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エンドレス・ラブ
27 そしてエンドレス・ラブ ― 1 ― ☆
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「師匠、これもう午後になってますよね」
「さあな……」
アーロンに後ろから抱えられながら、切れる息の合間に尋ねる私を、またも羽交い締めにしてアーロンが律動を始める。もう何度目になるか分からないアーロンの欲情に、私はいい加減疲れて言い返す。
「さあなじゃなくて、お城、このままで、いい訳、ないですよね」
「さあ……な……」
甘い快楽の波に引き戻そうと私の首筋にキスを這わせながら、アーロンがまた同じ言葉をくり返す。
全然話を聞いてくれてないよ!
「いえ、だからさあなじゃ、なくて!」
流石にちょっと頭にきて、私はアーロンの上から無理やり腰をあげ、振り返ってアーロンと向き合った。
「師匠、いい加減一旦お休みにしましょう、きっと皆心配してるはず……」
そこまで言って自分の間違いに気がついた。
ダメだ、この人この言い方だと間違いなく拗ねちゃう!!
案の定、アーロンの瞳が暗く輝いて。
「こんなにずっと会えなかったのに、お前はもう満足だって言うのか?」
強くしっかり抱きしめ直したアーロンが、身動き出来ない私をゆっくりと、一番奥まで、下から貫く。
「足りないのは俺だけか?」
言葉とともに、一度引き上げられた私の身体が、またもゆっくりゆっくりアーロンの上に落とされる。
「アイツらなんて放っとけ」
顔前面をアーロンの胸板に埋め込まれて声もあげられない私は、ジリジリと何度も繰り返される終わりのない抽挿入と快感の波から逃げる術もない。
今日のアーロンはおかしい。いつもならもっと手加減なくメチャメチャに突き上げてくるのに、これだけ長い時間、ただただゆっくりと繋がり続けてる。まるで私の身体を気遣うように、ゆっくりと、丁寧に愛でまわす。
それでも波は確実に高まってきて、甘く深い波に今にも意識が飲み込まれそうになったところで、アーロンが熱い吐息とともに私の耳に囁いた。
「せめて半日、誰にも、邪魔は、させない」
切なげにそう宣言しつつ私を揺さぶるアーロンを、私はもう止めることが出来なかった。
* * *
そして日暮れ前。壊れた壁から吹き込む風に肌寒くなってきた私は、肩を摩りながらとうとう叫んだ。
「もうだめ、アーロン、やめてくれないなら私実家に帰ります!」
そうだ。今の私ならちゃんと実家に帰れるんだぞ!
そう思って強気で言い返した私にアーロンが首を傾げる。
「実家……?」
あ、しまった、まだ説明してなかったんだった。
私は多分悪くないはずだけど、帰れることをずっと秘密にしてたのバレたらもしかして怒られる?
焦って口を押さえた私をアーロンが不審そうに見おろした。
「お前、そういえばどうやってここに帰ってきたんだ?」
う、やっぱり見逃してくれなかった。
でもその流れのお陰でアーロンが律動を止めてくれたので、素早く腕から抜け出しアーロンから離れた私は、脱ぎ捨ててあったネグリジェを拾ってそのポケットから鍵を取り出した。
「えっと、実はこんなものがありましてですね……」
そう言って鍵を見せながら言い訳がましい説明をするうちに、ずっと勃ちっぱなしだったアーロンの下半身もすっかり元気をなくして大人しくなってくれた。
聞き終えたアーロンがガックリと落ち込んで、なんか一人「俺の九年……」とかぶつぶつ言い出したので、私はその隙に服をきてやっと人心地。
アーロンも気が削がれたのか、黒のローブ姿に戻って私に洗浄魔法をかけてくれた。
身支度が終わり、私を抱えたアーロンが、最後にもう一度私の額に自分の額を押し当てて囁く。
「一旦片が着いたら話があるからな」
真剣な顔でそう告げたアーロンは、辺境伯邸のタイラーさんに私を預けてやっとお仕事に戻っていってくれたのだった。
* * *
そして二週間後。
「やるべきことは終わらせた」
そう言い張るアーロンが辺境伯邸に戻ってきた。タイラーさんが何度も「今日だけですよ」って念を押してたけど本当にいいのかな。
あれから毎日アーロンからはメッセージが届いてた。
空間魔法もすっかり元通りで、以前通りここにも転移できるけど、流石に忙しすぎてあまり長くは帰ってこれないらしい。たまに顔も見かけたけど、直ぐに誰かを連れて飛んでっちゃう。ゆっくりお話が出来るのは夜のランプ越しのメッセージくらいだった。
ピピンさんたち、実はフレイバーンのバートン卿のお家に……じゃなくてお城に住み着いてた。総攻撃で空っぽになってたお城をアーロンが退避先に選んだらしい。飛ばされた先でピピンさんとキックスさんたちがそのまま接収しちゃったのだそうだ。
そんな簡単にお城取られちゃうなんて、バートン卿ってもしかしておバカ?
