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3巻
3-2
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さて、温泉といえばやはり露天風呂。でも室内風呂があってもいい。打たせ湯とかもいいよね。あとは、男女で分けるぐらいか。
大まかに男女で分けるようにして土壁を作り上げ、内風呂と露天風呂をイメージしていく。
露天風呂も大人数が楽しめるように深さや広さは調整してと、あとは景色もそれなりに見せられるようにしたい。
湯に浸かる文化がないこの世界で、娯楽として湯を楽しんでもらいたい。なるべく長く入ってもらうにはリラックスできる雰囲気作りも大事になる。
着替えのスペースと売店も作っておこうか。お風呂からあがったらミルクを飲まないとね。あと、酒を販売すればドワーフ兄弟も呼び込みやすい。
「たいしたものだな。この建物と設備を一瞬で造ってしまうのか」
ネシ子が僕の錬金術を興味深そうに見ている。水や氷を使った魔法しか操れないので、土魔法を扱える僕がうらやましいのだろう。
「不遇と呼ばれる錬金術師の特権だね」
「錬金術師のどこが不遇なのか一度問いただしたいところではあるが、見事なものだ。村に一人はクロウが欲しいというのもわかるな」
人を電化製品みたいに呼ばないでもらいたい。
「僕ができるのはおおまかなところまでだから、細かいところはドワーフ兄弟や村の人にやってもらうことになるけどね」
「それで、広場に何か造ると言っていただろう。何を造るのか気になるから早く見せてくれ」
このドラゴン、意外と文化的なことにも興味があるらしい。そうでもなければ村の中に住みたいとか言わないか。
「温泉の熱を利用して調理をする施設を造るんだ。お湯を使うというより、この湯気というか、蒸気で食材を蒸すんだけどね」
温泉の配管を広場に通すように繋げると、その上部を蒸し調理台にして網やかごを載せて蓋をしておく。細かいところはアル中兄弟に任せよう。それよりも、何か期待しちゃってるネシ子に蒸し料理を提供してあげたいところ。
広場の屋台にある食材で簡単に作るとしたら……。
視線の先にあるペネロペバーガーでは、ちょうどジャガポテトをスライスしている。あれを使わせてもらうか。
「ペネロペ、そのジャガポテトとバターを持ってきてくれるかな?」
「ジャガポテトにバターですか。クロウ様、私も何を作られるのか拝見させてもらってもよろしいでしょうか」
「うん、もちろんだよ。ペネロペバーガーのセットメニューに追加しても面白いかもね」
蒸したジャガポテトに塩とバターを載せるだけ。お手軽簡単なジャガバターを堪能してもらおう。これなら、村の人たちも簡単に作れるしね。
「クロウ、バターが溶けてジャガポテトの味を高めているぞ!」
「ホクホクでしょ?」
「ホクホクじゃな」
翌日、ペネロペバーガーの新しい看板には「ドラゴンも感動のホクホクの味!」という文言が追加されていた。
2 蜂蜜とキラービー
ネシ子が毎日大型の魔物を狩ってくるので、冬の間の食生活はとても豊かなものになっている。ネシ子さまさまである。
村人たちもドラゴンと暮らす非日常の世界に慣れてきたのか、それとも子供たちと仲良くしているネシ子を微笑ましく思ったのか、あまり気にしなくなってきている。
まあ、気にしたところでどうすることもできないし、ネシ子が敵に回った瞬間にネスト村は壊滅するわけだ。考えてもどうにもならないことは考えない方がいいのだ。
それでも最近のネシ子を見ていると、矮小なる人間の生活というものを存外に楽しんでいるように思える。
「今日もハンバーガー食べてるんだね」
広場でハンバーガー片手にくつろいでいるネシ子の姿は、ネスト村の日常の一部となっている。
「ペネロペバーガーは絶品だからな。聞いたぞ、クロウ。ペネロペはお前の所の料理人らしいじゃないか」
「うん、うちの料理人だけど、屋台でハンバーガー屋さんもやってもらってるんだ」
「ずるいな。我には料理人がいない」
ドラゴンのくせに料理人を所望するとは生意気な奴だ。
「ずるいと言われてもね。夜ご飯でいいならうちで一緒に食べる?」
「い、いいのか!」
「ペネロペも一人分増えるぐらいどうってことないと思うよ。たまにローズとディアナも食べに来るし」
「それならばぜひともお願いしたい。ところで、朝はダメなのか?」
朝からドラゴンがやって来る領主の館はちょっと嫌だ。ネシ子のことだ、ペネロペの朝食が気になって日ごとに来る時間が早くなるのは目に見えている。
朝はのんびり二度寝派の僕にとってそれはとても困る。適当な言い訳をして断ろう。
「朝は錬金術師として瞑想したりするからダメだね」
「ど、どうしてもダメなのか」
「うん、魔力供給にも影響出ちゃうかもしれないし」
もちろん、そんな影響は皆無である。
「そうか。それならばしょうがないな……」
そう言いながらチラチラこっちを見ては本当に無理なのかを探っているようだが、ここは毅然とした態度で断わらせてもらう。
しかしながら相手はドラゴン。強引に行動に移されても困るので少し話題を逸らそうか。
「ところで、温泉がかなりお気に入りのようだね」
「う、うむ。朝と森から戻ってからの二回は必ず入っている。あれは体がポカポカしていいな。石鹸とシャンプーも気に入ったぞ」
温泉に入ると言い出したネシ子を普通に女風呂に入れてもいいのか。念のため女性陣に相談したところ、子供たちからネシ子の話を聞いていたらしく全然問題なしという結果だった。
また裸の付き合いとでもいうのか、村人ともグッと距離が縮まったような気がする。温泉の中では子供たちと一緒に洗い合いをしたりと、よく面倒を見てくれているらしい。
その流れは男性陣やケポク族にも広がってきていて、最近では広場で普通に会話している姿も見かけるようになってきた。
「ネシ子姉さん、うちで作ったオークまんじゅう食べるかい?」
「なんなのだ、そのオークまんじゅうとは。その白いやつか、美味いのか? どれどれ味見してやろう」
これは、ペネロペバーガーの流れを汲んだ新しいマーケティングらしく、ネシ子のお墨付きをもらうことで屋台での箔が付くという流れらしい。
屋台はここだけでなく他の居住区にもあるので、人気になると複数店舗で展開されるのだ。最近の流行りはやはりハンバーガーで、ネシ子おすすめのペネロペバーガーを真似る屋台が増えてきている。しかしながら粗挽き肉のちょうどいい割合や味付け、焼き加減などの総合力でペネロペの味には追いついていない。
ちなみにペネロペバーガーはここにしかないので、他の居住区から買いに来る人もいる人気ぶりだ。チーズバーガーもとっても美味しいんだよね。
「なるほど、この生地の中にオークの肉が包まれているのだな。刻んだオニュオンの甘さが悪くないが、食感にもうひと工夫あってもいいのではないだろうか」
「なるほど、食感ですか。柔らかくて食べやすいが、少しコリコリした食感が入ると全体としてまとまりそうですな。ネシ子姉さん、あざっす!」
「うむ、精進するように」
すっかり料理評論家としての立場を確立しつつあるネシ子。その的確なアドバイスはドラゴンのくせになかなか的を射ている。
「ねぇ、ネシ子。人型に姿を変えていると味覚とかも変わるものなの?」
「うむ、そのようだな。我も驚いているのだが、この舌は繊細な味覚がわかるようで楽しんでいる。美味しそうな食材があるなら森から採ってくるぞ」
美味しそうな食材か……。この辺境の地で今足りないものといえば、やはり甘味だろう。果物や蜂蜜、そして願わくば砂糖。
砂糖に関しては、寒いネスト村でも育てられそうなテンサイの苗をスチュアートに頼んである。これはビートの砂糖用品種で寒冷地でも問題なく育つらしい。
つまり、もう少しの辛抱で砂糖は手に入るようになる。
しかしながら、それはそれで甘味は今すぐにでも欲しい。
「甘い果物とか、蜂蜜があれば美味しいデザートが作れるんだけどな」
「蜂蜜というのは、キラービーの巣穴にある甘い蜜のことか?」
「えっ、ネシ子、蜂蜜知ってるの?」
「ああ、我が山にいた時に奴らがよく蜜を届けてくれたものだ」
貢ぎ物的なやつなのだろうか。さすがは元魔の森の王だけはある。
「それで、ネシ子は蜂蜜のお礼にキラービーに何をしてあげたの」
「いや、別に何も」
可哀想なキラービー。話が通じないドラゴンが相手では如何ともしがたい。
「そ、そう……。それで、キラービーはどの辺に棲んでいる魔物なのかな?」
「キラービーはラリバードよりも弱い。何かに寄生しながらでなければ森では生きていけぬ。我が知る限りでは、確か近場ではエルダーグリズリーに飼われていたな」
ラリバードよりも弱い魔物が魔の森に存在していたとは驚きだ。
それにしても熊に蜂蜜か。あんな凶暴なプーさんでは、みんなの人気者にはほど遠いだろう。
「どうする、奪いに行くか?」
貢ぎ物をもらっておきながら、なお、奪おうとするドラゴンが清々しいほどにジャイアンだ。
我の物は我の物。それ以外も我の物。きっとそんな感覚なのだろう。口角が上がりニヤリとしてとても楽しげだ。
「そうじゃなくてさ、キラービーはエルダーグリズリーに蜂蜜を提供して生かしてもらっているってことだよね」
「魔の森、真の最弱だからな」
「それならネスト村で引き取りたいんだけど、交渉とかできないかな?」
蜂蜜を提供してもらう代わりに彼らが必要な物を揃えよう。魔の森にいたいのは魔力が溢れる心地良い立地だからということ。
うちの錬金術師たちが同じような状況を魔力供給で再現できれば、交渉の余地はあるのではないか。
蜜を集めるのに必要な草花があるなら畑で育ててもいい。
「クイーンを誘拐すれば交渉するまでもないぞ。大量についてくるし、すぐにキラービーを産みまくるからな」
違う、そうじゃない。
「もうちょっと穏便に、お互いにメリットを共有して、持ちつ持たれつの関係を目指したいんだけどな。ほら、僕とネシ子のような関係だよ」
