職業が魔王なので勇者の村を追放されたけど、幼馴染が女勇者になったので陰ながら手助けしようと思う

つちねこ

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四十五話目 死霊レイス

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 エリオを後ろから羽交い締めにしたまま、どうやって逃げようかと策を巡らせているといった感じだろう。アンデッド軍死霊レイスのプリサイファと言ったっけ。

「ま、まさか、元四天王でも一番強いと噂されていた、レムリアに会ってしまうとは私も運がない」

 レムちゃんが一番強かったのか……。ところが、レムちゃんを見ると顔にハテナマークを浮かべている。

「状況にもよると思うぞ……。圧倒的な魔法は時に人を恐怖に陥れる。でも、まあ、俺からしたら、どんな動きをしてくるか読めないアイミーの方が余程こわい」

 なるほど、確かに一長一短はありそうだ。レムちゃんはアイミーを苦手にしているけど、アイミーは規則正しく攻撃してくるシュナちゃんが苦手だったりする。相性もあれば、得手不得手もある。

「それで、どうするのかな。君もゴブリンキングのように戦ってみる?」

 魔王軍四天王と聞いて逃がすつもりはない。まあ、四天王っていっても、ステータスアップしてないのだろうけど。それでも可能な限り、魔王の力は削いでいく。

「ちょっと、待ってくれ……。ガジュマズルはもう君たちと戦ったというのか」

「ふふふっ、残念ながら、ゴブリンキングもゴブリンもまるっと全て討伐させてもらった。まあ、ほとんどレックス一人でぶっ倒したんだけどな」

 レムちゃんが自分の手柄のように胸を張って自慢する。レムちゃん、そういう所あるよね。

「ほ、ほとんど一人で討伐しただと!? 何万のゴブリンがいたと思っているんだ! 五万は下らないぞ、し、しかもスキルも発動していたというのに……ガジュマズルが負けただと……」

 五万もいたかな……。あれかっ、悪食のスキルで結構な数食べちゃってたんじゃないかな。ゴブリンキング、結構大きかったもんね。

「それで、プリサイファさん。そろそろ、その子から手を離してもらおうか。もしも何かしようというなら」

「ど、どうするつもりだ?」

「僕も本気を出さなければならない」

 ここまで、ほとんど魔力は消費していない。死霊レイスがどういったアンデッドモンスターなのかはわからないけど、対処方法としてはゴーストと同様と思っていいだろう。

「ま、待て。レイスというのはな、ただのゴーストの上位種というだけでなく、魂を刈りとることも出来る。無防備に首を晒しているこの勇者など、俺にかかれば一瞬だ」

「レムちゃん?」
「奴の言ってることは本当だ。今の勇者のレベルにもよるが、奴が持っている大鎌は魂を切り裂く力を秘めている」

「俺様のレベルは、この勇者よりも多分上だ。レベルか高ければ魂は刈り取れる。お、お前たちには負けるかもしれないが、こいつは道ずれにさせてもらう」

「一応、聞くけど……レベル幾つ?」

「聞きたいか。お披露目前の勇者などレベル二十がいいところだと情報を得ている。そして、俺は現在レベル三十二。問題なく魂を刈りとることが出来るはずだ」

 確かに、エリオのレベルは三十に届いていないのはあきらか。このままでは、プリサイファに魂を刈られてしまうのだろう。

「お、お前、見た目以上に弱かったんだな……。レベル三十二かよ」

「う、うるさい」

 会話をしながらもジリジリと窓際へ向かおうとするプリサイファ。奴に戦うつもりはない、逃げることが優先のようだ。

「レムちゃん」
「ん、任せておけ」

 視線の先で、何を言おうとしているか察してくれるあたり本当に助かる。

「お、お前、な、何かするつもりか!? や、やったらマジで魂刈るからな」

 魂を刈った時点で、守るものが無くなってしまうので、プリサイファにその気はない……と思う。

「お前には何もしてねぇよ。もう、面倒くさいからさっさと逃げればいいだろ」

 そう、プリサイファには何もしていない。レムちゃんがしたのは奴が窓を壊せないように勝手に強化してあげただけなのだ。

 つまり、逃げ道を塞いであげて、かつ、逃げようと開かない窓に手を掛けた時に僕のドレインを撃ち込んで終了となる。


「なっ、あ、開かねぇー! ど、どうなってやがるんだ!? お、おまえら何かしただろ!」

「ドレイン!」

 片手にエリオを抱え、もう一方の手で窓を開けようとしているプリサイファに僕のドレインは避けられなかった。というか、頑張って窓を開けようと必死で、僕達から目を離していたしね。

「ふごぉー!!」

「ま、また、お尻を狙ったのか、レックス」
「いや、たまたまだよ。後ろ向いてるんだから、自然と狙いやすいというか……」

 プリサイファは下半身に力が入らないのか、動く上半身と腕を使いながらも這って逃げようとしている。

「レムちゃん、エリオと聖女様を頼むね」
「あぁ、任せとけ」

 プリサイファから奪ったエネルギーは全てレーヴァテインに注入する。紅く光る剣は獲物を探しているかのように禍々しい。

「レックス……それ、本当に神剣なんだろうな?」
「そんなこと言ったら、シュナちゃんに怒られるよ」

 窓を諦めて、隣の部屋へと向かおうとしているプリサイファ、その表情には悲壮感が漂っている。

「さて、魔王に味方するだけでなく、僕の幼馴染にまで手を出すとは、相当死にたいようだね」

「ま、待ってくれ……。何でもするから、情報を、魔王軍の情報を伝えよう。それに、勇者が幼馴染だとか、そんな話は聞いていない」

 情報、情報、言われてもね。聞くだけ聞いてみようか。

「有益な情報なんだろうね?」
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