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第19話 蜂起
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#第19話 蜂起
――風が吹いた。
冷たい、夜の底から這い上がるような風だった。
ルカは振り返りざま、足を鳴らして駆け寄った。
「ナオ――!」
血の匂い。土と埃の湿り。
伏せたまま動かない身体。
その一瞬で脳裏に過ぎるのは、最悪の未来ばかりだった。
「……ッ、おい、ナオ……!」
肩を支えると、ようやくわずかに身じろぎが返る。
その微かな反応に、ルカは思わず息を詰めた。
「……ルカ、うるさい……近い……」
かすれた声。
いつものような皮肉もない。
だが――生きている。
そのことだけで、今は十分だった。
「……っ、てめぇ……っ、もう……っ!!」
ルカは涙目になりながら、喉の奥で罵り、口を噤んだ。
ナオの上着の腹部分――そこに、鞘の破損跡があった。
「……鞘で、受けたんだな……」
ナオは微かに頷く。
「……避けきれなかった。けど、直撃は……」
「バカか。…アバラ、折れてんだろ、これ……」
震える声を抑えながら、ルカはナオの身体をそっと横たえる。
折れた鞘の破片。呼吸の乱れ。痛みに滲む汗。
それでも、ナオの目は――まだ燃えていた。
「動くなって!まず、ミツんとこ行くぞ。今すぐ――」
ルカが支えながら、そう言いかけた瞬間。
ナオが、わずかに目を細めて空を見た。
「……来てる。」
「――は?」
「次。来てるぞ、ルカ。」
ルカが顔を上げたそのとき、夜風の中に――
羽音が、かすかに混じっていた。
ただの虫じゃない。
風を裂いて、無数の粒が空を舞ってくる。
不穏で、機械的で、冷たい音。
ルカの背筋が、ぞくりと強張った。
「……チッ、あのクソ虫……!」
喉の奥から、怒りが滲む。
あの夜の苦しみが、まだ身体に残っている。
――針の痛みも、毒の痺れも、声が届かなかったあの瞬間も。
忌々しい羽音が、一瞬ですべてを思い出させた。
やがて――視界の奥、瓦礫の陰から、
ゆっくりと蜂須賀晶哉が姿を現す。
丸縁の眼鏡に、無表情なままの目。
…革製の大きなビジネスバッグを抱えたその姿は、
スーツの皮をかぶった異物のようだった。
黒革手袋の指先が、静かにブリッジに触れる。
「……よぉ…地獄のふちから、戻ってきてやったぜ……?」
ルカが口角をあげながらも、低く唸るように問うと、
蜂須賀は一度だけ眼鏡を押し上げた。
「あのまま消えていれば、互いに楽だったというのに…。
本当に、目障りだ。」
鼻を鳴らすように言ったその声は、
感情のこもらない事務処理のような口調だった。
「アルゴスもヘリオスも、ルクシオンまで…、
なぜこうも邪魔をしてくるのか……」
そのつぶやきに、ルカが眉をひそめる。
「そりゃ、お前が均衡をぶち壊してるからだ。」
蜂須賀は首を傾げた。
「均衡、ねぇ。……“あの方”が、どう思ってるかまでは知りませんが。
ただ私は、命じられた通りに動いているだけですので。」
言葉とは裏腹に、その目は何かを測るようにルカを見ている。
ナオの前に立つようにして、ルカが身構えた。
「……悪ぃけど、今こっち、立て込んでんだ。
ご主人のとこに戻んなら、今だぜ。」
(……ナオはまだ、戦えない。時間を稼ぐしかねぇ。)
一歩も引く気配を見せずに言うと――
蜂須賀の唇が、わずかに持ち上がった。
「だから、来たんですよ。
“主力が潰し合ってくれた”後、
残る“手負いのルクシオン”を確実に仕留めるために。」
淡々と、吐くように言ったその声が、
風より冷たく夜に響く。
「逃すわけがないでしょう。こんな、好機を――」
風が吹き抜けた。
その中に混じる、不穏な羽音。
かすかに、そして確かに、空気を裂いて近づいてくる。
「……っ」
ルカが顔を上げる。
視線の先、建物の屋上から滑るように降下してきた影――
わずか五センチほどの蜂型ドローン。
小さく、無音に近いそれは、夜闇のなかを滑るように飛んでくる。
喉の奥がひくつく。
あの夜と同じ――いや、それ以上に、
あいつをこんな目に遭わせてたまるか、
という怒りが、背骨を駆け上がった。
「……ナオ、動くなよ。」
低く、短くそう言ってから――
ルカは右手の鞭を、ぎゅ、と強く握った。
ナオの前に出る。
そして、静かに振りかぶったその動きは――
まるで、あの日の続きを断ち切るように。
「……二度目は、ねぇよ。」
音を裂く。
バシィン!
鋭い音が夜を裂き、
鞭が蜂を捉えた瞬間、金属の火花が弾け飛ぶ。
――蜂型ドローンは、地面に弾かれるように叩き落とされ、
冷たいアスファルトに、静かに転がった。
ルカはそのまま、吐き捨てるように小さく言った。
「……同じ手をくらうかよ、クソ虫が。」
ルカが叩き落としたドローンの残骸を、
蜂須賀は静かに見下ろす。
そして――
黒革のビジネスバッグの蓋に、そっと指をかけた。
「……無駄な抵抗を。」
ぱちん、と小さな留め金の音。
開かれたバッグの中から、無数の金属の影が姿を見せる。
規則的に並んだ、蜂型ドローンたち。
その一機一機が、まるで“意志”を持つかのように、同時に起動音を立てた。
ブゥゥゥン――
ぞっとするような羽音が重なり、震える空気ごと、迫ってくる。
その直後。
「……これは、最適化された“淘汰”です。」
蜂須賀が眼鏡を押し上げる。
革バッグの奥から――
ヴヴヴヴヴヴヴ……ッ!
無数の蜂型ドローンが、うねるような羽音を残して空に飛び出した。
まるで黒い雲のように、圧倒的な密度と速さで――襲いかかってくる。
群れが、空気を切り裂いて放たれる。
低く唸るような羽音が、夜に響く。
ルカが歯を食いしばった。
「チッ……一機じゃないよなぁ、虫はなぁ……!」
空を埋めるように、次々と飛来する蜂型ドローンたち。
ひとつひとつは小さくても、群れになれば脅威は段違いだった。
(これじゃ、“防ぐ”のが精一杯だ……!)
構え直す。
だが、背後に感じる、守るべき存在の気配が――重い。
そのとき。
「……カッコつけすぎだ、ダーリン。」
かすれた声が、背中越しに届いた。
「ナオ……!?」
振り返るより早く、
ナオは――その痛む身体を、無理やりに押し起こしていた。
腕で壁を支えながら、顔をしかめ、
それでも、剣を握ったその手は震えていなかった。
「まだ終わってねぇ。お前の隣、俺が埋める。」
ルカの目が見開かれる。
「お前、怪我っ――」
「痛ぇよ。でも……黙って見てるのは、もっと痛ぇ。」
そう言って、ナオは地面を踏みしめた。
ふらつきながらも、確かな足取りで――
もう一度、“バディ”としてルカの隣へと並ぶ。
夜風が、二人の間を吹き抜けた。
羽音は、すぐそこまで迫っている。
だが――
その背中は、もう揺らがなかった。
群れが、夜風を裂いて突っ込んでくる。
「……分かった。任せたからな、ハニー!」
「……まとめて落とせよ、ダーリン。」
ルカが鞭を振りかぶる。
しなる一閃が、縫うように空を裂く。
――バシィン!
金属を砕く音と共に、蜂型ドローンが数機、叩き落とされた。
すかさず、ナオが踏み込む。
剣を横薙ぎに、鋭く振り抜いた。
「っ……!」
痛みを噛み締めて耐えながら、
ルカの鞭をかい潜った羽音を裂くように、
機械の身体を鋭く断ち切る。
火花が弾け飛んだ。
「……群れごと、刈る。」
ナオが息をつき、ルカが笑う。
「ったく…意地っ張りの“クソ野郎”だよ、お前は。」
一瞬、背中合わせのように並ぶ二人の姿。
ドローンたちはまだ止まらない。
けれど、その“歩幅”は、もう揃っていた。
蜂須賀の眼鏡の奥で、微かに何かが揺れる。
「……やはり、“人”は、誤差が多すぎる。」
感情と絆――予定外の連携。
それこそが、計算外の“脅威”だった。
---
――羽音が、密度を増していく。
ただ飛び回っていた蜂型ドローンたちが、
まるで“意思”を得たかのように、編隊を変えはじめた。
「……っ、これ……」
ルカは額に汗を滲ませながら、鞭を振るう。
だが――その軌道は、読まれていた。
振りかぶるより早く、ドローンが一瞬で角度を変え、すり抜ける。
さっきまでなら届いていたタイミングが、わずかに、狂っている。
「……こいつら……動きが……!?」
ナオもまた、剣を振るいながら気づいた。
ドローンたちはただの機械じゃない。
「――やはり、“群れ”の方が“個”よりも優れている。」
戦闘の流れ。
呼吸のリズム。
鞭の“しなるタイミング”まで――学習されている。
「……クソ、機械のくせに、読むんじゃねぇ!」
苛立ち混じりに、ルカが吠える。
攻撃を当てるたび、回避の角度が変わる。
フォーメーションも、意図的に裂かれていた。
“連携”が、“分断”へと変わる――その違和感が、じわじわと首を絞めてくる。
そのとき――
「っ……!」
ルカの鞭が、一瞬だけ軌道を外した。
その隙を突いて、一機のドローンが滑り込む。
――ルカを回り込み、“ナオの背後”へ。
「――ナオ……ッ!!」
ルカの叫びが届くより早く。
視界の端、振り返る隙間もないその距離に――
――届く。
このままじゃ――
――風が吹いた。
冷たい、夜の底から這い上がるような風だった。
ルカは振り返りざま、足を鳴らして駆け寄った。
「ナオ――!」
血の匂い。土と埃の湿り。
伏せたまま動かない身体。
その一瞬で脳裏に過ぎるのは、最悪の未来ばかりだった。
「……ッ、おい、ナオ……!」
肩を支えると、ようやくわずかに身じろぎが返る。
その微かな反応に、ルカは思わず息を詰めた。
「……ルカ、うるさい……近い……」
かすれた声。
いつものような皮肉もない。
だが――生きている。
そのことだけで、今は十分だった。
「……っ、てめぇ……っ、もう……っ!!」
ルカは涙目になりながら、喉の奥で罵り、口を噤んだ。
ナオの上着の腹部分――そこに、鞘の破損跡があった。
「……鞘で、受けたんだな……」
ナオは微かに頷く。
「……避けきれなかった。けど、直撃は……」
「バカか。…アバラ、折れてんだろ、これ……」
震える声を抑えながら、ルカはナオの身体をそっと横たえる。
折れた鞘の破片。呼吸の乱れ。痛みに滲む汗。
それでも、ナオの目は――まだ燃えていた。
「動くなって!まず、ミツんとこ行くぞ。今すぐ――」
ルカが支えながら、そう言いかけた瞬間。
ナオが、わずかに目を細めて空を見た。
「……来てる。」
「――は?」
「次。来てるぞ、ルカ。」
ルカが顔を上げたそのとき、夜風の中に――
羽音が、かすかに混じっていた。
ただの虫じゃない。
風を裂いて、無数の粒が空を舞ってくる。
不穏で、機械的で、冷たい音。
ルカの背筋が、ぞくりと強張った。
