王子に嫌われたい!

ひとみん

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「単刀直入にお尋ねしますわ。この子達はこの院の子供ですか?」
私の問いに対する答えは、当然のことながらYESかNOしかない。
「いいえ!私の院ではその様な汚れた服は与えておりません。子供らが自立するまで我が子の様に育てることをモットーとしておりますので」
そうきたか・・・万が一の事を考えると、こう答えておいた方が、安全だもんね。
「まぁ、そうですの?では、他の院なのかもしれませんわね。ここは、たまたま近かったので私共が直接確認させていただきましたけれど」
「そうでしたか」
私が何も知らないと思いこみ、いや、例え知っていたとしても彼はそう答えていただろう。
伯爵の顔が、益々気持ち悪い笑みを深くしていく。
だけれど、それを封じ込める様に、私はガラリと雰囲気を変えた。
「私、許せませんのよ。この国の未来を担う子供達をこの様に扱うなど・・・まるで虐待ですわ」
「そ、そうですね。考えられない事です!」
伯爵は、私が語気鋭く言い放つと少々面喰ったように、だけれどまるで波に乗るかのように、調子の良い事を言い始めた。
「我が院では考えられない事です!あぁ、なんて気の毒なのでしょう」
流れてもいない涙をぬぐう様に、目じりにハンカチを当てている・・・・あぁ、反吐が出そうよ。この、狸親父がっ!
「もしよろしければ、私共で子供達をお預かりいたしましょうか?」
きたか・・・と私は内心ほくそ笑む。

「いいえ、結構です」

即答した私に、伯爵と管理人は驚きに表情を一瞬、凶悪なものへと変化させたがすぐさまひっこめ、ただただ単純に驚いているという表情を浮かべた。
此処で私がどんな答えを出そうとも、彼等がとる行動は、ただ一つ。なんとしても手元に子供等を取り戻すことだ。
「では、元の院へとお返しに?」
「まさか。私が引き取りますのでご安心を」
そう返せば、彼等は豆鉄砲でも食らったような間抜けな顔をした。
「貴女様が、引き取られる、と?」
「えぇ、私の養子として、私が育てますわ。大体、虐待まがいの院に返すはずありませんでしょう?」
そう言うと、私は立ち上がり「お時間を取らせ申し訳ありませんでした」と礼をし、子供達を立たせた。
それに焦ったのは伯爵だ。管理人に目配せすると、彼は慌てたように部屋を出て行った。
恐らく、用心棒を呼びに行ったのだろう。
伯爵は私たちを引き留めようと必死に話しかけてくる。
きっぱりそれを拒絶し部屋を出て、そして玄関へと向かうと、ホールの真ん中にそれを阻止しようと管理人と残っていた用心棒が立っていた。
「申し訳ありませんが、あなた方をこの院から出すわけにはいきません」
伯爵が先ほどの腰が低い雰囲気もそのままに、厭らしく笑って背後に立った。
「それは、何故です?」
私がわざとらしく聞けば彼は両手を広げ、のけぞる様に叫んだ。
「それは、この子等がうちの院の子だからですよ!それをばらされては困りますからね!」
「・・・・・・そんな事、初めから知ってましたけど」
私は、絵に描いた様な悪人の常套句に呆れたように返せば、彼は驚きつつも「貴女は馬鹿ですか?」と言われたから「馬鹿はあんたでしょ」と、思わず素で返してしまった。
「うちらはあんたと違って、色んな状況に対応できるよう、最善の結果になるよう行動してるんだけど」
もう、お嬢様ぶるのは止めて嫌悪感丸出しで返せば、伯爵はギョッとした表情をしたがすぐに不敵な笑みを浮かべた。
「最善の結果だって?お前たちはここから出る事は出来ないのだから、無駄な事だ」
「それはどうかなぁ。私たちにしてみれば、とても簡単な事だけど」
私がそう言えば、これまで一言も言葉を発していなかった、アリオスとリズが私と子供を挟む様に立った。
男が一人いるとはいえ優男っぽく見えるアリオスを倒してしまえば、後は女子供のみ。奴らは、完全に私らをナメてかかっていた。

だけど、それは一瞬で終わってしまった。
私らの世界でいえば・・・そうね、漫画に例えると正に『ぺっ』と弾き返され、折り重なる様に倒れているような、感じ?
それをアリオスではなくリズが一瞬でやっちゃったんだから、伯爵の顔ったら見事なまでに青くなってたわ。
伯爵があわあわしていると玄関の扉が開き、逆光で顔が見えなかったんだけど男がヌッと入ってきた。
「あぁ!お前たち!!遅かったじゃないか!早くこいつ等を・・・・」
と、用心棒達が帰って来たのだと思い、勝ち誇ったような顔でそこまで言いかけたけど、途中で言葉が途切れサッと顔色が変わる。
ドサッっという、重い何かが落ちる音が何回か続き、その音に伯爵の顔は白くなっていった。
そして玄関ホールには、ボコられたむさい男六人が積み上げられた。
「ルイ、ご苦労だった」
アリオスがねぎらいの言葉を掛けるとルイは「いいえ、鍛錬にもなりませんでしたよ」と笑った。


積み上げられた部下の前に膝をつき、悲壮な顔をしている伯爵にアリオスは「フレデリック伯爵、貴方を役所へ連行します」と、感情のこもらない声で告げた。
一瞬、悲壮な顔をしたものの、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「俺を捕まえた所で、罪を問う事はできんよ。お前らの様な下級貴族と伯爵の地位を持つ俺と・・・皆はどちらの言葉を信じるだろうな」
「・・・・それって、地位が高ければ高いほど、白いものを黒って言っても皆が信じるってことよね?」
私は確認するようにリズを見れば、「まぁ、直訳すれば・・・ですね」と、不快そうに返した。
「なら、有罪決定じゃない」
私は「ぱんっ」と手を叩き、満面の笑みで答えれば、伯爵は白かった顔を今度は真っ赤にして「平民風情がっ、何を!!」と噛みついてきたけど・・・
「だって、この中での最高権力者って・・・・」
と私が言えば、伯爵と子供達以外は一斉にアリオスを見た。
当然、伯爵は訳が分からないといった顔をしている。
「アリオス、魔法解かないと」
魔法で姿を変えている彼は、何処からどう見てもイケメン一般市民だ。
そんな彼を皆が凝視しているのだから、何も知らない伯爵は怪訝な顔をして当然。
「あぁ、わかった」
そう言って、パチンと指を鳴らせば、ハシバミ色だった髪の色は光り輝く銀髪に。茶色だった目の色はアメジストへと、本来の姿へと戻っていった。
「お前の様な犯罪者でも、我等の顔くらいは知っているだろう?」
何の地位も権力もない優男だと思っていた人物が、ふたを開けてみればこの国の王子だったとは。
その傍に立つのは、これまた変化の魔法を解いた金髪碧眼のリズ。
この国の王族で、アリオスとリゾレットは別格に人気があり、顔を知らない人はいない。
伯爵は驚きすぎて、正に放心状態。
そんな彼等はルイの部下に引きずられる様に連行されて行った。
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