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3巻
3-1
しおりを挟む1 アイスドラゴンの塔
貴族の三男坊として生まれた僕、クロウ・エルドラド。
前世の記憶を思い出したことで魔法の世界にわくわくしていたのに、授かったスキルはこの世界では不遇とされる錬金術だった。
せっかく貴族として生まれたというのに、この不遇スキルでは表舞台に立つことすら許されず、僕の貴族としての道はあっさりと途絶えてしまう。
それでも不遇スキルと呼ばれた錬金術の可能性を信じ、仲間や家族の協力のもと、辺境の地ながら一人の領主として赴任することになった。
ところが、たどり着いた辺境の地は家も畑もボロボロで、「魔の森」から現れる魔物に襲われる始末。
僕は錬金術スキルを駆使してネスト村の防御を固めたり、畑や養鶏などの新しい取り組みを成功させたりして、村人からの信頼を得ることに成功した。
しかしながら、ここは魔物が溢れる魔の森に近い辺境の地。森から溢れてくる魔物を間引いていきながら村の安全を確保するためには、広大な森の調査が必要だった。
調査といっても大量の魔物を討伐したばかりだから、あくまでも確認程度のつもりだったんだけど……
僕の目の前に現れたのは、魔の森に君臨する凶暴なアイスドラゴンだった。
なぜか成り行きで力比べをさせられることになって、死にそうになるものの目が覚めたらベッドの上に寝かされていて……
そのドラゴンことネシ子は、ネスト村に住むと言い出したのだった。
◇
どうやらネシ子は住む場所をどうしようかと、執事のセバスに邪魔にならない所がないか聞いてきたらしい。
凶暴なドラゴンとは思えない殊勝な発言である。
ただ、隣の家がドラゴンとなると、それはいささか問題がある。
ご近所トラブルは村の崩壊に繋がりかねないのだ。
ドワーフ兄弟の近くなら村人もいないかと思ったけど、酒飲みのうるさい声や作業音でネシ子が激怒しようものなら目も当てられない。
「ドワーフも数が増えそうだしね……」
確か春には同胞を呼んでいるとか、アル中のドワーフ兄弟ノルドとベルドは話していた。近所にドラゴンがいるなど、彼らからしても想定外だろう。
まあ、ネス湖でも十分近いっちゃ近いんだけどさ。
「本人の希望もあるかもしれないし、話だけでも聞いておかないとだね」
そういうことで、再びネシ子に会いにネス湖へとやって来た。
するとそこでは、村の子供たちが湖の上で楽しそうに遊んでいるではないか。昨日までは普通の湖だったのに、一面がびっしり凍っていた。
「えっ、大丈夫なの?」
湖のほとりでは子供たちの親も心配そうに見ているけど、連れ戻しに行くのもちょっと怖いといった感じ。
昨日ドラゴンは味方になったと伝えたばかりだけど、急に仲良くとかはさすがに無理がある。
親御さんたちがどうしたものかと考えているところに、タイミングよく領主である僕がやって来たというわけか。
湖の中央を見やると、ネシ子が氷で小さな家を造り上げている途中。子供たちはそれを珍しそうに眺めたり、氷の上を滑ったりしてはキャッキャッと遊んでいる。
「転んだら痛いから気をつけるのだぞ」
どうやら子供たちの要望で氷の滑り台まで造ってくれたらしい。たぶん広場で子供たちが遊んでいるのを見ていたのだろう。意外にも子煩悩なドラゴンだ。以前より肌の露出度を抑えてレオタードっぽくなっているのも子供への配慮だろうか。
「はああーい」
物怖じしない子供たちもすごいが、普通に接してくれるネシ子にも驚いた。
「やあ、ネシ子。家の場所はそこでいいの?」
「むっ、クロウか。やはり居心地のいいのは氷なのでな。とりあえずといったところだ。ただ我は人間に興味がある。可能なら村で一緒に住んでみたい」
なるほど、やはり隣の家がドラゴンになる村人が発生してしまうらしい。
「それにしても、器用に家を造るものだね」
「何を言う。子供たちから聞いたぞ。この村の家はすべてクロウが造ったそうではないか。人間は弱いが器用なのだな」
どうやら子供たちから話を聞いて、創作活動に火がついたのかもしれない。
「どうも錬金術のスキルが便利なようなんだよね」
「クロウの錬金術は我が知っていたものとは違う。錬金術はそんなに有用なスキルだったのか」
