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久しぶりのお出かけ 《有栖》
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今日は久しぶりのお出かけ。
竜之介と、クラスメイトの桃くんと、新しくできた近くの水族館に行く予定。
行き先は桃くんが決めてくれた。
桃くんは明るくて屈託ない感じだけれど、何気なく細やかな気遣いができる人。
竜之介となんだか気があうみたいでよく一緒にいるところを教室で見かけた。
私まで仲間にいれてくれたのは、ずっと学校に行けてないから気を使ってくれたのかな。
竜之介は、つらいときは無理しないでねと何度も念を押しながら、それでもどこかうれしそうに、私の髪を梳かし,丁寧にゆるめのツインの編み込みをしてくれた。
手指の包帯は(私が腕や胸元を引っ掻いたりしたときに、自分で傷をつけてしまったので、竜之介が包帯をしてくれた)隠せないけれど、腕や胸元の傷や包帯が見えないように、長袖の花柄のワンピースを選んだ。
靴はピンクベージュのローヒールサンダルにした。
前日、竜之介が貧弱に痩せた私のくるぶしを支えながら、丁寧に両の足指に桜貝みたいなペディキュアを塗ってくれた。
兄もなんだかうれしそうな表情で朝ごはんを作ってくれた。みんなにいろいろ気を使ってもらって本当に申し訳ない…。
でも出かけると思って気を張っているせいか、いつもより私もごはんも食べられたし、
「楽しんできな」
と言って笑う兄の顔を見ると私もうれしくなった。
***
外に出るとまだ夏の日差しが残っていて、久しぶりの太陽の光にくらくら目眩がした。
「有栖、大丈夫?」
竜之介が日傘を差しかけてくれる。
待ち合わせの駅前に着くと、桃くんがもう先に来て待っていてくれた。
私服の桃くんを見るのは初めてだったけれど、鮮やかな赤いTシャツが明るい彼によく似合っている。
私たちを見つけて手を振って駆け寄ってきてくれる。男の子同士は、目と目だけで簡単に挨拶を済ませた。
桃くんは少し腰をかがめて私に視線をあわせてくれると、
「こんにちは、有栖ちゃん。急に誘ったのに来てくれてありがとね」
にこにこと教室にいるときと同じ笑顔を向けてくれる。
「私こそ…今日は誘ってくれてありがとう…」
自分の発した声が、どこか他人の言葉のように聞こえた。
緊張しているみたい。
「あ、電車きたよ。有栖ちゃん、行こうか」
桃くんがごく自然に言って、私たちは三人並んで歩き始めた。
竜之介と、クラスメイトの桃くんと、新しくできた近くの水族館に行く予定。
行き先は桃くんが決めてくれた。
桃くんは明るくて屈託ない感じだけれど、何気なく細やかな気遣いができる人。
竜之介となんだか気があうみたいでよく一緒にいるところを教室で見かけた。
私まで仲間にいれてくれたのは、ずっと学校に行けてないから気を使ってくれたのかな。
竜之介は、つらいときは無理しないでねと何度も念を押しながら、それでもどこかうれしそうに、私の髪を梳かし,丁寧にゆるめのツインの編み込みをしてくれた。
手指の包帯は(私が腕や胸元を引っ掻いたりしたときに、自分で傷をつけてしまったので、竜之介が包帯をしてくれた)隠せないけれど、腕や胸元の傷や包帯が見えないように、長袖の花柄のワンピースを選んだ。
靴はピンクベージュのローヒールサンダルにした。
前日、竜之介が貧弱に痩せた私のくるぶしを支えながら、丁寧に両の足指に桜貝みたいなペディキュアを塗ってくれた。
兄もなんだかうれしそうな表情で朝ごはんを作ってくれた。みんなにいろいろ気を使ってもらって本当に申し訳ない…。
でも出かけると思って気を張っているせいか、いつもより私もごはんも食べられたし、
「楽しんできな」
と言って笑う兄の顔を見ると私もうれしくなった。
***
外に出るとまだ夏の日差しが残っていて、久しぶりの太陽の光にくらくら目眩がした。
「有栖、大丈夫?」
竜之介が日傘を差しかけてくれる。
待ち合わせの駅前に着くと、桃くんがもう先に来て待っていてくれた。
私服の桃くんを見るのは初めてだったけれど、鮮やかな赤いTシャツが明るい彼によく似合っている。
私たちを見つけて手を振って駆け寄ってきてくれる。男の子同士は、目と目だけで簡単に挨拶を済ませた。
桃くんは少し腰をかがめて私に視線をあわせてくれると、
「こんにちは、有栖ちゃん。急に誘ったのに来てくれてありがとね」
にこにこと教室にいるときと同じ笑顔を向けてくれる。
「私こそ…今日は誘ってくれてありがとう…」
自分の発した声が、どこか他人の言葉のように聞こえた。
緊張しているみたい。
「あ、電車きたよ。有栖ちゃん、行こうか」
桃くんがごく自然に言って、私たちは三人並んで歩き始めた。
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