「クロウはキラービーとそこまでの関係を持ちたいのか……」
どこまでの関係性なのかよくわからないけど、ネスト村に招待するなら仲良くしたいものだ。
ラリバードのようなヒーリング草中毒による関係性よりもいいものにしたい。
「クイーンとは会話できるの?」
「会話はできないが、何を考えているとかは理解できる。こちらの気持ちも多少は伝わるはずだ」
「それなら、通訳をお願いできないかな」
「まあ、クロウの頼みであるなら引き受けよう」
「ありがとう、ネシ子」
そうして僕とネシ子は二人でキラービーの巣に向かって、文字通り飛んでいった。
ネシ子はドラゴンだからなのか、空を飛ぶのが好きだ。
確かにスピードも速いし目的地にもすぐに到着するのだけど、命綱なしのフライングというのはなかなか震える。
僕の場合は万が一落ちても、メガトン空気砲連射で着地できるからまだいい。ローズや疾風の射手が怖がるのは当たり前のことだろう。
「クロウは怖がらないからつまらんな」
やはりこのドラゴン、わざとやっていやがったか。
「いや、十分に怖いから。大抵の人間は高い所、苦手なの」
「まあいい。着いたぞ、あれがキラービーの巣だ」
上空から見る限り、近くにいたエルダーグリズリーはネシ子の存在を感知したのか、周辺から逃げ出している。
「キラービーはネシ子を見ても逃げないんだね」
「当たり前だろう。蟻がドラゴンを見て逃げると思うか」
なるほど。ネシ子からしたら小さすぎてご飯にもならないわけで相手にもされないということか。つまり、キラービーにとってドラゴンは異次元すぎて敵にすらならないわけだ。人もキラービーのようになりたいものだ。
しばらく様子を見ていたら、巣穴から大量のキラービーが出てきて巣穴の後ろに隠れている。そりゃまあ蟻だってドラゴンは怖いのだろう。
「あ、あれは」
「うむ、クイーンだな」
お供のキラービーを脇に従えて、三倍ぐらいの大きさのクイーンが蜂蜜を献上しようと出てきた。
それはもう何度もやってきた感じで手馴れた様子で、ゆっくりと頭を下げながら器用に手を伸ばしつつ、頭の高さよりも高く蜂蜜を掲げている。
「ネシ子、いつもこんな感じなの?」
「我の時は高確率でクイーンが出てくるな。エルダーグリズリー程度ならクイーンは出てこない」
なるほど、キラービーも相手を見て判断するらしい。
「でもちょうどいい。ネシ子、クイーンと話がしたいから通訳を頼めるかな」
「うむ、任せておけ。何から聞くのだ?」
僕が聞きたいことは、うちの村に引っ越さないかということ。安全を保証する代わりに蜂蜜を分けてほしい。ここまではエルダーグリズリーと変わらない。というより、居心地のいい魔の森から出ることを考えたらマイナスかもしれない。
そこで、ネシ子にもやっている魔力供給を巣全体に行うことと、キラービーが必要な草花を近くで育てることも約束する。
少なからず、蜜を採りに行く過程で他の魔物に襲われているはずだ。ラリバードと同様のネスト村楽園理論で勝負をかける。
危険なし、蜜吸い放題、魔力供給もあるよ!
あとは、ドラゴンが横にいるプレッシャーというのもこの話し合いにおいて優位に働いている。この話を断ろうものなら、ドラゴンが暴れ始めるかもしれないのだ。
それは、通訳を頼んでいるネシ子をチラチラと見ながら考え込んでいるクイーンを見てもあきらかだ。
「クロウ、おおむね引っ越すことで決定しそうなのだがな。何か勘違いをしているようなのだ。お前のことをダンジョンの関係者かと聞いてきたのだが、なんのことかわかるか?」
「ダンジョン?」
なぜ、ここでダンジョンの話が出てくるのだろうか。
異世界あるあるではないが、この世界にはダンジョンと呼ばれる魔物の巣窟があるらしいという知識はクロウの中にもある。
ただし、少なくともそんな物はエルドラド領にはないし、ベルファイア王国にもないはず。隣国や遠い異国でそういった物があるらしいという程度の情報しかない。
ダンジョンは効率よく素材が手に入るため、上手に付き合うことでかなり儲かると言われている。
蜂蜜クッキーでも作ろうかと軽い気持ちで来たのに、まさかの展開に僕もちょっと困惑してしまう。
クイーンが言うには、魔の森を離れて新しい場所を発見した同胞がいるらしいとのこと。
キラービーは蜜を集めるためにそれなりの距離を移動する。そうして移動する中で、他の巣の同胞ともコミュニケーションを取るのだそうだ。
話を聞く限りでは、生きるうえで必要な魔素が豊富な場所、つまりダンジョンらしき物を発見してそこへ引っ越しをしたキラービーがいたということか。
「なるほど、それで引っ越し先がダンジョンだと思ったのか」
「普通に考えて、人間が魔物に魔力供給するわけないからな。それだけ錬金術はとんでもないスキルなのだよ」
魔物に魔力供給とか、普通の人はしないと思うからね。
「それにしてもダンジョンか……。ネシ子、キラービーたちはダンジョンの場所を知っているのかな」