「……チッ、あのクソ虫……!」
喉の奥から、怒りが滲む。
あの夜の苦しみが、まだ身体に残っている。
――針の痛みも、毒の痺れも、声が届かなかったあの瞬間も。
忌々しい羽音が、一瞬ですべてを思い出させた。
やがて――視界の奥、瓦礫の陰から、
ゆっくりと蜂須賀晶哉が姿を現す。
丸縁の眼鏡に、無表情なままの目。
…革製の大きなビジネスバッグを抱えたその姿は、
スーツの皮をかぶった異物のようだった。
黒革手袋の指先が、静かにブリッジに触れる。
「……よぉ…地獄のふちから、戻ってきてやったぜ……?」
ルカが口角をあげながらも、低く唸るように問うと、
蜂須賀は一度だけ眼鏡を押し上げた。
「あのまま消えていれば、互いに楽だったというのに…。
本当に、目障りだ。」
鼻を鳴らすように言ったその声は、
感情のこもらない事務処理のような口調だった。
「アルゴスもヘリオスも、ルクシオンまで…、
なぜこうも邪魔をしてくるのか……」
そのつぶやきに、ルカが眉をひそめる。
「そりゃ、お前が均衡をぶち壊してるからだ。」
蜂須賀は首を傾げた。
「均衡、ねぇ。……“あの方”が、どう思ってるかまでは知りませんが。
ただ私は、命じられた通りに動いているだけですので。」
言葉とは裏腹に、その目は何かを測るようにルカを見ている。
ナオの前に立つようにして、ルカが身構えた。
「……悪ぃけど、今こっち、立て込んでんだ。
ご主人のとこに戻んなら、今だぜ。」
(……ナオはまだ、戦えない。時間を稼ぐしかねぇ。)
一歩も引く気配を見せずに言うと――
蜂須賀の唇が、わずかに持ち上がった。
「だから、来たんですよ。
“主力が潰し合ってくれた”後、
残る“手負いのルクシオン”を確実に仕留めるために。」
淡々と、吐くように言ったその声が、
風より冷たく夜に響く。
「逃すわけがないでしょう。こんな、好機を――」
風が吹き抜けた。
その中に混じる、不穏な羽音。
かすかに、そして確かに、空気を裂いて近づいてくる。
「……っ」
ルカが顔を上げる。
視線の先、建物の屋上から滑るように降下してきた影――
わずか五センチほどの蜂型ドローン。
小さく、無音に近いそれは、夜闇のなかを滑るように飛んでくる。
喉の奥がひくつく。
あの夜と同じ――いや、それ以上に、
あいつをこんな目に遭わせてたまるか、
という怒りが、背骨を駆け上がった。
「……ナオ、動くなよ。」
低く、短くそう言ってから――
ルカは右手の鞭を、ぎゅ、と強く握った。
ナオの前に出る。
そして、静かに振りかぶったその動きは――
まるで、あの日の続きを断ち切るように。
「……二度目は、ねぇよ。」
音を裂く。
バシィン!
鋭い音が夜を裂き、
鞭が蜂を捉えた瞬間、金属の火花が弾け飛ぶ。
――蜂型ドローンは、地面に弾かれるように叩き落とされ、
冷たいアスファルトに、静かに転がった。
ルカはそのまま、吐き捨てるように小さく言った。
「……同じ手をくらうかよ、クソ虫が。」
ルカが叩き落としたドローンの残骸を、
蜂須賀は静かに見下ろす。
そして――
黒革のビジネスバッグの蓋に、そっと指をかけた。
「……無駄な抵抗を。」
ぱちん、と小さな留め金の音。
開かれたバッグの中から、無数の金属の影が姿を見せる。
規則的に並んだ、蜂型ドローンたち。
その一機一機が、まるで“意志”を持つかのように、同時に起動音を立てた。
ブゥゥゥン――
ぞっとするような羽音が重なり、震える空気ごと、迫ってくる。
その直後。
「……これは、最適化された“淘汰”です。」
蜂須賀が眼鏡を押し上げる。
革バッグの奥から――
ヴヴヴヴヴヴヴ……ッ!
