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第6章 運命の時は近い
199話 救出作戦 ~ 運命
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「どうなってイる……敵は一体何者なんだ」
「有り得ねぇ。確かにそう難しい技術じゃあないが、黒雷型に搭載するとなれば話は別だ」
「えぇ。人型兵器への搭載は制御が難しくて採用を見送っていたのに」
兵器に関する知識を持つタケル、イスルギ、そしてルミナまでもがその事実に驚きを隠さない。事情に詳しい彼等は事の重大さをよく理解している。
黒雷への念力含む戦技の搭載は未だ持って成功していない。そんな技術は何処にも存在しない。そう、存在する訳がない。監視者が妨害しているのだから。大型兵器の戦闘能力を飛躍的に向上させる戦闘技術の搭載を許可すればどうなるかなど火を見るよりも明らか。黒雷を兵器運用する惑星の戦力は大幅に増大、更にテロリストが強奪し市井に向ければ甚大な被害をもたらすだろう。
……なのに、存在しない技術が姿を見せた。連合標準時刻、火の節86日。あの日、あの時、アレを見た私の中に生まれた言い知れぬ不安はもう1人では抱えきれない程に肥大化している。
「えーと、まだもう一個あるんだが……どうする?」
申し訳なさそうなアックスの声に周囲はハッと我に返った。纏まらない思考と揺れ動く視線は、幸か不幸か事態を呑み込めない男が語る次の情報へと自然に吸い寄せられる。
「これ以上の情報か?」
「いや、ソコまでかどうかは分からんのだが……」
「我々が知らなイ情報ならば全て有益と判断して貰って構わなイ。提供された情報は何れも頭が痛くなる内容だったが、知らなかったよりはマシだ」
「ありがとよ、男に褒められても嬉しかないがね。最後は姫様の力だ。だが、これはタダの予測で間違っているかも知れない」
「運命傅く幸運の星、か」
ルミナがそう零すと全員が黙り、アックスの言葉を待つ。
運命傅く幸運の星。連合に生きる人間ならば恐らく知らぬ者はいないが、しかしその一方で誰も真の意味を知らないという何とも奇妙で不思議な言葉でもある。それは歴代の姫が行使する特殊な能力を指す言葉であり、彼女達を象徴する言葉でもある。運命を思いのままに変える、運命さえ逆らえない、故に運命を傅かせる、と。
「確証はないが、恐らく姫様の力は"望めば自らに都合の良い事態が起こる、あるいはそういう風に因果を書き換える"類の能力だと思う。俺は少なくとも二度その有様を目にした。一度目は姫様の所持品のネックレスを賭けたギャンブルで、もう一度はナギが姫様とファイヤーウッドから逃げる時。どっちも、本当にそうとしか思えない事が起きた」
曖昧と、そう前置きし居たアックスは過去に見た信じ難い事実から導き出した星の力をこう結論した。"因果を無視する力"。予測が正しいならば人が抗える代物ではない。誰もが驚愕、あるいは更に混乱の色を深める。
「現実改変……いやしかしその前にギャンブル?年端の行かない子供とか?」
「アナタ、性格良いのか悪いのかはっきりして貰えます?」
が、ルミナと白川水希の反応は周囲とは違った。姫様と賭けを行ったと言う言葉に2人の視線は当事者へと向かう。仲良くアックスを睨む視線は鋭く、冷たく、それ以上に明確な侮蔑が籠る。
「ちょい待ち!!最初はナギと始めてたのに、いきなり姫様が自分がやるって言いだしたんだぞ!?」
「だからと言って」
「その行為に問題が無いとは言えません」
どう取り繕おうがやはり少女との賭け事という響きの印象は最悪に近い。ルミナと白川水希の視線に混ざる冷えた感情を肌で感じ取ったいい歳した男は盛大に狼狽え取り乱しながら……
「いやぁ。そりゃさ、危険な場所をうろついてたから警告がてらちょっと脅そうと思ってたのは確かだが、しかしまさかイカサマ使って完敗するとは思わなかったんだって!!」