クイーンに身振り手振りで通訳しているネシ子を見ると本当に会話が成り立っているのか不安になるところだが、そこまで大きな行き違いもないようにも思える。
「知らないと言っている。まあ、興味がなかったのだろう。今度その同胞に会うことがあれば聞いてみるそうだ」
ダンジョンがエルドラド領に発生した可能性があるということか。これはマイダディの判断どころの話ではない。完全にベルファイア王国の案件になるだろう。
ダンジョンからもたらされる素材は、国力を大きく向上させる可能性がある。もしも本当にエルドラド領にダンジョンが発見されたのであれば、ローゼンベルク公爵派はかなり勢いに乗りそうな情勢と見ていい。
とはいえ、まだダンジョンが発見されたわけではない。ここはキラービーからの報告を待ちながら、その可能性があるということだけ伝えておけばいいか。
「それにしても、ダンジョンの外から魔物が引っ越しするなんてことがあるんだね」
「すべては魔素が要因であろう。我もそうだが、魔物は魔素の濃い場所を好む。そして、魔素の多い場所というのはそう多くないのだ。居心地のよい場所であるならダンジョンにも行くであろう」
引っ越し難民であるネシ子の言葉だけに重い気がする。
魔物が集まる場所には理由があるということか。魔物も魔物でいろいろと大変なのかもしれない。
「えーっと、それで、引っ越しはしてくれるんだよね」
「うむ、問題ないそうだ。ただ、念のためにその魔力供給とやらを見せてほしいそうだ」
「ああ、それはそうだよね。了解したよ。錬成、魔力供給!」
最近では毎日ネシ子にやっている魔力供給だけど、クイーンを中心に巣穴も含めて魔力を渡してあげた。
心なしか、キラービーがブルブルと震えながら元気に飛んでいるような気がしないでもない。
「すごいすごいと騒いでおるな。これをどのぐらいの頻度でやってもらえるのかだと? クロウ以外にも錬金術師は大勢いる。これぐらい毎日やれるだろう、なぁ、クロウ」
「うん、このぐらいなら毎日でも問題ないかな」
ネシ子には僕の魔力が半分持っていかれるが、さっき渡した魔力は僕の魔力量からしても数パーセント程度のもの。これぐらいなら全然問題ないし、他の錬金術師たちに任せて大丈夫なレベルだ。
よほど嬉しいのか、頼んでもいないのに追加の蜂蜜を持ってこさせようと指示をしているクイーン。
いや、これからネスト村に引っ越しするんだから、別にここで渡さなくてもいいんだよ。
「クロウ、食べてみるといい。ここのキラービーの蜜はとても味が濃いんだ。確か果物系の花の蜜を中心に集めているはずだぞ」
「んー、甘くて濃いね。ん、果物? ネシ子、今、果物と言ったのかな?」
「お、おう。果物だ。甘い果実のなる花だな」
ネスト村にないけど欲しい物ランキングの上位に来る果実の樹。みずみずしく甘くて美味しい果物。その果物が近くにあるのか?
「ネシ子、クイーンにその果物の生えている場所を教えてほしいと伝えてくれないか。ネスト村でもその果物を育てたい。ネスト村で蜜を集められたら安全でしょ? ねぇ、何種類あるのかな?」
「ちょ、ちょっと落ち着け、クロウ。お前が果実に前のめりなのはよくわかったが、今はキラービーの引っ越しが優先だろう。蜜を集める場所など、あとでいくらでも聞けばいい」
「そ、そうだね。急に甘味が目の前に広がり出して興奮してしまったよ」
そういえば、勢いでここまで来てしまったけど、ネスト村の人たちに魔物を連れてくることを言ってなかったな。
まあでもラリバードの時もなんとかなったし、ドラゴンがいる今、特に反対されることもないか。
考えるとしたら住む場所ぐらいかな。子供たちが近寄るような場所にはあまり巣を作らせない方がいいだろう。
邪魔にならない場所というなら、高くそびえ立つネシ子の塔がある。塔に巣を付ければ子供たちも迂闊に手を出せないし、キラービーたちも安心ではないだろうか。
「我が塔はダメだぞ」
「えっ、何も言ってないのになんで?」
「クロウの目がそう物語っていた気がする」
「僕の目は物語ったりしないよ」
ちっ、先手を打たれてしまったか。ネシ子、ちょろい系のドラゴンかと思っていたら意外と鋭いじゃないか。
まあ、これから樹木を育てることを考えれば畑エリアになるのかな……。ラリバードと喧嘩にならなければいいんだけどね。
「クイーン、君たちはラリバードと仲が悪かったりする?」
「うーん、火を噴くオスは嫌いらしいぞ。あとは、ヒーリング草の花が咲く時期はたまに喧嘩することもあるらしいな」
魔の森のラリバードとは比べ物にならないぐらいに大人しいから大丈夫だとは思うけど、少し離した方がいいかもしれないね。
「わかった、君たちが過ごしやすいように家を建てるから、好みの条件とか教えてもらえるかな」
こうして、畑エリアを拡張してキラービーの家を造ることになった。