「どうもこのスキルの活用方法をみんな知らないようなんだよ。この村にも数名ほど錬金術師がいるけど、僕のような使い方を練習させているところなんだ」
「な、なっ、クロウと同じような錬金術師がこの村に何人もいるのか!」
「今は二十人ほどだけど、春にはもっと増えると思うよ」
「ク、クロウが二十人……。春にはさらに増えるのか」
何を驚いているのかわからないけど、辺境の村と錬金術師はセットで活躍してもらうつもりだ。
ネスト村でBランク級のポーションを作れる錬金術師として育成して、地方の村へと広げていきたい。
「ところで、住む環境なんだけど何か希望がある?」
「そ、そうだな。村の中には住んでみたいが、一人の静かな時間も欲しい」
そう言いながら、楽しそうに遊んでいる子供たちの姿を目で追っている。
たまにはいいけど、毎日子供の面倒は大変だということなのだろう。孫を見る田舎のおばあちゃんのような意見ではあるが、ごもっともでもある。
人間の暮らしに興味はあるものの、今までドラゴンとして暮らしてきた静かな環境も捨てがたいといったところか。
「それなら、高い塔のような家を造ろうか?」
「塔であるか」
「村での暮らしを楽しみたい時には下に降りてきて、一人静かにしていたい時には邪魔されないように、高い高い塔の上に居住区を構えるんだ」
「ほう、それは我の考えにも合致するな。クロウ、我に塔を造ってくれないか」
これなら隣の家がドラゴンでも、実質隣ではない。
居住区が遥か上空なら、問題なしだ。
塔の高さや部屋の大きさなど打ち合わせすると、あとは場所をどこにするかということになるのだが、塔の高さが三十メートルあるので場所はどこでもいいかということになり、広場の脇に建設することにした。
このドラゴンさんは一人の時間が長かったせいか、どこか寂しがり屋なところがある。人との距離の詰め方がわからずに、僕を戦闘で瀕死の状態に追い込むほどに難儀な性格だ。
根は悪いドラゴンではないのだろうけど、持っている力が凶暴なだけにその扱いには気をつけなければならない。
しかしながら、住み着く以上はこちらとしても慣れていかなければならない。今朝の純真無垢な子供たちのように。
「錬成、空気砲!」
「錬成、ネシ子の塔!」
地面をしっかり固めてから一気に塔を造り上げていく。
子供たちが勝手に登っていかないように螺旋階段は地上十メートルの高さからスタートしていく。静けさを求めているのに、急に子供たちが登ってきたらネシ子も驚くからね。
最上階の部屋には一人暮らし用に広めの1LDKという一般的な間取りにしている。ネシ子も魔法は使えるので、あとは使いやすいように自分でカスタマイズしていくだろう。
「ほう、これが我が城か。ちょ、ちょっと見てきていいか?」
城ではなく塔だ。
我慢できずにうずうずしている感じはとても子供っぽい。ドラゴンだけど。
「うん、何か必要なものとかあったら相談してよ」
「わ、わかった! い、行ってくる」
◆
クロウが我が城、もとい立派な塔を建ててくれた。高さ、立地ともに我の満足するものと言っていい。静かでいて眺めもよく、人の暮らしとも近い。
ちなみに、我の一日は早朝からスタートする。
下の広場に人が集まってきて屋台から美味しい香りが漂ってくると、我のお腹もぐぅーっと音が鳴るのだ。
「今日もハンバーガーセットにするか」
人間の作る料理は繊細で味付けが濃くとても癖になる。ドラゴン的には体に悪そうだが、そんなことが気にならないぐらいに美味しい。これで寿命が十年縮もうが二十年なくなろうが構わないと思うぐらいには毎日食べていたい。
塔の上から飛び降りるとすぐに屋台があるというこの立地はとても嬉しい。クロウに感謝しなければならない。
「おばちゃん、ハンバーガーセットを二つくれ」
「はいはい、ネシ子ちゃんには特別にお肉の大きいのを用意しておいたわよ」
「いつもすまないな。明日はチーズのやつを頼むつもりだ」
これが常連さんへのサービスというやつなのだろう。
ラリバードサンドも好きだが、やはり一番はハンバーガーだ。噛むと肉汁が溢れるのがたまらぬ。この屋台では粗挽きの肉を豪快に使用しているから、肉感が半端なくとっても美味なのだ。
「いいのよ。うちもネシ子ちゃんのおかげで人気になってきてるんだもの」
「そうだったのか。ところでその看板には何と書いてあるのだ? そのイラストは我の姿によく似ていると思うのだが」