そんな言い訳を並べ立てる。確かにこの男の言い分は正しいのだが、しかしファイヤーウッドでならば許された真似もココではタダの違法行為でしかなく。
「分かった……君の言葉を借りればそれも過ぎてしまった事だ。その過去から姫の能力を推測出来た事実に変わりはない」
これ以上理由を聞く時間はないと、そう判断したルミナは強引に話を切り上げた。
「だろ?だろ?」
「ハァ……でもツクヨミも行動を共にしていたなら恐らく勝つか引き分けていたでしょうけど。ですが、ちょっと不味くないですか?」
「確かに。星の力が因果を無視するならば、もし姫が現状を望めば俺達に勝ち目はなイ」
「ウーム、あり得ない話ではないだろうな。現にその姫様の能力はその重要性、そしてそれ以上に一族の一子にしか受け継がれない貴重性から守護者達によって完全に秘匿され続けてきた。そこの坊主が予想した力で間違いないならば確かに隠したくもなろうがなぁ……」
正に最悪。タケルの予測は間違いなく、姫が現状維持を星に願ったと仮定すれば私もルミナ達も成す術なく敗北する。勝てるかどうかわからないという状況ならば足掻く選択肢もあっただろうが、完全敗北を突きつけられた状況で同じ選択を下せる人間がどれだけいようか。事実、用心棒達の顔からは一様に血の気が引いている。真っ当な神経をした、ごく普通の人間が見せる反応だ。
「姫の御力について、スサノヲの誰も何も知らないのですか?」
遮るようにルミナがイスルギに尋ねた。
「ン?あぁ、ワシでさえ今この場で知った位だ。それに姫様の存在自体も大仰に隠されているだろう?昔はそれ程でも無かったらしいんだがなぁ」
「確かに、異様な程に姫の素性は隠されてイるな」
「今、現時点において姫様の御姿を知る者は守護者を除けばアックスやルミナを含む極僅か。無論、今の警護体制ではばあり得ない。公に姿を見せるのは婚姻の儀が終わった後からなんだよ。だからそれまでは容姿含めた一切の情報は極秘扱いとされる。しかし、それは一般に限った話でワシ等やザルヴァートル財団総帥など限られた人間の前には婚姻前であれ姿を見せていたそうなんだ」
「イスルギさん、厳しくなり始めたのは何時頃か覚えておられますか?」
「明確な日付までは……だが、ワシ等の代辺りから急に厳しくなり始めたってのは確かだ。何故かは、スマンが分からん」
話題は姫の力から自然と姫そのものへと移る。連合の頂点たる姫は、その重要性故に姿や名前を含めた一切を秘匿されているのは連合の誰もがよく知る話。但し、過剰ともいえる程に厳重な体制となったのはつい最近。何故そうなったのか、その理由は守護者が完全に伏せているらしく予測さえ困難な有様。白川水希からの問いに対しても曖昧な回答しか寄越せないイスルギの態度がソレを証明している。
「理由は恐らく暗殺の阻止が目的では?でも、変ですよね?」
暗殺。ルミナは現状で最も高い可能性に言及した。より正確にはこれ以外に考えられない、という程に真っ当な回答だ。しかし……
「確かにな」
「うぅむ」
「違和感はありますね」
アックスを除く3人は暗殺という結論の最後に結んだ"変"という感想に同調した。私も同感だ。
「え?何かおかしいか?」
只一人、事態を呑み込めないアックスが素っ頓狂な声を上げ会話を止めた。誰もが彼をジッと見つめると、彼は照れくさそうに笑いながら"そんな見つめても何も出ねぇよ?"と茶化す。
「ハァ……アナタ本当にマイペースですね」
あの男なりに場を和ませようとしたのか。それとも本心なのか分からないが、しかしその態度に呆れたミズキが大きな溜息をつく。
「姫と行動を共にした君ならば予想がつイているのではなイか?もしその力が本当だとすれば、態々秘匿する理由も守護者が護衛に就く理由もなイ」
「あぁ、いや……すまんね。分かってる、分かってるよ。でもさ、だからって年端の行かない少女を1人で放置するってのも大人としてどうよ?」
「つまり……大きな理由は無くただ体裁を守りたイからだと?」
タケルが問い詰めるとアックスは淀みなく違和感の正体を返した。体裁。確かにそれもまた納得出来る回答だ。