このキラービーだけど、ネスト村の一員となることで、蜜を集めるだけでなく周辺の情報収集に活用できるようになり、領都バーズガーデンとの手紙のやりとりなんかも協力してくれるようになる。伝書鳩ならぬ伝書キラービーの誕生だ。
大まかに男女で分けるようにして土壁を作り上げ、内風呂と露天風呂をイメージしていく。
露天風呂も大人数が楽しめるように深さや広さは調整してと、あとは景色もそれなりに見せられるようにしたい。
湯に浸かる文化がないこの世界で、娯楽として湯を楽しんでもらいたい。なるべく長く入ってもらうにはリラックスできる雰囲気作りも大事になる。
着替えのスペースと売店も作っておこうか。お風呂からあがったらミルクを飲まないとね。あと、酒を販売すればドワーフ兄弟も呼び込みやすい。
「たいしたものだな。この建物と設備を一瞬で造ってしまうのか」
ネシ子が僕の錬金術を興味深そうに見ている。水や氷を使った魔法しか操れないので、土魔法を扱える僕がうらやましいのだろう。
「不遇と呼ばれる錬金術師の特権だね」
「錬金術師のどこが不遇なのか一度問いただしたいところではあるが、見事なものだ。村に一人はクロウが欲しいというのもわかるな」
人を電化製品みたいに呼ばないでもらいたい。
「僕ができるのはおおまかなところまでだから、細かいところはドワーフ兄弟や村の人にやってもらうことになるけどね」
「それで、広場に何か造ると言っていただろう。何を造るのか気になるから早く見せてくれ」
このドラゴン、意外と文化的なことにも興味があるらしい。そうでもなければ村の中に住みたいとか言わないか。
「温泉の熱を利用して調理をする施設を造るんだ。お湯を使うというより、この湯気というか、蒸気で食材を蒸すんだけどね」
温泉の配管を広場に通すように繋げると、その上部を蒸し調理台にして網やかごを載せて蓋をしておく。細かいところはアル中兄弟に任せよう。それよりも、何か期待しちゃってるネシ子に蒸し料理を提供してあげたいところ。
広場の屋台にある食材で簡単に作るとしたら……。
視線の先にあるペネロペバーガーでは、ちょうどジャガポテトをスライスしている。あれを使わせてもらうか。
「ペネロペ、そのジャガポテトとバターを持ってきてくれるかな?」
「ジャガポテトにバターですか。クロウ様、私も何を作られるのか拝見させてもらってもよろしいでしょうか」
「うん、もちろんだよ。ペネロペバーガーのセットメニューに追加しても面白いかもね」
蒸したジャガポテトに塩とバターを載せるだけ。お手軽簡単なジャガバターを堪能してもらおう。これなら、村の人たちも簡単に作れるしね。
「クロウ、バターが溶けてジャガポテトの味を高めているぞ!」
「ホクホクでしょ?」
「ホクホクじゃな」
翌日、ペネロペバーガーの新しい看板には「ドラゴンも感動のホクホクの味!」という文言が追加されていた。
2 蜂蜜とキラービー
ネシ子が毎日大型の魔物を狩ってくるので、冬の間の食生活はとても豊かなものになっている。ネシ子さまさまである。
村人たちもドラゴンと暮らす非日常の世界に慣れてきたのか、それとも子供たちと仲良くしているネシ子を微笑ましく思ったのか、あまり気にしなくなってきている。
まあ、気にしたところでどうすることもできないし、ネシ子が敵に回った瞬間にネスト村は壊滅するわけだ。考えてもどうにもならないことは考えない方がいいのだ。
それでも最近のネシ子を見ていると、矮小なる人間の生活というものを存外に楽しんでいるように思える。
「今日もハンバーガー食べてるんだね」
広場でハンバーガー片手にくつろいでいるネシ子の姿は、ネスト村の日常の一部となっている。
「ペネロペバーガーは絶品だからな。聞いたぞ、クロウ。ペネロペはお前の所の料理人らしいじゃないか」
「うん、うちの料理人だけど、屋台でハンバーガー屋さんもやってもらってるんだ」
「ずるいな。我には料理人がいない」
ドラゴンのくせに料理人を所望するとは生意気な奴だ。
「ずるいと言われてもね。夜ご飯でいいならうちで一緒に食べる?」
「い、いいのか!」
「ペネロペも一人分増えるぐらいどうってことないと思うよ。たまにローズとディアナも食べに来るし」
「それならばぜひともお願いしたい。ところで、朝はダメなのか?」
朝からドラゴンがやって来る領主の館はちょっと嫌だ。ネシ子のことだ、ペネロペの朝食が気になって日ごとに来る時間が早くなるのは目に見えている。
朝はのんびり二度寝派の僕にとってそれはとても困る。適当な言い訳をして断ろう。
「朝は錬金術師として瞑想したりするからダメだね」
「ど、どうしてもダメなのか」
「うん、魔力供給にも影響出ちゃうかもしれないし」
もちろん、そんな影響は皆無である。
「そうか。それならばしょうがないな……」
そう言いながらチラチラこっちを見ては本当に無理なのかを探っているようだが、ここは毅然とした態度で断わらせてもらう。
しかしながら相手はドラゴン。強引に行動に移されても困るので少し話題を逸らそうか。
「ところで、温泉がかなりお気に入りのようだね」
