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桃の告白 《竜之介》
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「高校生17歳にしては、老成してるよなあ…竜之介は…」
隣で声がするので、ふと見ると桃が側に来ていた。昼休みもあと少しだ。
校庭を見るともなく眺めながら、教室の窓にもたれかかりながら2人で立つ格好になった。
桃は何も詳しいことは聞いてこないが、あの一件以来なんとなく俺のことを気にしてくれているような気がした。
学校に来れない間も代わりにノートをとってくれたり、学校の状況を伝えてくれたり、なにかと世話を焼いてくれた。
「おまえこそ、飄々としてて年齢不詳だぞ…」
桃は夏休み中に明るく染めたという前髪を弄んでいる。
「そうかな…?」
髪を明るく染めて、ごつめのピアスを三つも四つもしている桃は、進学校では明らかに浮いていたが、なぜか不真面目には見えないのは彼の人柄が滲み出しているからか…。
現に桃は常に成績が校内10番以内に入る秀才だ。
「竜之介は最近いつも眠そうだな….…原因は有栖ちゃん…かな?」
珍しくちょっとだけ、こちらのことを聞いてくる。
有栖は家から出てマンションで暮らすようになってから一度も学校に来られていない。
「まあ、そうかな…」
曖昧に返事をする。
「ま…竜之介は頭いいから、勉強は大丈夫だろうけど、ちょっとは息抜きも必要かもよ…恋とか…」
「考えたこともなかった…」
息抜きのための恋なんて…
「竜之介はそこそこモテるんだからその気になればすぐなんじゃね?」
ふーん…と気のない返事をしながら質問を返す。
「そういう桃は恋とかしてるの?」
そういえば桃の浮いた話ってきいたことない。
「してるよ?」
軽く答える。
「あ、そうなんだ…」
と言うか言わないかのうちに、
「竜之介」
と名前を呼ばれる。
「ん?」
「いや、名前呼んだんじゃなくて、恋の相手は竜之介って言ったの」
桃はきょとんとした顔で、まるで天気のはなしをしてるときみたいな調子でいう。
「……は?」
「あ、俺、バイなの。言ってなかったっけ」
はじめて聞いたが…
「いや…聞いてないな」
そうか、桃のフリーダムな雰囲気はそのせいか…妙に腑に落ちる。
「だから、俺は竜之介も有栖ちゃんもイケるの。有栖ちゃんも好き」
「え、それもはじめて聞いたな……」
なんか桃と話していると調子が狂う。
他の男子からなら、なんとなく有栖へのルートの潰し方を考えはじめるところなのだが……なんだか桃が相手だとそんな気も起きない。
そうか…桃も有栖が好きなのか…えっ、僕のことも好きって言わなかったか?ふつうに。
「竜之介と有栖ちゃんは似ているよ。本当に双子みたいだ。血はつながってないみたいだけどさ」
今日の桃はよく喋る。血がつながっていない話もした覚えはない。
「俺と有栖が似てる?」
思わず聞き返す。
「うん…なんか雰囲気が似てる。自分より相手を優先しちゃうとことか、いつも笑っているのにさみしそうなとことか」
桃がそんなふうに思っていたなんて。
「そんなわけで、ここらでこの陽キャの俺とデートしてみない?」
にこにこと、なんてことないことのように言ってのける。
「誰が?俺と桃?」
「と、有栖ちゃん」
不思議なデートを提案してきた。
相手が桃でなかったら鼻で笑っていたかもしれない。
「今は有栖は…」
僕が話を続けようと口を開きかけたとき、桃がそれを遮る。
「ちょっと大変なんだよね…でも、たぶん大丈夫。竜之介はどう?」
桃は不思議な奴で、なんか桃に大丈夫っていわれるとそうかもと思ってしまう。
「うーん……俺はいいけど、有栖はなんていうかな。あと兄貴がゆるしてくれるかな…」
桃は明るく笑った。
「お兄さん、了承してくれるか心配だな。有栖ちゃんとお兄さんのOKでたら呼んで。俺はいつでも大丈夫だから」
