幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

こいつが哀れなレジスタンスを都市区画ごと木っ端みじんに吹き飛ばした時なんかに絶頂を覚えるわけよ

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 朝起きて手を洗ってシャワー浴びてなじみを解放すると、彼女は物凄くキラキラした瞳でまくし立てた。

「ケーくんケーくん! 私ね、最初は物凄く不安で怖かったの。だって視界は利かないし体動かせないしケーくんはなんか音立てないし。だからこのまま私どこかに運ばれて捨てられちゃうのかなって凄く不安だったの。でもねでもね、段々ケーくんを感じれるようになったの! 殺した足音も私を見つめる視線もご飯作る時の体の動きもドンドンわかっていくようになった! 潰れてなくなった視界の分だけケーくんが私の中を満たしていくみたいで凄く幸せだった! それに私に餌をくれたでしょ? 私の命の全部をケーくんが支配してるあの時の充実感はケーくん以外からじゃ絶対得られない! 全世界の女王になるよりケーくんの奴隷になる方が絶対に嬉しい! 『ああ、私ケーくんのペットなんだ』って実感しちゃったもん! 間違えて犬用の首輪買ってきちゃって正解だったかもしれないね。だってあの時首輪なんてされてたら本当に動物になってたかも。人語すら忘れてケーくんから下賜される餌で、ケーくんに与えられる命でしか生きられない本当の愛玩動物に。でも本当にそうなっちゃったら駄目だよね。だってケーくんは私をお嫁さんにしたいんだもんね。一時的にケーくんの愛玩動物になるのはまだしも本当のケダモノになったらお嫁さんになれないもんね。というかお嫁さんじゃなくなったらケーくんの意向を無視するゴミ以下の存在になっちゃう。きっと一日中ケーくんにくっつて離れない。けどそれってお嫁さんの本質じゃないよね。支えるのが大切なのであって甘えるのはお門違いって感じ。でもでも私がペットになりたくないのかって言われると、本当のところを言えばなりたいんだけどね。だから理想としては『お嫁さんみたいな振る舞いを調教で覚えさせられたペット』ぐらいのところかなぁ。そうすればケーくんがして欲しいお嫁さんとしての行動を全部網羅できるし、私もペット状態で幸せだし。ああでもケーくんのこと考えないで自分の幸せだけ追い求めるなんて二酸化炭素を排出量を減らすために死ぬのがお似合いな存在じゃん。やっぱりずっとずっとずっとケーくんの事だけ考えて、一緒に幸せになること重視が一番だよね。ケーくんはどう思う? 私ってお嫁さんとペット、何対何ぐらいの割合が一番かな?」
「7:3ぐらいかな」

 まくし立てた言葉は全部聞いていたので受け答えに問題はない。
 息継ぎが3回しかなかったからそっちの方が心配なくらいだ。

「まあその辺の割合は学校の後に考えるとして、そろそろシャワー浴びないと不味いぞ」
「あっ、もうこんな時間」

 あの独白みたいな語りの所為で時間を削られたが、遅刻確定という程じゃない。そんなに遠くもないし。
 しかしてシャワーは浴びないといけないので余裕があるという程でもない。ましてなじみは長風呂派だ。

 かくて泡を食ったように風呂場へ移動するなじみを横目に、二人の制服を揃えておくのだった。



 さてそんな慌ただしい木曜日を乗り越え、ついでに金土も通り過ぎての日曜日。

 超能力の修練という些か以上に口外できない予定を消化するべく、俺はウェアを着て部屋を出ていた。
 とはいえここからどうやればあの場所に行けるのか全く分からない。そもそもあの場所がどこにあるのかも、日本であるかすら分からない。

 待ち合わせ場所を決めないで内容だけを決めて行う約束にいかほどの拘束力があろうか。

「まあ、そんなわけで今回も私が運ぶわけです」
「よろしく、とか言っといた方が?」
「言っときなさい」
「よろしくお願いします」
「素直でよろしい」

 運び屋、テレポーター、島崎=サンのエントリーだッ。

 そんなわけで島崎さんの超能力を頼りに例の場所まで運ばれる。
 しかし運ばれた先のここが本当に前回と同じ場所であるかは不明だ。やはり得体のしれない連中である。あとで塩でも撒いておいた方が良いだろうか。