「う、うむ。朝と森から戻ってからの二回は必ず入っている。あれは体がポカポカしていいな。石鹸とシャンプーも気に入ったぞ」
温泉に入ると言い出したネシ子を普通に女風呂に入れてもいいのか。念のため女性陣に相談したところ、子供たちからネシ子の話を聞いていたらしく全然問題なしという結果だった。
また裸の付き合いとでもいうのか、村人ともグッと距離が縮まったような気がする。温泉の中では子供たちと一緒に洗い合いをしたりと、よく面倒を見てくれているらしい。
その流れは男性陣やケポク族にも広がってきていて、最近では広場で普通に会話している姿も見かけるようになってきた。
「ネシ子姉さん、うちで作ったオークまんじゅう食べるかい?」
「なんなのだ、そのオークまんじゅうとは。その白いやつか、美味いのか? どれどれ味見してやろう」
これは、ペネロペバーガーの流れを汲んだ新しいマーケティングらしく、ネシ子のお墨付きをもらうことで屋台での箔が付くという流れらしい。
屋台はここだけでなく他の居住区にもあるので、人気になると複数店舗で展開されるのだ。最近の流行りはやはりハンバーガーで、ネシ子おすすめのペネロペバーガーを真似る屋台が増えてきている。しかしながら粗挽き肉のちょうどいい割合や味付け、焼き加減などの総合力でペネロペの味には追いついていない。
ちなみにペネロペバーガーはここにしかないので、他の居住区から買いに来る人もいる人気ぶりだ。チーズバーガーもとっても美味しいんだよね。
「なるほど、この生地の中にオークの肉が包まれているのだな。刻んだオニュオンの甘さが悪くないが、食感にもうひと工夫あってもいいのではないだろうか」
「なるほど、食感ですか。柔らかくて食べやすいが、少しコリコリした食感が入ると全体としてまとまりそうですな。ネシ子姉さん、あざっす!」
「うむ、精進するように」
すっかり料理評論家としての立場を確立しつつあるネシ子。その的確なアドバイスはドラゴンのくせになかなか的を射ている。
「ねぇ、ネシ子。人型に姿を変えていると味覚とかも変わるものなの?」
「うむ、そのようだな。我も驚いているのだが、この舌は繊細な味覚がわかるようで楽しんでいる。美味しそうな食材があるなら森から採ってくるぞ」
美味しそうな食材か……。この辺境の地で今足りないものといえば、やはり甘味だろう。果物や蜂蜜、そして願わくば砂糖。
砂糖に関しては、寒いネスト村でも育てられそうなテンサイの苗をスチュアートに頼んである。これはビートの砂糖用品種で寒冷地でも問題なく育つらしい。
つまり、もう少しの辛抱で砂糖は手に入るようになる。
しかしながら、それはそれで甘味は今すぐにでも欲しい。
「甘い果物とか、蜂蜜があれば美味しいデザートが作れるんだけどな」
「蜂蜜というのは、キラービーの巣穴にある甘い蜜のことか?」
「えっ、ネシ子、蜂蜜知ってるの?」
「ああ、我が山にいた時に奴らがよく蜜を届けてくれたものだ」
貢ぎ物的なやつなのだろうか。さすがは元魔の森の王だけはある。
「それで、ネシ子は蜂蜜のお礼にキラービーに何をしてあげたの」
「いや、別に何も」
可哀想なキラービー。話が通じないドラゴンが相手では如何ともしがたい。
「そ、そう……。それで、キラービーはどの辺に棲んでいる魔物なのかな?」
「キラービーはラリバードよりも弱い。何かに寄生しながらでなければ森では生きていけぬ。我が知る限りでは、確か近場ではエルダーグリズリーに飼われていたな」
ラリバードよりも弱い魔物が魔の森に存在していたとは驚きだ。
それにしても熊に蜂蜜か。あんな凶暴なプーさんでは、みんなの人気者にはほど遠いだろう。
「どうする、奪いに行くか?」
貢ぎ物をもらっておきながら、なお、奪おうとするドラゴンが清々しいほどにジャイアンだ。
我の物は我の物。それ以外も我の物。きっとそんな感覚なのだろう。口角が上がりニヤリとしてとても楽しげだ。
「そうじゃなくてさ、キラービーはエルダーグリズリーに蜂蜜を提供して生かしてもらっているってことだよね」
「魔の森、真の最弱だからな」
「それならネスト村で引き取りたいんだけど、交渉とかできないかな?」
蜂蜜を提供してもらう代わりに彼らが必要な物を揃えよう。魔の森にいたいのは魔力が溢れる心地良い立地だからということ。
うちの錬金術師たちが同じような状況を魔力供給で再現できれば、交渉の余地はあるのではないか。
蜜を集めるのに必要な草花があるなら畑で育ててもいい。
「クイーンを誘拐すれば交渉するまでもないぞ。大量についてくるし、すぐにキラービーを産みまくるからな」
違う、そうじゃない。
「もうちょっと穏便に、お互いにメリットを共有して、持ちつ持たれつの関係を目指したいんだけどな。ほら、僕とネシ子のような関係だよ」
「クロウはキラービーとそこまでの関係を持ちたいのか……」
どこまでの関係性なのかよくわからないけど、ネスト村に招待するなら仲良くしたいものだ。
