66 / 81
ふしぎなデートの約束 《竜之介》
しおりを挟む
「竜之介がついているなら、有栖さえよければいいんじゃないか?」
絶対反対するかと思っていた兄は意外にもあっさりと了承した。
「有栖はずっと部屋に閉じこもってばかりだし…状況が状況としても、兄貴たちにずっと軟禁されているのは、しんどいかもしれない。竜之介の話を聞いてると桃は信用できるいい奴みたいだ。体調だけ竜之介が見ていてくれたら、気分転換になるかもしれない…」
当の有栖は…
「桃くん…?リュウのおともだちの?……私も一緒に…?」
とまどうように下を見る。
手のひらを見つめている。
指と手首には夥しい包帯が巻かれている。
以前より意識の混濁や発作は減ってきたけど、ふいに恐怖や苦しみが襲ってきてしまうことがある。そんなとき、有栖はそれらの感情を抑え込もうと、指で手首や胸元を引っ掻いて自分を傷つけたり、奥歯が折れそうになるほど奥歯を噛み締めてしまう。
包帯のことを気にしているのかな…
「桃なら大丈夫だよ。ね、有栖、ずっとおうちにいたからさ、どこかいきたいとことかない?」
僕が笑いかけると少しほっとした様子をみせた。
「ありがとう……」
有栖の視線が彷徨う。
行きたいところは思い浮かばないようだったが、絶対に嫌というわけでもなさそうだった。なぜなら彷徨う彼女の瞳にちいさな光が浮かんだような気がしたから。
たしかに桃の言うとおりかもしれない。
父の影を恐れてずっと部屋に有栖を閉じ込めていたら、有栖の瞳に光は戻らないかもしれない。
桃がなぜそんなことを言い出したのかはわからないけど(僕と有栖が好きだから?)桃の提案に乗ることにした。
そして約束した日曜日がやってきた。
絶対反対するかと思っていた兄は意外にもあっさりと了承した。
「有栖はずっと部屋に閉じこもってばかりだし…状況が状況としても、兄貴たちにずっと軟禁されているのは、しんどいかもしれない。竜之介の話を聞いてると桃は信用できるいい奴みたいだ。体調だけ竜之介が見ていてくれたら、気分転換になるかもしれない…」
当の有栖は…
「桃くん…?リュウのおともだちの?……私も一緒に…?」
とまどうように下を見る。
手のひらを見つめている。
指と手首には夥しい包帯が巻かれている。
以前より意識の混濁や発作は減ってきたけど、ふいに恐怖や苦しみが襲ってきてしまうことがある。そんなとき、有栖はそれらの感情を抑え込もうと、指で手首や胸元を引っ掻いて自分を傷つけたり、奥歯が折れそうになるほど奥歯を噛み締めてしまう。
包帯のことを気にしているのかな…
「桃なら大丈夫だよ。ね、有栖、ずっとおうちにいたからさ、どこかいきたいとことかない?」
僕が笑いかけると少しほっとした様子をみせた。
「ありがとう……」
有栖の視線が彷徨う。
行きたいところは思い浮かばないようだったが、絶対に嫌というわけでもなさそうだった。なぜなら彷徨う彼女の瞳にちいさな光が浮かんだような気がしたから。
たしかに桃の言うとおりかもしれない。
父の影を恐れてずっと部屋に有栖を閉じ込めていたら、有栖の瞳に光は戻らないかもしれない。
桃がなぜそんなことを言い出したのかはわからないけど(僕と有栖が好きだから?)桃の提案に乗ることにした。
そして約束した日曜日がやってきた。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~
世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。
──え……この方、誰?
相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。
けれど私は、自分の名前すら思い出せない。
訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。
「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」
……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!?
しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。
もしかして、そのせいで私は命を狙われている?
公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。
全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね!
※本作品はR18表現があります、ご注意ください。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる