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ふしぎなデートの約束 《竜之介》

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「竜之介がついているなら、有栖さえよければいいんじゃないか?」

絶対反対するかと思っていた兄は意外にもあっさりと了承した。
「有栖はずっと部屋に閉じこもってばかりだし…状況が状況としても、兄貴たちにずっと軟禁されているのは、しんどいかもしれない。竜之介の話を聞いてると桃は信用できるいい奴みたいだ。体調だけ竜之介が見ていてくれたら、気分転換になるかもしれない…」

当の有栖は…
「桃くん…?リュウのおともだちの?……私も一緒に…?」
とまどうように下を見る。
手のひらを見つめている。
指と手首には夥しい包帯が巻かれている。

以前より意識の混濁や発作は減ってきたけど、ふいに恐怖や苦しみが襲ってきてしまうことがある。そんなとき、有栖はそれらの感情を抑え込もうと、指で手首や胸元を引っ掻いて自分を傷つけたり、奥歯が折れそうになるほど奥歯を噛み締めてしまう。

包帯のことを気にしているのかな…

「桃なら大丈夫だよ。ね、有栖、ずっとおうちにいたからさ、どこかいきたいとことかない?」
僕が笑いかけると少しほっとした様子をみせた。
「ありがとう……」
有栖の視線が彷徨う。
行きたいところは思い浮かばないようだったが、絶対に嫌というわけでもなさそうだった。なぜなら彷徨う彼女の瞳にちいさな光が浮かんだような気がしたから。

たしかに桃の言うとおりかもしれない。
父の影を恐れてずっと部屋に有栖を閉じ込めていたら、有栖の瞳に光は戻らないかもしれない。

桃がなぜそんなことを言い出したのかはわからないけど(僕と有栖が好きだから?)桃の提案に乗ることにした。

そして約束した日曜日がやってきた。
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