「じゃあ夜狐さん、後はよろしくお願いしますね」
「はいな、任された」

 そう言って島崎さんは去った。
 やっぱりパシリ的に扱われている気がする。

「じゃあついてきて」
「ああ・・・」

 夜狐の後ろをついていく。

「さてと、とりあえず君には超能力者の基本について教えないとね」

 そう言って開いた扉の先には。

「なんだこれ」
「なにって、80㎝列車砲ドーラだよ」

 規格外としか表現できないほど巨大な大砲が鎮座していた。

 夜狐曰く。
 列車砲というのはその名の通り、列車に積み込む設計の大砲であり、80㎝なんてふざけた口径からも分かる通り砲としてはとにかく巨大。運搬可能な超巨大砲という事で第一、第二次世界大戦で活躍したが、技術の発展とともに衰退。巨砲を搭載しながらも線路のない部分でも走破出来る自走砲や超長射程のミサイルなどにとってかわられた。
 その衰退の最中、一基買い上げたのがこの組織とのこと。

 型落ちとはいえ軍事設備を買い上げられる事実に少々眩暈を覚えた。

 しかし疑問が残る。

「その、どーら? とやらが何かは分かった。しかし一番の疑問点は、だ。なんでそんな代物がここにあるんだ?」
「なあに、ちょっとした実践だよ」

 夜狐は軽やかに言ってから少し手を挙げる。
 すると列車砲の砲口が夜狐の方に向けられたではないか。
 超能力者としての感性を養いつつある俺には、その移動が夜狐のサイコキネシスで行われている事を理解した。姉さんの部屋の窓の鍵を閉めるときに、俺が使ったのと同じ様に。

 超能力者の基本って・・・。

「ファイエル!」

 可愛らしいハイトーンボイスの宣言が列車砲に伝わってか、あるいはサイコキネシスで点火したのか。
 舞台裏を知り得ぬ俺にそんな事わかるはずもなく、80㎝のふざけた砲撃は放たれた。

 空間を歪めるような爆音が鳴り響き、空気の壁を引き千切って榴弾が飛翔する。

 勢いそのまま夜狐の眉間に命中。
 頭と言わず全身が木っ端みじんになりそうな砲撃を夜狐は受けた。

 だが、無傷。

 榴弾は衝撃波だけで周囲の何もかもをズタボロにして、夜狐の足元に落ちた。
 その額には、青あざすら無い。

「とまあ、このように」

 何でもないかのように夜狐は話し始めるが、俺は開いた口が塞がらなかった。

「超能力者なら物理現象の影響はほぼ、無効化できる。さっきドーラを動かしたでしょ? その時の念力で全身にバリアを張る・・・いや、君には強化状態になる、の方がわかりやすいか。ともかく、そうするとこれぐらいの兵器はでもないんだよねー」

 朗々とした語りは何度も繰り返してきたかのように小慣れていて、その度に俺の様な反応を見てきたかのように動じていなかった。

「ともかく、超能力者は全員が基本能力として念力を持つ。その上で個々人の超能力もあるわけだ。で、この基本能力ってのを磨くと個々人の能力の精度も上がるわけ。だから今日は徹底的に『基本』を叩き込んでいってあげよう」

 ふと疑問に思ったが、このズタズタの地下空間は誰が補修するのだろうか。

「感謝してくれよ? 私がつきっきりで超能力の面倒を見るなんて渡辺君にもしてなかったんだから」
「なんでまた?」
「上役は色々と仕事が多いのさ。今日やるのは単に仕事のスキマだからだね」
「一日でできるもんなんですかねえ・・・?」
「さてね。そこは君の才覚次第さ。まあ、習わずに体外強化してたって聞いたし、後は自習ってぐらいの所までは行けるんじゃないかい?」
「そりゃ結構なことで」
「ああそれと」

 夜狐は俺に右手を向けて。

「私は物事を教えるときは厳しくいくんだ。短期間で覚えるには、そうしないと時間が足りないからね」
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