無数の蜂型ドローンが、うねるような羽音を残して空に飛び出した。
まるで黒い雲のように、圧倒的な密度と速さで――襲いかかってくる。
群れが、空気を切り裂いて放たれる。
低く唸るような羽音が、夜に響く。
ルカが歯を食いしばった。
「チッ……一機じゃないよなぁ、虫はなぁ……!」
空を埋めるように、次々と飛来する蜂型ドローンたち。
ひとつひとつは小さくても、群れになれば脅威は段違いだった。
(これじゃ、“防ぐ”のが精一杯だ……!)
構え直す。
だが、背後に感じる、守るべき存在の気配が――重い。
そのとき。
「……カッコつけすぎだ、ダーリン。」
かすれた声が、背中越しに届いた。
「ナオ……!?」
振り返るより早く、
ナオは――その痛む身体を、無理やりに押し起こしていた。
腕で壁を支えながら、顔をしかめ、
それでも、剣を握ったその手は震えていなかった。
「まだ終わってねぇ。お前の隣、俺が埋める。」
ルカの目が見開かれる。
「お前、怪我っ――」
「痛ぇよ。でも……黙って見てるのは、もっと痛ぇ。」
そう言って、ナオは地面を踏みしめた。
ふらつきながらも、確かな足取りで――
もう一度、“バディ”としてルカの隣へと並ぶ。
夜風が、二人の間を吹き抜けた。
羽音は、すぐそこまで迫っている。
だが――
その背中は、もう揺らがなかった。
群れが、夜風を裂いて突っ込んでくる。
「……分かった。任せたからな、ハニー!」
「……まとめて落とせよ、ダーリン。」
ルカが鞭を振りかぶる。
しなる一閃が、縫うように空を裂く。
――バシィン!
金属を砕く音と共に、蜂型ドローンが数機、叩き落とされた。
すかさず、ナオが踏み込む。
剣を横薙ぎに、鋭く振り抜いた。
「っ……!」
痛みを噛み締めて耐えながら、
ルカの鞭をかい潜った羽音を裂くように、
機械の身体を鋭く断ち切る。
火花が弾け飛んだ。
「……群れごと、刈る。」
ナオが息をつき、ルカが笑う。
「ったく…意地っ張りの“クソ野郎”だよ、お前は。」
一瞬、背中合わせのように並ぶ二人の姿。
ドローンたちはまだ止まらない。
けれど、その“歩幅”は、もう揃っていた。
蜂須賀の眼鏡の奥で、微かに何かが揺れる。
「……やはり、“人”は、誤差が多すぎる。」
感情と絆――予定外の連携。
それこそが、計算外の“脅威”だった。
---
――羽音が、密度を増していく。
ただ飛び回っていた蜂型ドローンたちが、
まるで“意思”を得たかのように、編隊を変えはじめた。
「……っ、これ……」
ルカは額に汗を滲ませながら、鞭を振るう。
だが――その軌道は、読まれていた。
振りかぶるより早く、ドローンが一瞬で角度を変え、すり抜ける。
さっきまでなら届いていたタイミングが、わずかに、狂っている。
「……こいつら……動きが……!?」
ナオもまた、剣を振るいながら気づいた。
ドローンたちはただの機械じゃない。
「――やはり、“群れ”の方が“個”よりも優れている。」
戦闘の流れ。
呼吸のリズム。
鞭の“しなるタイミング”まで――学習されている。
「……クソ、機械のくせに、読むんじゃねぇ!」
苛立ち混じりに、ルカが吠える。
攻撃を当てるたび、回避の角度が変わる。
フォーメーションも、意図的に裂かれていた。
“連携”が、“分断”へと変わる――その違和感が、じわじわと首を絞めてくる。
そのとき――
「っ……!」
ルカの鞭が、一瞬だけ軌道を外した。
その隙を突いて、一機のドローンが滑り込む。
――ルカを回り込み、“ナオの背後”へ。
「――ナオ……ッ!!」
ルカの叫びが届くより早く。
視界の端、振り返る隙間もないその距離に――
――届く。
このままじゃ――
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