【SS】ファンタジー編

③怪盗

　30歳童貞の裕斗は、今まで生きてきた中で、一度もお付き合いしたことはなく、出会い系アプリを使ったり、お見合いをしたりもしたが上手くはいかなかった。

　どんな手段でもいいから、竿を一度くらいは使用したいと思っていた。
　が、風俗に行く勇気は無かったので、AVでよく見る公園の公衆トイレにやってきた。
　ここでは、男と女が交わるポイントとして有名らしく、裕斗は体を余すとこなく綺麗にし、公衆トイレへやってきた。
　
　…気づいたら、3時間が経過していた。

　もう諦めるしかないのか。
　ふと、横を見ると、トイレの壁に書かれている文字に目を引くものがあった。
　そこには、こう書かれていた。

『何でもとります！プロの怪盗にお任せあれ！！お財布はもちろん、高級鞄に指輪、カブトムシまで何でもとります！欲しいものがある人はここに連絡を！090…』

「カブトムシ？虫かごからも取れるってこと？……って、今はそんなのどうでもいい」

　裕斗は、もちろん卒業させて欲しいけど、まずは女性とお付き合いをして、デートして結婚して子供と家族幸せに暮らしたい。
　そんな日を夢見て連絡した。

『いきなり飛び出て、パンパカパーン！』

　裕斗は勢いで手を差し出し頭を下げ、言ってしまった。

「俺の心を奪ってください！」

『……』

「ダメか？」

『良いですよ』

　野太い声だった。

「お、男ー！？」

　その日から怪盗は毎日裕斗の前に現れ、裕斗の心を奪ったのだった。