毎日の不思議

美亜野

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若い頃って

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私は、昭和40年に当時日本電電公社(現在はNTT)が初めて中卒を採用した年に採用され管内で5名の中の1人として運用課(電話交換室)に配属された。
三公社五現業と言って、順公務員並みの扱いをされていた時だ。その後国鉄が民間企業となり、その後NTTも民間に移動したと記憶が有るが今となってはあやふやである。当時高校に行ける成績を持って居ても家庭の事情で断念した私にはまぁ、納得のいける就職先だったの。
   でも歳はまだ15歳子供だ。入って3ヶ月の研修が終わった頃総務課にいた30位のおじ様に淡い恋心を抱いた。とても優しい方だった。しなきゃ良いのに私、その方に好きだと告白しちゃったのね。今考えれば初恋。でも恥も外聞も考えず突進したの。返って来た返事は「NOKKOちゃんは僕の妹だと思っているんだよ。」だったの。当たり前だよね。敢え無く初めての失恋を経験したの。それからいい人だ、がすぐ恋に繋がらないよう気をつけて若さを満喫してた。
 ある日通勤のバスに乗ろうとステップに足を上げた時5センチのハイヒールがスポッと脱げた。その頃大人ぶりたくて背伸びしてたからね。そしたら後ろの中年のおじ様が「お嬢様お靴をどうぞ。」とあろう事か履かせてくれたの。勿論お礼は言ったわよ。でも内心・ 私が綺麗だから親切にしてくれたんだわ・と勘違いも甚だしい捉え方をしちゃって、それからは自分の容姿を凄く意識した。夜勤の帰りのバスって外が暗いから窓に自分の顔が映るじゃない。それが綺麗に見えて仕方ないの。そんなある日局の食堂でお昼していた時に隣にかっこいい人が座ってるのは知っていたの。私は納豆のカラシの袋破くのに苦労しててそれがカラシ、ピュっと飛んでその方の作業着に。「ごめんなさい。」と謝ったら「いいよこのくらい大丈夫。」と言ってニコニコしてる。当然また私が綺麗だからと勘違いに拍車をかけてしてしまったのね。それからもバスでの足の組み方も身体の位置も意識して有頂天だったわよ。ほんとに馬鹿な話しよね。それが打ち砕かれたのはやはり朝のバスの中。その日は風邪をひいてたの。でも咳が出る訳でもなくただ少しだるいだけだったので仕事行ったのね。仕事が面白くなって休みたく無かったのもあったの。
バスは混み有って立っていた。人いきれで体が温まってくると、途端に咳が出始め、手で覆ってたのだけど大きな咳が出た時これがまた恥ずかしくも担が座ってる前の青年の方に飛んでしまった。当然平謝りしたわよ。ハンカチを出して。それでも許して貰えると思っていた私。でもそしたら「いい加減にしてくれよ!気持ち悪い!」と怪訝な顔をしてたわ。当たり前よね。高くなっていた鼻がポキんと折れた音が胸の中に聞こえてきたの。
それだって2、3日もすれば忘れ去る。過剰なモテると思い込みの年月は3年位続いたかな。昭和44年、仕事しながら構内交換機手の国家試験を受けて一般会社の交換手が出来る様になると渋谷の搬送通信部に転勤になった。
各局を司る部門のところでそこの施設の電話交換手である。男の人が大半で19歳の私はとても優しくされた。その頃になると勘違いのモテモテ感は消えて居たが自分は綺麗だと言う意識はちょぴっとあったわね。通勤手段もバスから電車になって毎朝同じ電車に乗り高田馬場で乗り換え渋谷まで。その乗り換えまでの間、同じ車両にいつも乗り込んでくる若い人がいたの。毎日。
チラチラ見ていたのは感じていたの。
私が今の父ちゃんと前の局で知り合って結婚が決まっていた、そんな時です。ある日その方が話しかけて来た。
「不躾でごめんなさい。」ビックリして顔を見ると「僕転勤でこの電車今日が最後なんです。」「だから思い切って言います。良かったら付き合って頂きたくて。」私はやはりと思い、コレぞとばかり「ごめんなさい。私には婚約者がいるの。」それを聞いてその方は酷く肩を落として引き下がって行った。だから結婚をしてからもその自分に対する思いが暫く続いてたわ。電電公社が初めてのケースで中卒を採用したが若さゆえ続かず、問題も起こした人も居て、その後の中卒の採用は無かった。私は電電公社のお陰で63歳まで現役の電話交換手を続けて来れた。今思えば私にはラッキーだったと採用してくれた公社に感謝してます。今しっかりそんな歳のおばさんとなって孫もいる。そんな若い頃の感情は何処にも無くなって、つくづく振り返って見ると若い頃の時の事は顔が赤くなる程恥ずかしい事が多かったと思い起こしてます。でもね若いってそう言う物。無ければ人生振り返って虚しい。
当時ほんとは人の目に自分がどう見えていたのか。今となっては知る由もないのだが、孫娘が今あの頃の私の年齢となっている。大いに勘違いして欲しい。でも自分を大切にする事と人を悲しませる事だけはしないと知って居て欲しいものです。

 

           それじゃまたね
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