看板には、ドラゴンのイラストと、人型の我がハンバーガーを頬張っている姿を可愛くデフォルメされて描かれている。そこに、何かの説明文が書かれているように見える。
「これはね『ドラゴンも驚きの旨さ! これを食べないなんて人生の半分を損しているわ』って書いてあるの」
なるほど、初めてハンバーガーを食べた時の我の感想をそのまま言葉にしているのか。
「そんな看板でちゃんと売れているのか? この店がなくなってしまっては我が困る。お金はクロウからいっぱいもらっているから、経営が厳しくなったらすぐ我に言うのだぞ」
我が魔の森から大型の魔物を持って帰ると、クロウがお金に替えてくれる。これで毎回ハンバーガーを食べれるので、お金はとても大事なものだと理解した。
「あらっ、ネシ子ちゃんたら優しいのね。でも大丈夫よ。お肉も安定的に採れているし、売上も右肩上がりなんだから」
「ならいいのだ。これからもよろしく頼む」
「はい、こちらこそよろしくね。今日も魔の森ですか? 気をつけていってらっしゃいね」
ハンバーガーを食べ終わると、背中から翼を生やして魔の森へとパトロールに向かう。氷狼の言葉通り、増えすぎてバランスを崩している魔物の種の間引きが必要になるからだ。
魔の森は広大で、我が管理するにもそれなりの期間を要してしまう。それでも森が正常に戻りつつあることは嬉しく思う。
森へと向かう途中に、ローズと疾風の射手を見つけた。奴らは空を飛べないので、のんびり亀のように歩いて魔の森へと向かっている。奴らはいわゆる村のお肉屋さんだ。彼らが狩るブラックバッファローの肉やオークの肉が、ハンバーガー店「ペネロペバーガー」の美味しいパテとなるのだ。
「おいっ、また森まで運んでやろうか?」
「だ、大丈夫よ。もうすぐ到着するし」
「運ぶって、腕一本での空の旅はもう勘弁だぜ」
良かれと思って声をかけたのだが、人間にとって地から足が離れるというのは相当怖いことらしい。一度腕を掴んで運んでやったのだがたいそう怖がっていた。空を飛んだら早いのに残念でならない。
魔の森へは彼らの他に、狩人チームという罠で魔物を間引く者と、錬金術師が操るゴーレム隊が一緒に、ワイルドファングやラリバードを中心に狩りをしている。どちらも最底辺の魔物であるが放っておくと増えすぎてしまう種であるため、こちらも定期的な狩りが必要らしい。
そして、人間はラリバードとの共存を試行錯誤しながら進めている。
試験的ながら村ではラリバードが飼育されており、安全に静かに飼われている。その代わりにラリバードは卵を提供しているのだとか。言うことを聞かないオスは食肉用に回されることもあるようだが、こういった取り組みはとても良いことだと思っている。
さて、ようやく目的の場所に到着した。
ここは、大型の群れ同士がぶつかろうとしている棲息地だ。マーダークロコダイルとレッドマンティスが増えすぎて争いになっている。マーダークロコダイルはランクBの魔物で、強靭な顎を持つ攻撃力の高い魔物。一方で、レッドマンティスは左右の腕を鎌のように扱い切り裂いてくる同じくランクBの魔物。
「魔物なら魔物らしく群れることなく己の力で生き抜いてみせよ。お前らがすべきことはこの場所での争いではなく、研鑽を積み重ね上を目指すこと。己の種が一番であることを、自らの力をもって証明してみせよ」
そんなことを言ったところで、魔物にそれを理解する頭は持ち合わせていない。わかってはいるのだが、こちらの考えを理解してくれる者がいるのならと希望を込めて言わせてもらっている。
我の仕事は、こういった大型の群れ同士が争い周囲に悪影響を与えていく種を摘んでいくこと。
「さて、ここを早く片付けて、今日は子供たちと約束したピザという物に挑戦してみようか」
ピザは自分で具材を用意して焼かないとならないので面倒なため避けていたのだが、子供たちから一緒に食べようと誘われてしまったのだ。
元ラグノ村の子が、美味しいチーズが作れたから一緒に食べようと言ってきたのだ。人の子供は特に我を受け入れるのが早い。この柔軟性が人の良いところの一つなのだろう。
村に戻る途中で、ゴーレム隊が方々から戻ってくるのを見かけた。あれはクロウの指示で、周辺に悪さをする魔物や盗賊がいないかをパトロールしているのだそうだ。
小さなゴーレムの後ろを、馬に乗った錬金術師が続いていく。
「それにしても、クロウと同じ力を持った錬金術師が大量にいるのかと思って焦らされたものだ」
クロウが村には錬金術師がいっぱいいるとか言うから正直ビビっていた。クロウと同等の力を持つ者が二人、いや三人もいたら、さすがの我でもどうにもできない。しかしながら、紹介された錬金術師はクロウと比べるまでもないレベルの者たちであった。
まあ、一人だけ見込みのありそうな小娘がいたが、あとはほぼ横一線、どんぐりの背比べのようなもの。
「まったくビビらせおってからに。ここを追い出されたら、住む場所がなくなってしまうではないか」
広場に着地すると、狩ってきたマーダークロコダイルとレッドマンティスを村人に預ける。毎日のことなのでもう村人も慣れてきたようだ。広場では魔物を解体する者がやって来て、あとでクロウが素材に応じたお金を持ってくる。
「クロコダイルの皮はわしらが欲しいのう」
「ノルド、マンティスの鎌も素材としては一級品じゃぞ」
「あとでクロウに相談するんだな。我には素材の扱いはようわからん」
この者たちは村で道具屋をしているドワーフだ。朝から酒を飲んでいるので、子供たちから陰で「臭いヒゲおじい」と呼ばれ距離を置かれている。純真無垢な子供たちに嫌われるのは嫌なので、我も体臭には気をつけようと思う。
「そうか、坊主に話をしておこうかの」
「そうじゃのう」
「ところで、クロウは見なかったか? 今日の分の魔力をまだもらっておらんのだ」
「坊主なら領主の館の裏におったぞ」
「新しい井戸を掘っておったわ」
クロウはこの村の領主なのにもかかわらず、率先して土木仕事をこなしていく。あやつ、本当に貴族の子供なのだろうか。
「そういえば、ローズが家の裏に井戸が欲しいとお願いしておったな」
我は水など魔法で出せるから気にもならないが、人間は使える属性が限られているそうで、風属性のローズには水を出すことはできない。
そう考えると錬金術師はなんでもあり。こんな出鱈目なスキルは大当たりと言っても過言ではない。村でクロウが一目置かれているのも理解できる。
「あれっ、ネシ子。今日は早かったんだね」
「うむ、お昼ごはんは子供たちとピザを食べる約束をしていたからな」
「子供たちの順応力の高さには驚きだよ」
「そうだな。ところで、クロウ。随分深く掘っておるようだが、まだ水は出ぬのか?」
「いつもなら水が出そうな深さなんだけど、まさか枯れちゃってるのかな?」
「この辺りで水が枯れるようなことはありえぬよ。クロウの掘った場所が悪いのだろう。どれどれ、ちょっと見せてみろ」
すると、穴の奥から妙な気配を感じる。
これは、水脈ではないな。
「やっぱり場所が悪いの?」
「クロウ、掘りすぎだ。出ないことはないが、水というより湯が出るぞ」
「湯って、ま、まさか!? ここって温泉が出るの?」
「温泉というのがよくわからんが、この辺りの山は少し前まで火を噴いておったからの。地中ではそのエネルギーが龍脈と重なり、熱を持っておる」
「少し前って、今は全然そんな気配ないじゃんか」
「まあ、三百年ぐらい経ってるからのう」
「この、ばば……」
「むっ、クロウ、何を言おうとしておる?」
「な、なんでもございません」
「そもそも、こんなに深く掘っておいて、水を汲むのが大変だとは思わなかったのか」
脆弱な人間がこんな深い井戸を扱えるはずがなかろうに。
「ローズの馬鹿力ならいけるかなと思ったんだけど、全然出ないからつい深く掘りすぎちゃって。それにしても温泉か……」
「随分と嬉しそうじゃが、この湯はたぶん飲めんぞ」
「飲まないよ。湯浴みするんだって。ネスト村は冬が寒いから温かいお湯はありがたい。それに温泉には体にもいい成分とか含まれてるっていうし、村の人たちも体を清潔に保てるでしょ」
「清潔か、それは大事じゃな。我もドワーフのようにはなりたくない。湯が出るなら我も湯浴みをしよう」
臭いのはもちろんだが、せっかく仲良くなった子供たちに嫌われてしまうからな。それに、人の体にいい成分が含まれているなら、我にも良い効能があるやもしれんしの。
「うん、清潔にするのは大事だよね。ネシ子、あとどのくらい掘ったら温泉出そうかな?」
「あともう一押しといったところかの。どれ、我がやってやろう」
氷魔法で鋭い槍を創り出すと、穴の奥へと向けて勢いよく飛ばす。
プシュァァァァァァ!
