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しおりを挟む遅い。うろうろと落ち着きなく食堂で待っているが、
遅すぎる。レイラの調子がそんなにも悪いのか。
それともオリアーナがレイラにエゲツない復讐法でも吹き込んでいるのか。
コンコンコン。
ノックの音が響いた。
慌てて入室を許可すると
ノックの後ガチャリと扉を開けて入室したのはオリアーナだけだった。
「オリアーナ!レイラは?
レイラは来ていないがそんなに調子が悪いのか?」
と、詰め寄るが
サラリと私を躱して椅子に座る。
行儀悪く足を組んでいるが、その美貌と風格のせいでただのダイニングテーブルが玉座にでも掛けているようだ。スリットの入ったデザインから覗く足先がなんとも美しく、オリアーナによく似合っている。またこのデザインでいい生地があったら仕立てさせようと、こんな時に思わず関係のないことを考えてしまった。
「あなた。まずはお掛けになって?セバス。私お茶が飲みたいわ。」
「こちらに用意してございます。」
家令のセバスは少し前に消えたと思ったらお茶の準備を整えていたらしい。
私が座るまでは話してくれそうにないので渋々とダイニングのテーブルに座る。
オリアーナを食堂で今か今かと待っている間にすっかり紅茶も冷えてしまっていたらしい。
優雅な手つきで壮年の家令は私の新しい紅茶もサーブしてくれる。
ブランシェット家の食堂は家族の団欒を楽しみたいという私のために庶民の家庭のようなテーブルだ。
もちろん、他の貴族をもてなすための晩餐室もあるが我が家で食堂といえばここだ。
テーブルや椅子自体は本チークを削り出した最高級なものであるが。
焦る気持ちを落ち着かせるためにも一口紅茶を飲んでから本題に切り出した。
「レイラはどうだった?食事もあまり食べていないのだろう。あの子がお菓子を要らないというなんて倒れてでもいるのではないかと。食堂には来るんだろう?」
「ええ、顔を洗って着替えたら来るわ。もうすぐ来るでしょうね。」
という割には、組んだ足は降ろさないし、辺境伯夫人というより女帝というような雰囲気のままだ。
レイラの前では分厚い淑女の皮を脱がない彼女だが本当に来るのだろうか。
同じことを疑問に思ったのか、家令のセバスが
「僭越ながら奥様。レイラお嬢様がいらっしゃるのでしたらそのままのお姿でよろしいのでしょうか」
と聞くと、
オリアーナは優雅に紅茶を啜りながら
「私はあの子の素直で優しいところが大好きだわ。だからあの子らしさを守りたいと思って王都から離してブランシェットで育てたわ。
王都は月の女神の力が強すぎる。優しすぎるあの子が、影響を受けないように。
けれど、あの子はもう16歳。いつまででも私たちの羽の下で守っていなくてはならないひよこではないわ。
だから、王都に連れてきた。
王都で令嬢たちの洗礼を受けて沈んでたみたいだったけど、少し発破をかけたらいつものあの子だったわ。
いつまでも可愛いひよこちゃんだと思っていたかったけど、勝手に育ってしまうのね。
あの子には今まで綺麗なものだけ見せてきたけど、
子ども扱いは辞めるわ。だからこのままでいいの」
少し寂しげに、そしてどこか満足そうに告げた。
再びノックの音が響いた。
きっとレイラがやってきたのだろう。
ただ16歳になっただけだと思っていた。いつまでも幼くて可愛いレイラだと。けれど、もう結婚も許される立派なレディになってしまったのだ。
強くて優しいあの子を信じよう。だって私とあのオリアーナの子なのだから。
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