ラリバードのようなヒーリング草中毒による関係性よりもいいものにしたい。
「クイーンとは会話できるの?」
「会話はできないが、何を考えているとかは理解できる。こちらの気持ちも多少は伝わるはずだ」
「それなら、通訳をお願いできないかな」
「まあ、クロウの頼みであるなら引き受けよう」
「ありがとう、ネシ子」
そうして僕とネシ子は二人でキラービーの巣に向かって、文字通り飛んでいった。
ネシ子はドラゴンだからなのか、空を飛ぶのが好きだ。
確かにスピードも速いし目的地にもすぐに到着するのだけど、命綱なしのフライングというのはなかなか震える。
僕の場合は万が一落ちても、メガトン空気砲連射で着地できるからまだいい。ローズや疾風の射手が怖がるのは当たり前のことだろう。
「クロウは怖がらないからつまらんな」
やはりこのドラゴン、わざとやっていやがったか。
「いや、十分に怖いから。大抵の人間は高い所、苦手なの」
「まあいい。着いたぞ、あれがキラービーの巣だ」
上空から見る限り、近くにいたエルダーグリズリーはネシ子の存在を感知したのか、周辺から逃げ出している。
「キラービーはネシ子を見ても逃げないんだね」
「当たり前だろう。蟻がドラゴンを見て逃げると思うか」
なるほど。ネシ子からしたら小さすぎてご飯にもならないわけで相手にもされないということか。つまり、キラービーにとってドラゴンは異次元すぎて敵にすらならないわけだ。人もキラービーのようになりたいものだ。
しばらく様子を見ていたら、巣穴から大量のキラービーが出てきて巣穴の後ろに隠れている。そりゃまあ蟻だってドラゴンは怖いのだろう。
「あ、あれは」
「うむ、クイーンだな」
お供のキラービーを脇に従えて、三倍ぐらいの大きさのクイーンが蜂蜜を献上しようと出てきた。
それはもう何度もやってきた感じで手馴れた様子で、ゆっくりと頭を下げながら器用に手を伸ばしつつ、頭の高さよりも高く蜂蜜を掲げている。
「ネシ子、いつもこんな感じなの?」
「我の時は高確率でクイーンが出てくるな。エルダーグリズリー程度ならクイーンは出てこない」
なるほど、キラービーも相手を見て判断するらしい。
「でもちょうどいい。ネシ子、クイーンと話がしたいから通訳を頼めるかな」
「うむ、任せておけ。何から聞くのだ?」
僕が聞きたいことは、うちの村に引っ越さないかということ。安全を保証する代わりに蜂蜜を分けてほしい。ここまではエルダーグリズリーと変わらない。というより、居心地のいい魔の森から出ることを考えたらマイナスかもしれない。
そこで、ネシ子にもやっている魔力供給を巣全体に行うことと、キラービーが必要な草花を近くで育てることも約束する。
少なからず、蜜を採りに行く過程で他の魔物に襲われているはずだ。ラリバードと同様のネスト村楽園理論で勝負をかける。
危険なし、蜜吸い放題、魔力供給もあるよ!
あとは、ドラゴンが横にいるプレッシャーというのもこの話し合いにおいて優位に働いている。この話を断ろうものなら、ドラゴンが暴れ始めるかもしれないのだ。
それは、通訳を頼んでいるネシ子をチラチラと見ながら考え込んでいるクイーンを見てもあきらかだ。
「クロウ、おおむね引っ越すことで決定しそうなのだがな。何か勘違いをしているようなのだ。お前のことをダンジョンの関係者かと聞いてきたのだが、なんのことかわかるか?」
「ダンジョン?」
なぜ、ここでダンジョンの話が出てくるのだろうか。
異世界あるあるではないが、この世界にはダンジョンと呼ばれる魔物の巣窟があるらしいという知識はクロウの中にもある。
ただし、少なくともそんな物はエルドラド領にはないし、ベルファイア王国にもないはず。隣国や遠い異国でそういった物があるらしいという程度の情報しかない。
ダンジョンは効率よく素材が手に入るため、上手に付き合うことでかなり儲かると言われている。
蜂蜜クッキーでも作ろうかと軽い気持ちで来たのに、まさかの展開に僕もちょっと困惑してしまう。
クイーンが言うには、魔の森を離れて新しい場所を発見した同胞がいるらしいとのこと。
キラービーは蜜を集めるためにそれなりの距離を移動する。そうして移動する中で、他の巣の同胞ともコミュニケーションを取るのだそうだ。
話を聞く限りでは、生きるうえで必要な魔素が豊富な場所、つまりダンジョンらしき物を発見してそこへ引っ越しをしたキラービーがいたということか。
「なるほど、それで引っ越し先がダンジョンだと思ったのか」
「普通に考えて、人間が魔物に魔力供給するわけないからな。それだけ錬金術はとんでもないスキルなのだよ」
魔物に魔力供給とか、普通の人はしないと思うからね。
「それにしてもダンジョンか……。ネシ子、キラービーたちはダンジョンの場所を知っているのかな」
クイーンに身振り手振りで通訳しているネシ子を見ると本当に会話が成り立っているのか不安になるところだが、そこまで大きな行き違いもないようにも思える。
「知らないと言っている。まあ、興味がなかったのだろう。今度その同胞に会うことがあれば聞いてみるそうだ」