突然敵国のお城に飛ばされちゃったキックスさんたちはかなり焦ったらしいけど、公国の王城は当分人が住めそうにない状況だし、アーロンがいればいつでも行き来出来るしで結構便利なんだそうだ。
ついでに、今回の後始末でどうやら南フレイバーンはここルトリアス公国に吸収合併されることになったらしい。難しい政治の話はよく分からなかったけど、結果的には誰も文句言えなかったってことみたい。だから今、ピピンさんたちは自分たちのお城の修繕や街の復興と、元南フレイバーンの各地を治める為に狂ったように働いてるのだそうだ。
その間私はと言えば、辺境伯邸に集まってた負傷兵の皆さんの手当をお手伝いして回ってた。
流石に今回は手が足りなくて、私のお手伝いを止める人も誰もいなかったし、マイヤさんもエリーさんも色々教えてくれた。徐々に元気になった兵士さんたちが作業を代わってくれて、今日はやっと落ち着いてお茶を飲む時間も取れてた。
そう言えば昨日、ここに居候してた子供をアーロンが迎えに来てひと悶着あった。
金髪のクリクリ巻き毛が可愛い男の子、ウィル君。やけに身のこなしが綺麗で気にはなってた。でも幼いのに私と一緒にお手伝いしててとっても気さくだから、てっきり兵士さんの家族だと思ってたんだけど。
アーロンと一緒に飛んできたピピンさんが彼を見つけるや否や、驚愕に顔を歪めて駆け寄った。
「ウィリアム王子、ご無事で!!」
「ピピン、遅かったな」
どうやら第二王子のウィリアム様だったらしい。
後から聞いた話では、第二王子が死亡したならアーロンが国を継げって隣国アレフィーリアからの使者に迫られて、それでやっと思い出して引き取りに来たのだそうだ。
「アエリア様もご無事で何より」
直ぐに私の姿に気がついて、手を取りつつピピンさんがそう言ってくれたけど。それを見ていたウィリアム王子がギョッとして、私の顔をマジマジと見ながら大声で叫んだ。
「はぁ? この小娘がアーロンの言ってた勇者の娘か? 俺より子供じゃないか!」
「し、失礼な! 私これでも十六で成人してます!」
「本当か? そのペッタンコな胸はどう見たって…ガッ」
思わず言い返した私も悪いけど、言っちゃいけない一言を紡ごうとしたウィリアム王子の頭にアーロンの遠慮ない鉄拳制裁が飛んだ。
「お、お前、こんな幼い娘に手を出す変態だったのか!」
咄嗟にウィリアム王子を庇おうとしたピピンさんが、負けずと言い返した王子の言葉に思いっきり笑い転げた。
「このクソ王子、とっとと帰るぞ!」
あ、アーロン言い返さない……
返せないよね。事実だし。
それにしても珍しく敬語なしで接してるし、どうやらアーロンはウィリアム王子を結構気に入ってるみたい。
そんなこんなで慌ただしく一週間が過ぎ去り、久しぶりのアーロンの帰宅を知らされた私は朝からソワソワとその帰りを待っていた。夕食もそこそこにアーロンによって寝室に連れてこられた私は、てっきりまたこのまま押し倒されるのかと覚悟してたのだけれど。
「アエリア、鍵を出せ」
思いがけず、アーロンはあの鍵を見せろと言いだした。
あの話、やっぱりまだ忘れてくれてなかったらしい。
「いいですけど」
今度こそ叱られるのかと内心ビクビクしながら鍵を差し出すと、アーロンが首を振って答える。
「いや、俺に渡すんじゃなくて、そこの扉を開いてみろ」
そう言って私の寝室へ続く扉を指差した。
うーん、これで開けたら多分あちらに繋がると思うけど、アーロンと一緒にいる時に開けちゃっていいのかな。
そんなことを考えつつも、言われるまま鍵を挿して捻り、そして私は自分の部屋へと繋がる扉をまたも開いた。
「さあな……」
アーロンに後ろから抱えられながら、切れる息の合間に尋ねる私を、またも羽交い締めにしてアーロンが律動を始める。もう何度目になるか分からないアーロンの欲情に、私はいい加減疲れて言い返す。
「さあなじゃなくて、お城、このままで、いい訳、ないですよね」
「さあ……な……」
甘い快楽の波に引き戻そうと私の首筋にキスを這わせながら、アーロンがまた同じ言葉をくり返す。
全然話を聞いてくれてないよ!