桃はなにを考えているのかわからないけど、邪気のない、いつもの笑顔で笑っている。
隣で声がするので、ふと見ると桃が側に来ていた。昼休みもあと少しだ。
校庭を見るともなく眺めながら、教室の窓にもたれかかりながら2人で立つ格好になった。
桃は何も詳しいことは聞いてこないが、あの一件以来なんとなく俺のことを気にしてくれているような気がした。
学校に来れない間も代わりにノートをとってくれたり、学校の状況を伝えてくれたり、なにかと世話を焼いてくれた。
「おまえこそ、飄々としてて年齢不詳だぞ…」
桃は夏休み中に明るく染めたという前髪を弄んでいる。
「そうかな…?」
髪を明るく染めて、ごつめのピアスを三つも四つもしている桃は、進学校では明らかに浮いていたが、なぜか不真面目には見えないのは彼の人柄が滲み出しているからか…。
現に桃は常に成績が校内10番以内に入る秀才だ。
「竜之介は最近いつも眠そうだな….…原因は有栖ちゃん…かな?」
珍しくちょっとだけ、こちらのことを聞いてくる。
有栖は家から出てマンションで暮らすようになってから一度も学校に来られていない。
「まあ、そうかな…」
曖昧に返事をする。
「ま…竜之介は頭いいから、勉強は大丈夫だろうけど、ちょっとは息抜きも必要かもよ…恋とか…」
「考えたこともなかった…」
息抜きのための恋なんて…
「竜之介はそこそこモテるんだからその気になればすぐなんじゃね?」
ふーん…と気のない返事をしながら質問を返す。
「そういう桃は恋とかしてるの?」
そういえば桃の浮いた話ってきいたことない。
「してるよ?」
軽く答える。
「あ、そうなんだ…」
と言うか言わないかのうちに、
「竜之介」
と名前を呼ばれる。
「ん?」
「いや、名前呼んだんじゃなくて、恋の相手は竜之介って言ったの」
桃はきょとんとした顔で、まるで天気のはなしをしてるときみたいな調子でいう。
「……は?」
「あ、俺、バイなの。言ってなかったっけ」
はじめて聞いたが…
「いや…聞いてないな」
そうか、桃のフリーダムな雰囲気はそのせいか…妙に腑に落ちる。
「だから、俺は竜之介も有栖ちゃんもイケるの。有栖ちゃんも好き」
「え、それもはじめて聞いたな……」
なんか桃と話していると調子が狂う。
他の男子からなら、なんとなく有栖へのルートの潰し方を考えはじめるところなのだが……なんだか桃が相手だとそんな気も起きない。
そうか…桃も有栖が好きなのか…えっ、僕のことも好きって言わなかったか?ふつうに。
「竜之介と有栖ちゃんは似ているよ。本当に双子みたいだ。血はつながってないみたいだけどさ」
今日の桃はよく喋る。血がつながっていない話もした覚えはない。
「俺と有栖が似てる?」
思わず聞き返す。
「うん…なんか雰囲気が似てる。自分より相手を優先しちゃうとことか、いつも笑っているのにさみしそうなとことか」
桃がそんなふうに思っていたなんて。
「そんなわけで、ここらでこの陽キャの俺とデートしてみない?」
にこにこと、なんてことないことのように言ってのける。
「誰が?俺と桃?」
「と、有栖ちゃん」
不思議なデートを提案してきた。
相手が桃でなかったら鼻で笑っていたかもしれない。
「今は有栖は…」
僕が話を続けようと口を開きかけたとき、桃がそれを遮る。
「ちょっと大変なんだよね…でも、たぶん大丈夫。竜之介はどう?」
桃は不思議な奴で、なんか桃に大丈夫っていわれるとそうかもと思ってしまう。
「うーん……俺はいいけど、有栖はなんていうかな。あと兄貴がゆるしてくれるかな…」
桃は明るく笑った。
「お兄さん、了承してくれるか心配だな。有栖ちゃんとお兄さんのOKでたら呼んで。俺はいつでも大丈夫だから」
桃はなにを考えているのかわからないけど、邪気のない、いつもの笑顔で笑っている。
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