やはり、すぐそこまで湯が来ておったようだ。開けた穴から封じ込められていたエネルギーが噴き上がってきた。
「おお、熱い、熱いよ。それにこの匂い。間違いなく温泉だよ。やったね、ネシ子!」
「お、おう。そんなに喜ぶものなのか」
卵の腐ったような臭いに喜ぶクロウにドン引きしながらも、温泉というものに少し興味を持った。
◇
ネスト村に温泉が湧き出た。これは一大ニュースとなり村を駆け巡った。
常に湧き続ける温かいお湯。寒いネスト村ではとてもありがたいこと。
「この温泉は体の疲れを取れるし、清潔に保たれることでみんなも健康になる。そういうことなのでこの温泉は無料で解放する」
「おお、湯に無料で入れる!」
「そして、この温泉にはシャンプーと石鹸を設置する。なるべく一日一回は入るように」
特にドワーフ兄弟には湯の良さを知ってもらいたいものである。
「シャンプーに、石鹸……」
「ローズ様が使っている、髪がサラサラになっていい香りのするやつよね」
「髪のツヤが驚くほど出るのよ。とうとう私たちにも利用の許可が下りたのね」
「それが使い放題……」
使い放題ではない。
村の女性陣が異常に興奮している。そろそろ隠すのも厳しくなってきていたし、温泉が出たとなってはタイミング的にもいい頃合い。
マイダディからはネスト村内での使用許可はちゃんと取ってある。村の衛生管理については僕も譲らない構えなのだ。
知らないうちによくわからない疫病とか発生したら、辺境の村なんて一網打尽だからね。
「セバス、温泉の管理と清掃業務をお願いしたい。人選を頼めるかな」
錬金術で管理をしたら楽そうだなと一瞬頭に浮かんでしまったが、こういうのは村の人たちに振った方がいい。春にはもっと人が増えるのだ。
「かしこまりました。温浴施設はクロウ様が準備するとして、備品や利用方法などを含めて精査いたしましょう」
問題は場所か。ローズの家の裏なので、ここでわいわい騒がれるのは僕もローズも困る。
「セバス、場所だけど」
「それでしたら、広場とドワーフたちの住む間の場所などいかがでしょう。あそこであれば、音も気にならず、また広場からも近いので喜ばれるでしょう」
「なるほど。なら場所はそこで決定だね。温泉は広場の下を通すように繋げよう」
「広場の下でございますか?」
「この熱エネルギーは使わないともったいない。温泉の熱を冷ましがてら、広場で蒸し料理ができるようにするよ」
「蒸し料理でございますか。それはまた、どのような?」
「野菜や卵や肉などを焼かずに、蒸気の熱で調理可能にするんだ。そうだね、温泉まんじゅうや豚まんを作ってもいいかな」
「は、はあ……」
セバスもまんじゅうとか豚まんとか言われてもよくわからないか。まあ、あとで調理の仕方を見せた方がわかりやすいだろう。
それよりも、まずは温浴施設を建てるのが先だ。
ネスト村は現在大きく四つの区画に分かれている。せっかくの温泉なので、それぞれの区画に温浴施設を建てて利用してもらうようにしよう。
「セバス、他のエリアにも建てるから場所の選定を村人と進めておいてもらえるかな」
「かしこまりました。それぞれ人選も含めて調整しておきましょう」
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