「いえ、だからさあなじゃ、なくて!」
流石にちょっと頭にきて、私はアーロンの上から無理やり腰をあげ、振り返ってアーロンと向き合った。
「師匠、いい加減一旦お休みにしましょう、きっと皆心配してるはず……」
そこまで言って自分の間違いに気がついた。
ダメだ、この人この言い方だと間違いなく拗ねちゃう!!
案の定、アーロンの瞳が暗く輝いて。
「こんなにずっと会えなかったのに、お前はもう満足だって言うのか?」
強くしっかり抱きしめ直したアーロンが、身動き出来ない私をゆっくりと、一番奥まで、下から貫く。
「足りないのは俺だけか?」
言葉とともに、一度引き上げられた私の身体が、またもゆっくりゆっくりアーロンの上に落とされる。
「アイツらなんて放っとけ」
顔前面をアーロンの胸板に埋め込まれて声もあげられない私は、ジリジリと何度も繰り返される終わりのない抽挿入と快感の波から逃げる術もない。
今日のアーロンはおかしい。いつもならもっと手加減なくメチャメチャに突き上げてくるのに、これだけ長い時間、ただただゆっくりと繋がり続けてる。まるで私の身体を気遣うように、ゆっくりと、丁寧に愛でまわす。
それでも波は確実に高まってきて、甘く深い波に今にも意識が飲み込まれそうになったところで、アーロンが熱い吐息とともに私の耳に囁いた。
「せめて半日、誰にも、邪魔は、させない」
切なげにそう宣言しつつ私を揺さぶるアーロンを、私はもう止めることが出来なかった。
* * *
そして日暮れ前。壊れた壁から吹き込む風に肌寒くなってきた私は、肩を摩りながらとうとう叫んだ。
「もうだめ、アーロン、やめてくれないなら私実家に帰ります!」
そうだ。今の私ならちゃんと実家に帰れるんだぞ!
そう思って強気で言い返した私にアーロンが首を傾げる。
「実家……?」
あ、しまった、まだ説明してなかったんだった。
私は多分悪くないはずだけど、帰れることをずっと秘密にしてたのバレたらもしかして怒られる?
焦って口を押さえた私をアーロンが不審そうに見おろした。
「お前、そういえばどうやってここに帰ってきたんだ?」
う、やっぱり見逃してくれなかった。
でもその流れのお陰でアーロンが律動を止めてくれたので、素早く腕から抜け出しアーロンから離れた私は、脱ぎ捨ててあったネグリジェを拾ってそのポケットから鍵を取り出した。
「えっと、実はこんなものがありましてですね……」
そう言って鍵を見せながら言い訳がましい説明をするうちに、ずっと勃ちっぱなしだったアーロンの下半身もすっかり元気をなくして大人しくなってくれた。
聞き終えたアーロンがガックリと落ち込んで、なんか一人「俺の九年……」とかぶつぶつ言い出したので、私はその隙に服をきてやっと人心地。
アーロンも気が削がれたのか、黒のローブ姿に戻って私に洗浄魔法をかけてくれた。
身支度が終わり、私を抱えたアーロンが、最後にもう一度私の額に自分の額を押し当てて囁く。
「一旦片が着いたら話があるからな」
真剣な顔でそう告げたアーロンは、辺境伯邸のタイラーさんに私を預けてやっとお仕事に戻っていってくれたのだった。
* * *
そして二週間後。
「やるべきことは終わらせた」
そう言い張るアーロンが辺境伯邸に戻ってきた。タイラーさんが何度も「今日だけですよ」って念を押してたけど本当にいいのかな。
あれから毎日アーロンからはメッセージが届いてた。
空間魔法もすっかり元通りで、以前通りここにも転移できるけど、流石に忙しすぎてあまり長くは帰ってこれないらしい。たまに顔も見かけたけど、直ぐに誰かを連れて飛んでっちゃう。ゆっくりお話が出来るのは夜のランプ越しのメッセージくらいだった。
ピピンさんたち、実はフレイバーンのバートン卿のお家に……じゃなくてお城に住み着いてた。総攻撃で空っぽになってたお城をアーロンが退避先に選んだらしい。飛ばされた先でピピンさんとキックスさんたちがそのまま接収しちゃったのだそうだ。
そんな簡単にお城取られちゃうなんて、バートン卿ってもしかしておバカ?
突然敵国のお城に飛ばされちゃったキックスさんたちはかなり焦ったらしいけど、公国の王城は当分人が住めそうにない状況だし、アーロンがいればいつでも行き来出来るしで結構便利なんだそうだ。
ついでに、今回の後始末でどうやら南フレイバーンはここルトリアス公国に吸収合併されることになったらしい。難しい政治の話はよく分からなかったけど、結果的には誰も文句言えなかったってことみたい。だから今、ピピンさんたちは自分たちのお城の修繕や街の復興と、元南フレイバーンの各地を治める為に狂ったように働いてるのだそうだ。
その間私はと言えば、辺境伯邸に集まってた負傷兵の皆さんの手当をお手伝いして回ってた。
流石に今回は手が足りなくて、私のお手伝いを止める人も誰もいなかったし、マイヤさんもエリーさんも色々教えてくれた。徐々に元気になった兵士さんたちが作業を代わってくれて、今日はやっと落ち着いてお茶を飲む時間も取れてた。
そう言えば昨日、ここに居候してた子供をアーロンが迎えに来てひと悶着あった。
金髪のクリクリ巻き毛が可愛い男の子、ウィル君。やけに身のこなしが綺麗で気にはなってた。でも幼いのに私と一緒にお手伝いしててとっても気さくだから、てっきり兵士さんの家族だと思ってたんだけど。
アーロンと一緒に飛んできたピピンさんが彼を見つけるや否や、驚愕に顔を歪めて駆け寄った。
「ウィリアム王子、ご無事で!!」
「ピピン、遅かったな」
どうやら第二王子のウィリアム様だったらしい。
後から聞いた話では、第二王子が死亡したならアーロンが国を継げって隣国アレフィーリアからの使者に迫られて、それでやっと思い出して引き取りに来たのだそうだ。
「アエリア様もご無事で何より」
直ぐに私の姿に気がついて、手を取りつつピピンさんがそう言ってくれたけど。それを見ていたウィリアム王子がギョッとして、私の顔をマジマジと見ながら大声で叫んだ。
「はぁ? この小娘がアーロンの言ってた勇者の娘か? 俺より子供じゃないか!」
「し、失礼な! 私これでも十六で成人してます!」
「本当か? そのペッタンコな胸はどう見たって…ガッ」
思わず言い返した私も悪いけど、言っちゃいけない一言を紡ごうとしたウィリアム王子の頭にアーロンの遠慮ない鉄拳制裁が飛んだ。
「お、お前、こんな幼い娘に手を出す変態だったのか!」
咄嗟にウィリアム王子を庇おうとしたピピンさんが、負けずと言い返した王子の言葉に思いっきり笑い転げた。
「このクソ王子、とっとと帰るぞ!」
あ、アーロン言い返さない……
返せないよね。事実だし。
それにしても珍しく敬語なしで接してるし、どうやらアーロンはウィリアム王子を結構気に入ってるみたい。
そんなこんなで慌ただしく一週間が過ぎ去り、久しぶりのアーロンの帰宅を知らされた私は朝からソワソワとその帰りを待っていた。夕食もそこそこにアーロンによって寝室に連れてこられた私は、てっきりまたこのまま押し倒されるのかと覚悟してたのだけれど。
「アエリア、鍵を出せ」
思いがけず、アーロンはあの鍵を見せろと言いだした。
あの話、やっぱりまだ忘れてくれてなかったらしい。
「いいですけど」
今度こそ叱られるのかと内心ビクビクしながら鍵を差し出すと、アーロンが首を振って答える。
「いや、俺に渡すんじゃなくて、そこの扉を開いてみろ」
そう言って私の寝室へ続く扉を指差した。
うーん、これで開けたら多分あちらに繋がると思うけど、アーロンと一緒にいる時に開けちゃっていいのかな。
そんなことを考えつつも、言われるまま鍵を挿して捻り、そして私は自分の部屋へと繋がる扉をまたも開いた。
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