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盲目乙女は拗らせ剣士に愛されたい
6.無自覚はタチが悪い
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日が翳るまで少し時間があるし、せっかくだから露店を見て回りたい。そうキアラがねだり、二人で祭を散策する事にした。
土地特有の染色された布や、珍しい鮮やかな果物。異国から運ばれる金銀細工のアクセサリーに所々で漂ってくる美味しそうな匂い。どれもこれもキアラには物珍しく、目に映るもの全てがより一層キラキラと輝いて見える。
「どうしよう。どれも綺麗だし、可愛いし……全部ほしくなっちゃう」
「一つ買ってやるよ」
うーんと唸っていたキアラが驚いて見上げると、当のクロウは、なんで驚いているのかわからないという顔をしていた。また気まぐれが発動したのだろうかと、キアラはまじまじとクロウを見つめてしまう。
クロウは討伐へ向かう時は必ず、回復魔法を封じ込めてある魔法石を用意してから挑む。荷物が増えるのでいつも最後に立ち寄る町で購入しているのだが、今回は旅路の間にキアラの魔法を見て、魔法石は不要だと判断した。すごく高価なわけでもないが、それでも魔法石は安い買い物ではない。なので、予定より随分少ない金額でこの町まで辿り着く事が出来た。
「予算余ってるし、手伝ってもらったお礼」
「いいの?」
「いいよ。面倒だから好きなのを選んでくれ」
僕の払える範囲でね、と付け足すとキアラが感激にふるふると震える瞳でクロウを見上げる。
「兄さんに選んでほしい」
「自分で選べばいいだろ」
「えっとじゃあ髪飾り! 髪飾りが欲しいから、兄さんの好きなの選んでほしいな」
「キアラの好みなんて知らないけど……」
「いいの!」
「じゃあ、多分あっちにアクセサリーの店があると思う」
クロウが指した方角を見ると、少し人が多い通りだった。行こう! とキアラが腕に飛びついて来たのでクロウは軽く腕を振ってみたが、ニコニコ笑顔のまま離れない。
「……離れてほしいんだけど」
ぎゅっとしがみつくキアラにわざと棘のある視線を送ってみても、はぐれないようにと言われるとクロウは強く出ることが出来ない。本人はなるべく距離を保とうとしているつもりだが、クロウは真っ直ぐに慕ってくるキアラに甘い。
――僕の妹で、あの両親の娘と知って悪さをする馬鹿もいないだろうけど、初めての町だし仕方ない…。
あまりしがみつくなと言いながらも、クロウはそのままアクセサリーの露店へと向かった。
歩くのが困難な程ではないが先程いた場所より人が多くなり、行き交う人々をさりげなく観察しながらキアラは歩く。クロウは恐らくレオに代わって、この町では「勇者様」に違いない。
ただでさえ見目が良いのに、そこに加えて「勇者」という付加価値がついたクロウは、老若男女問わず支持されているようだ。
クロウ自身はあまり気にしていないが、近隣の町でも持て囃されるのに、ここでは更に年に一度という希少価値も加わり、特に女性からのモテっぷりがキアラは面白くない。
「せめて顔が……ううん、背が……いっそ弱ければ……」
「どうかした? アクセサリーの店通り過ぎるけど」
いつの間にかクロウの腕を引っ張るようにして歩いていたキアラが振り返ると、目指していた店が後ろに見える。
「ごめんね、ちょっと考え事しちゃった」
慌てて引き返すと、店主がクロウを見て親しげに挨拶した後、ぴったりくっ付くキアラに視線を移し、何やら意味ありげな顔をする。
「ああー、噂の妹さん? こんにちは、魔物ありがとうね!」
「どんな噂だよ……」
本当にどんな噂がこの町で流れているのか。
気になるけれど、夏の間はこの町でゆっくりするつもりなので、クロウがいない時にこっそり町の人に聞いてみようと、キアラは挨拶を返しながら先の予定を楽しみにする事にした。
ひとまず目の前のキラキラ光るアクセサリーを見て、可愛いものが大好きなキアラは目を輝かせる。クロウはどんなものを選んでくれるんだろう。キアラはそう期待しながら、夜空色したビロードに並ぶ沢山の髪飾りを一通り眺めた。
「ね、どれが良いかな。全部可愛くて、自分じゃ決められないよ」
クロウは噂という言葉に何やら納得いかない顔をしている。けれど髪飾りを指差すと、意外にも真剣に物色し始めた。順番に数個手に取りしばらく悩んだクロウは、そのうちの一つを手のひらに乗せてキアラに見せる。
それは銀で細工されたリボンと、透明の硝子を散りばめた小花で縁取られた華奢な髪飾りで。中央に少し大きめの明るい若葉のような、キアラの瞳と同じ色の橄欖石が配置されている。
