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世界の終わり編

第225話 人間の可能性

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各々が隕石に向かって魔法を放っている様子を見て、トゥールはゼウスに声をかけた。

トゥール「もう一度だ!!頼む!!」

ゼウス「表面に亀裂が入って希望を抱いているんだろうが、無意味だぞ」

トゥール「やってみなきゃ分かんないだろ」

ブルンブルンブルンブルン!!!

その時、バイクに跨ったネギッチャが姿を現した。

ネギッチャはバイクを降りると、足早にゼウスへと詰め寄る。

そして、大きなショットガンをゼウスのこめかみに押し付けた。

ツグル「待てネギッチャ、早まるな」

ツグルはネギッチャに声をかけた。

ネギッチャ「どうせ今引き金を引いたところでこいつを倒すことは出来ない、そんなことは分かっている。だがこれは警告だ、必ずお前を殺しに行く、お前は俺を恐れながら日々過ごせば良い」

ゼウスは顔色ひとつ変えずにネギッチャを見た。

ゼウス「今となってはお前など恐れるに足りない」

ネギッチャの手に力が入る。

ツグル「ネギッチャ、力を貸してくれ。あの隕石を破壊する必要があるんだ」

ネギッチャは迫り来る隕石を睨みつけた。

ネギッチャ「元よりそのつもりでここに来たんだ。任せろ、ツグル」

ネギッチャはショットガンを固定砲台に変形させた。

ネギッチャ「人間の可能性なんて浅はかなものに賭けるつもりはない、だが何もしないで死ぬよりはマシだろ」

ネギッチャはガチャガチャと何やら準備をしながら、ゼウスに問いかける。

ネギッチャ「トライ&エラーを繰り返し、求める結果を手繰り寄せるのが科学者ってもんなんじゃないのか?」

ゼウス「、、、、、」

ネギッチャ「あの隕石を破壊する実験は失敗に終わりました、それじゃあ俺もお前も死ぬだけだ。俺はあの隕石を破壊する、それしか生きる道がないらしい」

ゼウスはネギッチャを見た。

ゼウス「何が言いたい?俺を殺そうとする貴様に手を貸せと?」

ネギッチャは鼻で笑いながら答える。

ネギッチャ「今の俺に力があれば、お前を殺して隕石も破壊する、だがそれが出来ないことは分かっている。俺が言いたいことはこうだ、いいから黙ってあの隕石の破壊に全力を出せ。この実験が成功した暁には、更に強くなった俺がお前を殺しに行ってやる」

ゼウスは大声を上げ笑い出した。

ゼウス「ガッハッハ!!!何のメリットがあって俺がその要求をのむ必要があるんだ?だが面白い、確かにお前の執念は認めている。いつか必ずこの完全体となった俺を倒してみせろ!!」

ネギッチャ「ネアとお前に殺された全ての人間に誓ってやる」

ゼウスの身体が激しく発光した。

ゼウス「神の裁きのタイミングに合わせろ、継続的な圧力よりも一瞬の破壊力が結果をもたらす」

ネギッチャ「黙れ、お前が合わせろ」

二人は同時に破壊的な光線を放った。

アンチェアの集束魔法、カナメルらの遠距離魔法に合わさり、二つの強力な光線が隕石に直撃する。

バキバキバキバキ!!!

轟音を上げ、巨大な隕石が真っ二つに割れた。

リリ「割れた!!!割れたよ!!!」

タクティス「だが、、、皆!!伏せろ!!!」

隕石の破片が雨のように降り注ぐ。

リキッドはアイスロードで空中を駆け巡り、それらを全て凍らせた。

リキッド「俺はここで人々を守る。行け!!トゥール!!」

その声を聞いた時、ツグルは空にいた。

その手を引いていたのは、黄色のオーラと青のオーラに包まれたトゥールだった。

トゥール「青のオーラで無理矢理魔力の出力を上げてみた!!斬撃は難しそうだけど、慣れ親しんだ風迅速でツグルを空に連れて行くことくらいは出来そうだわ」

ツグル「ありがとう、空まで頼んだ!トゥール」

トゥール「はいよ!!とは言ったものの、、、」

隕石の破片がトゥールとツグルに立ちはだかる。

トゥール「流石に安定しない!!それに遅い!!」

フラフラとした低速の風迅速では避けるのがやっとのようだった。

ツグル「俺が道を開ける!!」

ツグルが魔力を込めると、その手に白銀の剣が出現した。

ツグル「これは、、、」

トゥール「多分だけど聖属性の魔力だ!!でもごめん、動かれるとマズイ!!」

ユラユラと動きながらどうにか隕石を避けるトゥールがツグルを制止した。

ツグル「でもこのままじゃ上に行けない」

ピィーーーーー!!!

その時、真紅の神鳥が二人を攫った。

カナメル「結局、この物語の主人公って俺なんだよね」

ツグル「カナメル!!」

トゥール「ふぅ~助かった」

カナメル「掴まってなきゃ振り落とされるんで、よろしく」

神鳥は隕石を華麗に避けながら真っ二つになった隕石の間をスルスルと通り抜けて行った。




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