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6.★幼い日の出会い

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 だけどあれも違う、これも違う。どうにもピンと来る者がいない。どれもこれも脆弱すぎる個体だった。

 やはり勇者などただの寓話にすぎない。



 サフィアがこの世に生を受け長い月日が経とうとしているが、ただの一度も存在を確認したことはなかったから。

 

 時間だけが過ぎ、空はもう黄昏に染まっている。

 諦めて帰ろうとしたその時、視界の端に気になる一角を見つけた。

 

 なんとなく足を向けたそこは墓地のようだ。

 特別に見るような景観もない場所なのに、やけに惹かれる方角を見れば一人の少年がしゃがみ込んで泣いていた。



 この時、クレイはまだ幼い九つの子どもだった。

 丸まった小さな背中は弱々しく頼りない。だけど顔を見なくても確信した。

 

 この子は将来きっと、あの忌々しい剣を手にする。

 今のうちに消しておこうか。そんなことを思いながら近づいたサフィアを少年が振り返った。

 涙をたたえる焦茶の瞳はどこまでも澄んでいて、一瞬で興味を引かれてしまった。

 

 数歩進み隣にしゃがみ込むと、クレイは不審な目でサフィアを見つめる。

 可愛らしい顔をしているが瞳も髪も特に珍しくもない、ただの人間の子ども。



 なのに心をわしづかみにされてしまった。

 消すだなんてとんでもない。この子が欲しい。

 それは計算や策略でもなく、直感だった。

 

「お姉さん、だれ……?」



 だから、じっと視線を合わせたまま、こう答えたのだ。

 

「私はサフィア。君のお姉ちゃんだよ。これからはお姉ちゃんが君を守ってあげるからね。ずっと一緒だよ」



 人間の心や記憶を操るなど造作もないことだ。

 勇者の素質があるとはいえ、幼いクレイにサフィアの暗示を跳ね返す術などない。

 目の前で髪と目の色を変えても、クレイとあまり変わらない年齢に姿を模しても、夢とうつつをさまよう彼は素直に頷き、サフィアを受け入れた。

 

「さて、少年。私はだれ?」

「僕の……姉さん」

 

 まだぼんやりしているクレイの返答にサフィアは満面の笑顔を浮かべ、小さな手を握る。

 こうして魔王サフィアは幼い勇者の姉となった。



 ***



「どう? 思い出した?」



 恍惚としたサフィアはうっとりとクレイに問いかける。

 

「嘘だ……。姉さんは、俺の姉さんじゃなくて……。じゃあ、俺はずっと……」

「そうだよ。だからこんなことしてもいいんだよ」



 混乱しているクレイは現状を忘れてしまっているようだ。

 だけど繋がったままの腰を艶かしく揺らせば、すぐに意識はサフィアへと向けられた。

 焦茶の瞳は戸惑いながらもサフィアを映している。



 クレイの目に映るのはこの先ずっと自分だけでいい。

 サフィアはうっとり目を細め、律動を再開する。

 体を上下に弾ませるたびに、しとどにあふれる蜜がぐちゅぐちゅと淫らな音を立てた。
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