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第十六話

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私は頭が真っ白になった。

目の前のテレビの中の光景が、とても信じられない。

どう言う事なのだろう。

そんな混乱している私を他所に、アルデーレおじさんはハッハッハッと豪快に笑っている。

「そもそも今までのステラお嬢様に関するニュースはどれも嘘だらけです。」

立て続けにレオルド伯爵はそうきっぱりと言った。

「ちょっと、何を言ってるの!?」

継母が慌ててレオルド伯爵を止めようとするが、運動神経抜群のレオルド伯爵が継母に捕まるはずもない。

「いいんですか?公爵夫人、テレビの前でこの様な事をして。」

それを言われると、しゅんと継母は一気に大人しくなった。

そこからはレオルド伯爵の独断場だった。

「まず今までのステラお嬢様の我が儘っぷりですが、何一つ事実ではありません。それどころか、お嬢様は下の妹たちに虐められていました。」

そう言ってレオルドはとある本をテレビに映る様に見せた。

「あ、あれは…!?」

それはまさしく、私が虐められた証拠品の本であった。

見間違えるはずがない。

まだ普及したてのテレビは白黒で画質も悪いが、レオルド伯爵はそれでもちゃんとテレビに映る様に私の本をカメラに近づける。
そのお陰で私の本はアップで映し出された。

少し見えづらいが、ハッキリと妹達の落書きが映っている。

「え?何故?何でレオルド伯爵があの本を!?」

すると隣でクックッとアルデーレおじさんが笑う。

「まさか、アルデーレおじさん!?」

「まあ、俺にしか出来ないだろうな。」

私は目を丸くしてアルデーレおじさんを見る。

一体何がどうなっているのか?

「まあまあ、テレビはまだ続いているぜ?」

今度は公爵がテレビの方を止めようとしたが、こちらもテレビ会社の人に止められていた。

テレビ会社としては、公爵よりも特大スクープの方を優先させたのだろう。

奥で父の「止めろ!誰かカメラを止めろ!」と叫んでる声がなんとも滑稽だ。


「この本を見て分かる通り、ステラお嬢様は虐めを受けていました。
この破かれたドレスも、気に入らないから破いたのではなく、妹たちの手によって破かれたものです。」

こうして、私の証拠品はまざまざとテレビに見せつけられる。


「それと、ステラお嬢様は、ドレッド伯爵に物として売られる予定でした。
いわゆる人身売買です。」


そこで私は衝撃的な事実を知る。

売られる?物として?

するとレオルド伯爵の左隣から急にドレッド伯爵まで飛び出してきた。

「お前、何をふざけたことを言ってるんだ!」

ドレッド伯爵は顔を真っ赤にしてレオルド伯爵の胸ぐらを掴む。

「おや、ではこれは何でしょうか?」

そう言ってレオルド伯爵は服の内側から何かを取り出した。

テレビに映ったそれは、100万ペルで私を譲渡するという誓約書だった。

「な、何故お前がそれを!?」
そうドレッド伯爵は自身の服の内側を必死に探る。

すると、ドレッド伯爵も何か紙を取り出した。

「え?ある?」

その紙をすかさずパシッとレオルド伯爵は奪った。

「成る程、こちらが本物でしたか。
すみません、こちらは偽物だったので。」

レオルド伯爵は世の女性全てを虜にしてしまいそうなほど甘く微笑みながら、高々と奪った紙をカメラに突きつけた。
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