最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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第二章 自重を知らない回り

巻き起こる暗雲

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 バンテリン親子の一騎打ちは壮絶を極め、血や汗が飛び肉を打つ音が大講堂に響く。
 180cmを超える二人の殴り合いは迫力があり、際兵達はただ見ているしか出来なかった。

 ”重い、親父の拳がこんなに重いとは・・・”ジャマーは骨の芯にまで響く拳の重さに驚くと共に徐々に奪われて行く体力に焦りを覚えていた。

「ふん!軽い拳じゃな」

「年寄りは大人しく隠居でもしてやがれ!!」

 ジャマーが右フックを放つと、バンテリンが受け流しその勢いのままボディーブロウーをキッチリ当ててくる。
 さらに追撃を放つバンテリンに、ジャマーが隙を縫って蹴りをいれ距離を取る。
 激しい応酬の中、確実にジャマーが押され始めていた。

「俺は際兵の長だ!負けるわけにはいかん」

「ぬるいのう、貴様の拳には護るものが見えぬ!!欲だけのぬるい拳じゃ!」

 数分、いや数十分にも及ぶ激しい応酬の中、ついに決着の時が訪れる。
 一瞬膝の力が抜けバランスを崩したジャマーのコメカミに、バンテリンの拳がヒットした。
 白目をむいて仰向けに倒れるとそこでバンテリンの勝ちが決まり、老際兵達が勝ち鬨を上げる。

 バンテリンはまだ熱が残る左拳を振ると。

「人を護ろうとした時こそ、際兵は力が出せるのじゃ」

 歓声の中バンテリンの呟きは消えて行き、リーダーを失った際兵は老際兵達に捕縛されていった。

「間に合わなかったっすか」

 その声の主に老際兵達は槍を向け牽制する。

「わわ、おいらは国王陛下の使者っす、ほ、ほらこれ」

 蝋印で封をされた手紙を差し出し、一人の老際兵が受け取り中を確認する手を挙げ槍を下ろすように指示を出した。

「これには、王都内での争いは禁止であり、騒ぎを起こしたジャマー達の捕縛を我らに任せるとあるが」

「そうなんすよ、でも終っちゃってるっすし無駄になったっすけどね、あ一応勅命なんで王城の牢屋に連れて行ってほしいっす」

「勅命を一応などと・・・」

 トッポは頬をポリポリと人差し指で掻くと「ははは」と笑い、ボロボロになっているバンテリンを見つけると、近づいて行き隣に腰を下ろした。

「そうそう、今回の首謀者財務枢機卿はすでに捕縛済みっす」

「なんじゃ?国王も影で動いておったのか?」

「ははは、あの人意外と耳が良いみたいっす」

「で、馬鹿息子共はどうなるんじゃ」

「そうっすね、財務枢機卿は悪質っすから、どうなるかはハインツしだいっすね。
息子さんは多分再教育をお願いすると思うっすよ。
 ま、おいらが決めることじゃ無いっすから、予想っすけど」

 バンテリンは小さくため息をつくと、後ろに手を付いて空を見上げると、

「わしもまだまだ休めぬか」

「そうっすね、こんだけ戦えるなら引退はまだ先っすね」

 聖ガラパコス教の変革はここから始まって行くのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 
王国の西エイムラム帝国

「・・・以上の状況を見るにS級以上のモンスターの脅威は去ったと思われます」

「そうか・・・ついに王国に派兵するとするか」

 7龍教を主体とするドラゴンと名がつく物は全て帝国の物であると主張する、隣国においてかなり異常な思想を持つ国であり、侵略の理由にドラゴンのドが付いていたと言う理由をのたまう、国の広さだけでは世界一の国である。
 しかしながら、各国の鼻つまみ者であり国力は目に見えて衰退、逆転の一手としてドラゴニックメタルの産出地、龍天山を手に入れようと兵を派遣しようにもS級以上のモンスターを刺激することも恐れていたが、ついにS級以上が居なくなったのを確認し派兵する事を決めたのだった。

「ふふふ、ドラゴニックメタルを手に入れればこの国は発展できる」

「そうですな、豊富なドラゴニックメタルの武具を持って他国も支配に置ければ、我が国は世界一になりましょう」

 大臣の言葉に帝王は鷹揚にうなずくと、ニヤニヤと笑い琥珀色の酒を傾けた。

 この帝王、かつてはエイムラムの熊と呼ばれた獰猛な将軍であった。
 父である先帝が崩御したのを期に瞬く間に兄弟を殺し帝王の座に着いた。
 その後自分の言うことを聞かない貴族達も責め滅ぼし、人質として各貴族から姫を娶りと自分の体制を磐石にして各国に戦を仕掛け、国力を減らしていっていた。
 今の宰相がそばに付き、戦を諌め国力を蓄えること10年、熊帝は我慢の限界だった。

 今回の出兵も宰相が視察に出ている隙に決めたのだが、自分の勝利を疑わない帝王は愚かな夢を見ていた。
 その夢が叶う事は無いのだが、神ならぬ人の身には判らぬことであった。

 後にドラゴニア興国記に出てくる最初の戦争の始まりであった。
 そんなことも知らずにブラウンは異種格闘技戦を楽しみにノンビリと釣りをしているのであった。
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