「人間なんて頭では理解していても案外合理的な理由で動けないもんだよ。体裁とか立場とか生まれや性別とか、そう言ったもモンに縛られているなんて世の中見回せば珍しい話じゃあない。寧ろそんなしがらみ全部無視して一切合切合理的に判断する人間なんて架空の物語の中か、さもなくば神様位しかいねぇよ。あぁ、後はそう言うのが分からんヤツか」
「確かに君の意見は一理ある。だが、体裁を維持すると言うだけで莫大な防衛費を投じて姫を護る必要はあるのか?」
「そこの格好いい兄さんはどうも物事に理由が有って然るべきって考えてるみたいだけど、でも理由も意味も無い行動なんて五万とあるぜ?現に俺達だってそうだろ?守護者の連中が怪しいってふんわりとした理由だけで行動してる」
漸く調子が戻って来たとばかりに饒舌に語る男はタケルの問いかけに淀みなく、自信と共に投げ返す。先程までの狼狽えようが嘘のようだ。
「君は頭が回るのか回らないのか、口が回るだけなのか、その飄々とした態度も偽りなのか。確かにその言い分は一理あるし、星の力が予測通り因果律の操作かは分からないけど、だがそれでも私は違和感の方を信じたい」
「まぁコイツの言葉はタガミと同じでイマイチ信用ならんからなぁ、ガハハハッ!!」
「いえ、まぁ少しだけそれもありますが……」
「はっきり言うなよ」
「済まないな。だが今回の件、守護者達が何かを企んでいるならばそれは姫に関係する何かである可能性が高い。ナギが姫と……」
そこまで語ったルミナは一旦言葉を止め……
「逆か。姫がどうしてナギと行動を共にしたのか、だな。そして守護者達は自らと対である私達スサノヲの影響力を奪って何をしたいのか。大半は闇の中に有るが、それでも全ての中心にいるのはやはり姫……フォルトゥナ=デウス・マキナと考えるのが自然だ。彼女に関する何かが今回の騒動の原因だと……私にはそうとしか思えない」
改めて周囲の全員に対しはっきりとそう言い切った。伊佐凪竜一と同じく彼女も同様に今回の騒動の渦中がフォルトゥナ=デウス・マキナだと結論した。
「有り得ねぇ。確かにそう難しい技術じゃあないが、黒雷型に搭載するとなれば話は別だ」
「えぇ。人型兵器への搭載は制御が難しくて採用を見送っていたのに」
兵器に関する知識を持つタケル、イスルギ、そしてルミナまでもがその事実に驚きを隠さない。事情に詳しい彼等は事の重大さをよく理解している。
黒雷への念力含む戦技の搭載は未だ持って成功していない。そんな技術は何処にも存在しない。そう、存在する訳がない。監視者が妨害しているのだから。大型兵器の戦闘能力を飛躍的に向上させる戦闘技術の搭載を許可すればどうなるかなど火を見るよりも明らか。黒雷を兵器運用する惑星の戦力は大幅に増大、更にテロリストが強奪し市井に向ければ甚大な被害をもたらすだろう。
……なのに、存在しない技術が姿を見せた。連合標準時刻、火の節86日。あの日、あの時、アレを見た私の中に生まれた言い知れぬ不安はもう1人では抱えきれない程に肥大化している。
「えーと、まだもう一個あるんだが……どうする?」
申し訳なさそうなアックスの声に周囲はハッと我に返った。纏まらない思考と揺れ動く視線は、幸か不幸か事態を呑み込めない男が語る次の情報へと自然に吸い寄せられる。
「これ以上の情報か?」
「いや、ソコまでかどうかは分からんのだが……」
「我々が知らなイ情報ならば全て有益と判断して貰って構わなイ。提供された情報は何れも頭が痛くなる内容だったが、知らなかったよりはマシだ」
「ありがとよ、男に褒められても嬉しかないがね。最後は姫様の力だ。だが、これはタダの予測で間違っているかも知れない」
「運命傅く幸運の星、か」
ルミナがそう零すと全員が黙り、アックスの言葉を待つ。
運命傅く幸運の星。連合に生きる人間ならば恐らく知らぬ者はいないが、しかしその一方で誰も真の意味を知らないという何とも奇妙で不思議な言葉でもある。それは歴代の姫が行使する特殊な能力を指す言葉であり、彼女達を象徴する言葉でもある。運命を思いのままに変える、運命さえ逆らえない、故に運命を傅かせる、と。
「確証はないが、恐らく姫様の力は"望めば自らに都合の良い事態が起こる、あるいはそういう風に因果を書き換える"類の能力だと思う。俺は少なくとも二度その有様を目にした。一度目は姫様の所持品のネックレスを賭けたギャンブルで、もう一度はナギが姫様とファイヤーウッドから逃げる時。どっちも、本当にそうとしか思えない事が起きた」
曖昧と、そう前置きし居たアックスは過去に見た信じ難い事実から導き出した星の力をこう結論した。"因果を無視する力"。予測が正しいならば人が抗える代物ではない。誰もが驚愕、あるいは更に混乱の色を深める。
「現実改変……いやしかしその前にギャンブル?年端の行かない子供とか?」
「アナタ、性格良いのか悪いのかはっきりして貰えます?」
が、ルミナと白川水希の反応は周囲とは違った。姫様と賭けを行ったと言う言葉に2人の視線は当事者へと向かう。仲良くアックスを睨む視線は鋭く、冷たく、それ以上に明確な侮蔑が籠る。
「ちょい待ち!!最初はナギと始めてたのに、いきなり姫様が自分がやるって言いだしたんだぞ!?」
「だからと言って」
「その行為に問題が無いとは言えません」
どう取り繕おうがやはり少女との賭け事という響きの印象は最悪に近い。ルミナと白川水希の視線に混ざる冷えた感情を肌で感じ取ったいい歳した男は盛大に狼狽え取り乱しながら……
「いやぁ。そりゃさ、危険な場所をうろついてたから警告がてらちょっと脅そうと思ってたのは確かだが、しかしまさかイカサマ使って完敗するとは思わなかったんだって!!」
そんな言い訳を並べ立てる。確かにこの男の言い分は正しいのだが、しかしファイヤーウッドでならば許された真似もココではタダの違法行為でしかなく。
「分かった……君の言葉を借りればそれも過ぎてしまった事だ。その過去から姫の能力を推測出来た事実に変わりはない」
これ以上理由を聞く時間はないと、そう判断したルミナは強引に話を切り上げた。
「だろ?だろ?」
「ハァ……でもツクヨミも行動を共にしていたなら恐らく勝つか引き分けていたでしょうけど。ですが、ちょっと不味くないですか?」
「確かに。星の力が因果を無視するならば、もし姫が現状を望めば俺達に勝ち目はなイ」
「ウーム、あり得ない話ではないだろうな。現にその姫様の能力はその重要性、そしてそれ以上に一族の一子にしか受け継がれない貴重性から守護者達によって完全に秘匿され続けてきた。そこの坊主が予想した力で間違いないならば確かに隠したくもなろうがなぁ……」
正に最悪。タケルの予測は間違いなく、姫が現状維持を星に願ったと仮定すれば私もルミナ達も成す術なく敗北する。勝てるかどうかわからないという状況ならば足掻く選択肢もあっただろうが、完全敗北を突きつけられた状況で同じ選択を下せる人間がどれだけいようか。事実、用心棒達の顔からは一様に血の気が引いている。真っ当な神経をした、ごく普通の人間が見せる反応だ。
「姫の御力について、スサノヲの誰も何も知らないのですか?」
遮るようにルミナがイスルギに尋ねた。
「ン?あぁ、ワシでさえ今この場で知った位だ。それに姫様の存在自体も大仰に隠されているだろう?昔はそれ程でも無かったらしいんだがなぁ」
「確かに、異様な程に姫の素性は隠されてイるな」
「今、現時点において姫様の御姿を知る者は守護者を除けばアックスやルミナを含む極僅か。無論、今の警護体制ではばあり得ない。公に姿を見せるのは婚姻の儀が終わった後からなんだよ。だからそれまでは容姿含めた一切の情報は極秘扱いとされる。しかし、それは一般に限った話でワシ等やザルヴァートル財団総帥など限られた人間の前には婚姻前であれ姿を見せていたそうなんだ」
「イスルギさん、厳しくなり始めたのは何時頃か覚えておられますか?」
「明確な日付までは……だが、ワシ等の代辺りから急に厳しくなり始めたってのは確かだ。何故かは、スマンが分からん」