「かわいい~!」
感激するキアラの手に載せた髪飾りをもう一度自身の手に戻し、クロウはごく自然な動作で桜色の髪に留めた。
「うん、似合うよ」
クロウからすると、一番キアラに似合うものを選んだつもりなので、当たり前のことを言ったのだが、そういうとこだから……と同時に声を上げた店主とキアラに、彼は首を傾げる。特に、店主に至っては、堪えきれないニヤニヤを隠しもしない。
「さすがクロウくん。この石を選ぶとは、やるねえ~」
何となく面白がられているような視線を受けたクロウは、何だかそわそわと居心地が悪く、釣りはいらないと代金を渡して足早に店を後にした。
「さっきの変な空気は何だったんだ……」
早くその場を離れたかったのか、やたらと早足で人の波をすいすい抜けるクロウを慌てて追いかけたキアラは、少し落ち着いた広場に出た。先程の変な空気が腑に落ちないと、クロウの独り言じみた呟きにキアラが答える。
「んー、店主さんがどう思ったのかはわかんないけど……兄さんは私のこと好きじゃないんでしょう?」
「普通だよ。家族だろ」
「でも、私の気持ちは知ってるよね」
にっこりと何でもないことのように言うキアラにクロウは少し気まずさが込み上げる。いつでも直球なキアラは気持ちを誤魔化したりはしない。
「だから……」
「なのにああいうことしちゃうんだよね~。だから周りにも誤解されちゃう」
「ああいう……?」
ほんの僅かに眉を顰めるクロウは心底わかっていないらしい。いつもながら無自覚な兄に、キアラは思わず肩を落とす。
「そういうとこだよ~。兄さんが気にならないなら、いいの。私は慣れっこだし。髪飾りありがとう。嬉しい……宝物にするね」
えへへと笑うキアラがなぜか少し寂しそうに見えて、何か一言掛けるべきなんだろうけど、クロウは何を言えばいいのかわからない。なんとなく俯けばキアラが下から覗き込んできたので、またもやすぐに視線を逸らした。
「私疲れちゃった。宿に戻るね。兄さんはお友達とゆっくり楽しんできてね」
「宿まで送ってく。場所わからないだろ」
「あの赤い屋根のところでしょ? 大丈夫、わかるよ~」
ご飯は適当に食べておくからね、とひらり歩き出したキアラを、少し気まずいような気持ちでクロウは見送った。
気づけば日が落ち始めていて、さっきまで僅かにオレンジの光を放っていた太陽が地平線に飲み込まれていく。いつもなら自分の側を離れたがらない妹に引っ掛かりを覚えつつ、クロウも毎年集う場へ向かうことにした。
土地特有の染色された布や、珍しい鮮やかな果物。異国から運ばれる金銀細工のアクセサリーに所々で漂ってくる美味しそうな匂い。どれもこれもキアラには物珍しく、目に映るもの全てがより一層キラキラと輝いて見える。
「どうしよう。どれも綺麗だし、可愛いし……全部ほしくなっちゃう」
「一つ買ってやるよ」
うーんと唸っていたキアラが驚いて見上げると、当のクロウは、なんで驚いているのかわからないという顔をしていた。また気まぐれが発動したのだろうかと、キアラはまじまじとクロウを見つめてしまう。
クロウは討伐へ向かう時は必ず、回復魔法を封じ込めてある魔法石を用意してから挑む。荷物が増えるのでいつも最後に立ち寄る町で購入しているのだが、今回は旅路の間にキアラの魔法を見て、魔法石は不要だと判断した。すごく高価なわけでもないが、それでも魔法石は安い買い物ではない。なので、予定より随分少ない金額でこの町まで辿り着く事が出来た。
「予算余ってるし、手伝ってもらったお礼」
「いいの?」
「いいよ。面倒だから好きなのを選んでくれ」
僕の払える範囲でね、と付け足すとキアラが感激にふるふると震える瞳でクロウを見上げる。
「兄さんに選んでほしい」
「自分で選べばいいだろ」
「えっとじゃあ髪飾り! 髪飾りが欲しいから、兄さんの好きなの選んでほしいな」
「キアラの好みなんて知らないけど……」
「いいの!」
「じゃあ、多分あっちにアクセサリーの店があると思う」
クロウが指した方角を見ると、少し人が多い通りだった。行こう! とキアラが腕に飛びついて来たのでクロウは軽く腕を振ってみたが、ニコニコ笑顔のまま離れない。
「……離れてほしいんだけど」
ぎゅっとしがみつくキアラにわざと棘のある視線を送ってみても、はぐれないようにと言われるとクロウは強く出ることが出来ない。本人はなるべく距離を保とうとしているつもりだが、クロウは真っ直ぐに慕ってくるキアラに甘い。
――僕の妹で、あの両親の娘と知って悪さをする馬鹿もいないだろうけど、初めての町だし仕方ない…。
あまりしがみつくなと言いながらも、クロウはそのままアクセサリーの露店へと向かった。