ダンジョンがエルドラド領に発生した可能性があるということか。これはマイダディの判断どころの話ではない。完全にベルファイア王国の案件になるだろう。
ダンジョンからもたらされる素材は、国力を大きく向上させる可能性がある。もしも本当にエルドラド領にダンジョンが発見されたのであれば、ローゼンベルク公爵派はかなり勢いに乗りそうな情勢と見ていい。
とはいえ、まだダンジョンが発見されたわけではない。ここはキラービーからの報告を待ちながら、その可能性があるということだけ伝えておけばいいか。
「それにしても、ダンジョンの外から魔物が引っ越しするなんてことがあるんだね」
「すべては魔素が要因であろう。我もそうだが、魔物は魔素の濃い場所を好む。そして、魔素の多い場所というのはそう多くないのだ。居心地のよい場所であるならダンジョンにも行くであろう」
引っ越し難民であるネシ子の言葉だけに重い気がする。
魔物が集まる場所には理由があるということか。魔物も魔物でいろいろと大変なのかもしれない。
「えーっと、それで、引っ越しはしてくれるんだよね」
「うむ、問題ないそうだ。ただ、念のためにその魔力供給とやらを見せてほしいそうだ」
「ああ、それはそうだよね。了解したよ。錬成、魔力供給!」
最近では毎日ネシ子にやっている魔力供給だけど、クイーンを中心に巣穴も含めて魔力を渡してあげた。
心なしか、キラービーがブルブルと震えながら元気に飛んでいるような気がしないでもない。
「すごいすごいと騒いでおるな。これをどのぐらいの頻度でやってもらえるのかだと? クロウ以外にも錬金術師は大勢いる。これぐらい毎日やれるだろう、なぁ、クロウ」
「うん、このぐらいなら毎日でも問題ないかな」
ネシ子には僕の魔力が半分持っていかれるが、さっき渡した魔力は僕の魔力量からしても数パーセント程度のもの。これぐらいなら全然問題ないし、他の錬金術師たちに任せて大丈夫なレベルだ。
よほど嬉しいのか、頼んでもいないのに追加の蜂蜜を持ってこさせようと指示をしているクイーン。
いや、これからネスト村に引っ越しするんだから、別にここで渡さなくてもいいんだよ。
「クロウ、食べてみるといい。ここのキラービーの蜜はとても味が濃いんだ。確か果物系の花の蜜を中心に集めているはずだぞ」
「んー、甘くて濃いね。ん、果物? ネシ子、今、果物と言ったのかな?」
「お、おう。果物だ。甘い果実のなる花だな」
ネスト村にないけど欲しい物ランキングの上位に来る果実の樹。みずみずしく甘くて美味しい果物。その果物が近くにあるのか?
「ネシ子、クイーンにその果物の生えている場所を教えてほしいと伝えてくれないか。ネスト村でもその果物を育てたい。ネスト村で蜜を集められたら安全でしょ? ねぇ、何種類あるのかな?」
「ちょ、ちょっと落ち着け、クロウ。お前が果実に前のめりなのはよくわかったが、今はキラービーの引っ越しが優先だろう。蜜を集める場所など、あとでいくらでも聞けばいい」
「そ、そうだね。急に甘味が目の前に広がり出して興奮してしまったよ」
そういえば、勢いでここまで来てしまったけど、ネスト村の人たちに魔物を連れてくることを言ってなかったな。
まあでもラリバードの時もなんとかなったし、ドラゴンがいる今、特に反対されることもないか。
考えるとしたら住む場所ぐらいかな。子供たちが近寄るような場所にはあまり巣を作らせない方がいいだろう。
邪魔にならない場所というなら、高くそびえ立つネシ子の塔がある。塔に巣を付ければ子供たちも迂闊に手を出せないし、キラービーたちも安心ではないだろうか。
「我が塔はダメだぞ」
「えっ、何も言ってないのになんで?」
「クロウの目がそう物語っていた気がする」
「僕の目は物語ったりしないよ」
ちっ、先手を打たれてしまったか。ネシ子、ちょろい系のドラゴンかと思っていたら意外と鋭いじゃないか。
まあ、これから樹木を育てることを考えれば畑エリアになるのかな……。ラリバードと喧嘩にならなければいいんだけどね。
「クイーン、君たちはラリバードと仲が悪かったりする?」
「うーん、火を噴くオスは嫌いらしいぞ。あとは、ヒーリング草の花が咲く時期はたまに喧嘩することもあるらしいな」
魔の森のラリバードとは比べ物にならないぐらいに大人しいから大丈夫だとは思うけど、少し離した方がいいかもしれないね。
「わかった、君たちが過ごしやすいように家を建てるから、好みの条件とか教えてもらえるかな」
こうして、畑エリアを拡張してキラービーの家を造ることになった。
このキラービーだけど、ネスト村の一員となることで、蜜を集めるだけでなく周辺の情報収集に活用できるようになり、領都バーズガーデンとの手紙のやりとりなんかも協力してくれるようになる。伝書鳩ならぬ伝書キラービーの誕生だ。
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