーはサイラスのことを考えていた。

ムー「これは仮説だが、あの光達は想いが具現化した存在なのだとしたら。サイラスの想いの一つは娘を救うこと、二つ目は太陽属性の継承だったのかもな。その力を正しく使える誰かに」

そう言ってムーは頭を横に振った。

ムー「いや、今更考えたって仕方のないことだ」

カナメル「いずれにしても、この力は改良の余地があるね。まぁ生きてたらの話だけど」

サチヨ「よーし、じゃあ特大の球を空に放って、あの隕石を溶かして!!」

カナメル「それは無理」

サチヨ「なんで!?」

カナメル「あんただってそのラッパ銃がなきゃ太陽球を飛ばすことが出来ないでしょ?」

サチヨ「確かに、、、」

カナメル「今はあんたが飛ばした球に、この太陽属性とやらを流し込むことしか出来ない」

サチヨ「そして私はもう小さな球すら撃てない」

カナメル「、、、、詰みだな」

やることはやった、そう思ったムーは口を開いた。

ムー「トゥールと合流する、ついてこい」

ムーはカナメル達を引き連れて空中庭園を目指した。
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