歩くのが困難な程ではないが先程いた場所より人が多くなり、行き交う人々をさりげなく観察しながらキアラは歩く。クロウは恐らくレオに代わって、この町では「勇者様」に違いない。
ただでさえ見目が良いのに、そこに加えて「勇者」という付加価値がついたクロウは、老若男女問わず支持されているようだ。
クロウ自身はあまり気にしていないが、近隣の町でも持て囃されるのに、ここでは更に年に一度という希少価値も加わり、特に女性からのモテっぷりがキアラは面白くない。
「せめて顔が……ううん、背が……いっそ弱ければ……」
「どうかした? アクセサリーの店通り過ぎるけど」
いつの間にかクロウの腕を引っ張るようにして歩いていたキアラが振り返ると、目指していた店が後ろに見える。
「ごめんね、ちょっと考え事しちゃった」
慌てて引き返すと、店主がクロウを見て親しげに挨拶した後、ぴったりくっ付くキアラに視線を移し、何やら意味ありげな顔をする。
「ああー、噂の妹さん? こんにちは、魔物ありがとうね!」
「どんな噂だよ……」
本当にどんな噂がこの町で流れているのか。
気になるけれど、夏の間はこの町でゆっくりするつもりなので、クロウがいない時にこっそり町の人に聞いてみようと、キアラは挨拶を返しながら先の予定を楽しみにする事にした。
ひとまず目の前のキラキラ光るアクセサリーを見て、可愛いものが大好きなキアラは目を輝かせる。クロウはどんなものを選んでくれるんだろう。キアラはそう期待しながら、夜空色したビロードに並ぶ沢山の髪飾りを一通り眺めた。
「ね、どれが良いかな。全部可愛くて、自分じゃ決められないよ」
クロウは噂という言葉に何やら納得いかない顔をしている。けれど髪飾りを指差すと、意外にも真剣に物色し始めた。順番に数個手に取りしばらく悩んだクロウは、そのうちの一つを手のひらに乗せてキアラに見せる。
それは銀で細工されたリボンと、透明の硝子を散りばめた小花で縁取られた華奢な髪飾りで。中央に少し大きめの明るい若葉のような、キアラの瞳と同じ色の橄欖石が配置されている。
「かわいい~!」
感激するキアラの手に載せた髪飾りをもう一度自身の手に戻し、クロウはごく自然な動作で桜色の髪に留めた。
「うん、似合うよ」
クロウからすると、一番キアラに似合うものを選んだつもりなので、当たり前のことを言ったのだが、そういうとこだから……と同時に声を上げた店主とキアラに、彼は首を傾げる。特に、店主に至っては、堪えきれないニヤニヤを隠しもしない。
「さすがクロウくん。この石を選ぶとは、やるねえ~」
何となく面白がられているような視線を受けたクロウは、何だかそわそわと居心地が悪く、釣りはいらないと代金を渡して足早に店を後にした。
「さっきの変な空気は何だったんだ……」
早くその場を離れたかったのか、やたらと早足で人の波をすいすい抜けるクロウを慌てて追いかけたキアラは、少し落ち着いた広場に出た。先程の変な空気が腑に落ちないと、クロウの独り言じみた呟きにキアラが答える。
「んー、店主さんがどう思ったのかはわかんないけど……兄さんは私のこと好きじゃないんでしょう?」
「普通だよ。家族だろ」
「でも、私の気持ちは知ってるよね」
にっこりと何でもないことのように言うキアラにクロウは少し気まずさが込み上げる。いつでも直球なキアラは気持ちを誤魔化したりはしない。
「だから……」
「なのにああいうことしちゃうんだよね~。だから周りにも誤解されちゃう」
「ああいう……?」
ほんの僅かに眉を顰めるクロウは心底わかっていないらしい。いつもながら無自覚な兄に、キアラは思わず肩を落とす。
「そういうとこだよ~。兄さんが気にならないなら、いいの。私は慣れっこだし。髪飾りありがとう。嬉しい……宝物にするね」
えへへと笑うキアラがなぜか少し寂しそうに見えて、何か一言掛けるべきなんだろうけど、クロウは何を言えばいいのかわからない。なんとなく俯けばキアラが下から覗き込んできたので、またもやすぐに視線を逸らした。
「私疲れちゃった。宿に戻るね。兄さんはお友達とゆっくり楽しんできてね」
「宿まで送ってく。場所わからないだろ」
「あの赤い屋根のところでしょ? 大丈夫、わかるよ~」
ご飯は適当に食べておくからね、とひらり歩き出したキアラを、少し気まずいような気持ちでクロウは見送った。
気づけば日が落ち始めていて、さっきまで僅かにオレンジの光を放っていた太陽が地平線に飲み込まれていく。いつもなら自分の側を離れたがらない妹に引っ掛かりを覚えつつ、クロウも毎年集う場へ向かうことにした。
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