話題は姫の力から自然と姫そのものへと移る。連合の頂点たる姫は、その重要性故に姿や名前を含めた一切を秘匿されているのは連合の誰もがよく知る話。但し、過剰ともいえる程に厳重な体制となったのはつい最近。何故そうなったのか、その理由は守護者が完全に伏せているらしく予測さえ困難な有様。白川水希からの問いに対しても曖昧な回答しか寄越せないイスルギの態度がソレを証明している。
「理由は恐らく暗殺の阻止が目的では?でも、変ですよね?」
暗殺。ルミナは現状で最も高い可能性に言及した。より正確にはこれ以外に考えられない、という程に真っ当な回答だ。しかし……
「確かにな」
「うぅむ」
「違和感はありますね」
アックスを除く3人は暗殺という結論の最後に結んだ"変"という感想に同調した。私も同感だ。
「え?何かおかしいか?」
只一人、事態を呑み込めないアックスが素っ頓狂な声を上げ会話を止めた。誰もが彼をジッと見つめると、彼は照れくさそうに笑いながら"そんな見つめても何も出ねぇよ?"と茶化す。
「ハァ……アナタ本当にマイペースですね」
あの男なりに場を和ませようとしたのか。それとも本心なのか分からないが、しかしその態度に呆れたミズキが大きな溜息をつく。
「姫と行動を共にした君ならば予想がつイているのではなイか?もしその力が本当だとすれば、態々秘匿する理由も守護者が護衛に就く理由もなイ」
「あぁ、いや……すまんね。分かってる、分かってるよ。でもさ、だからって年端の行かない少女を1人で放置するってのも大人としてどうよ?」
「つまり……大きな理由は無くただ体裁を守りたイからだと?」
タケルが問い詰めるとアックスは淀みなく違和感の正体を返した。体裁。確かにそれもまた納得出来る回答だ。
「人間なんて頭では理解していても案外合理的な理由で動けないもんだよ。体裁とか立場とか生まれや性別とか、そう言ったもモンに縛られているなんて世の中見回せば珍しい話じゃあない。寧ろそんなしがらみ全部無視して一切合切合理的に判断する人間なんて架空の物語の中か、さもなくば神様位しかいねぇよ。あぁ、後はそう言うのが分からんヤツか」
「確かに君の意見は一理ある。だが、体裁を維持すると言うだけで莫大な防衛費を投じて姫を護る必要はあるのか?」
「そこの格好いい兄さんはどうも物事に理由が有って然るべきって考えてるみたいだけど、でも理由も意味も無い行動なんて五万とあるぜ?現に俺達だってそうだろ?守護者の連中が怪しいってふんわりとした理由だけで行動してる」
漸く調子が戻って来たとばかりに饒舌に語る男はタケルの問いかけに淀みなく、自信と共に投げ返す。先程までの狼狽えようが嘘のようだ。
「君は頭が回るのか回らないのか、口が回るだけなのか、その飄々とした態度も偽りなのか。確かにその言い分は一理あるし、星の力が予測通り因果律の操作かは分からないけど、だがそれでも私は違和感の方を信じたい」
「まぁコイツの言葉はタガミと同じでイマイチ信用ならんからなぁ、ガハハハッ!!」
「いえ、まぁ少しだけそれもありますが……」
「はっきり言うなよ」
「済まないな。だが今回の件、守護者達が何かを企んでいるならばそれは姫に関係する何かである可能性が高い。ナギが姫と……」
そこまで語ったルミナは一旦言葉を止め……
「逆か。姫がどうしてナギと行動を共にしたのか、だな。そして守護者達は自らと対である私達スサノヲの影響力を奪って何をしたいのか。大半は闇の中に有るが、それでも全ての中心にいるのはやはり姫……フォルトゥナ=デウス・マキナと考えるのが自然だ。彼女に関する何かが今回の騒動の原因だと……私にはそうとしか思えない」
改めて周囲の全員に対しはっきりとそう言い切った。伊佐凪竜一と同じく彼女も同様に今回の騒動の渦中がフォルトゥナ=デウス・マキナだと結論した。
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